聖夜の贈り物Verぷえ8章03

「ちょ、ちょい待てっ!どうしてそうなるんだっ?してねえってっ!」
むせて涙目で答えるギルベルトにフェリシアーノは
「な~んだ、そうなの」
と肩を落とした。

「いや、そんなにがっかりされると複雑なんだけど……」
「だって…周りにそういう恋愛経験者っていないから…話きけるといいなって…」
「ちょ…そういう恋愛ってなんだ?そういう恋愛って」
やんごとない箱入り王子様の発想は謎だ。

「アルトは家族だぜ?家族と寝るとかそういう発想はさすがにねえよ」
「でも…さ、家族は唯一じゃなくなっちゃうよ?
俺はずっと俺だけを見てくれる相手が欲しいよ」

あ~…と思う。
一度家族を取り上げられた身としては、それは少しわかる気はするけど…
と、内心つぶやくギルベルト。

「あ~、その気持ちはわかる気するけど…なんでそれで手ぇ出したくなる言う話になるんだよ?
普通に告白して一緒にいようじゃ駄目なのか?」

「…一緒にいようで、互いに互い以外作らずめでたしめでたしにはならないから。
抽象的な約束じゃ気持ちを計れないし縛れない。
俺が唯一手に入れられるのは、相手の初めてくらいかなぁと」
「ああ、王子だもんなぁ…」
ギルベルトは頭をかいてつぶやく。
自分もそうだという意識は当然ないわけだが…。

「俺ね、昔ね、すご~~く一緒にいたい人がいたの。
でも俺が最善を尽くさなかったからその人死んじゃって…
一緒にいられなくなってつらくてつらくて、それで思ったんだ。
大切なものはどんな手を使っても手放しちゃだめだって」

一度失ったからって今回は手段選ばず絶対にモノにしたいって?
ああ…もう、ほんとに見かけによらず…だが、それが好意から来るものだと思うとなんとなく憎めない…と、ギルベルトはガクっと肩を落としてため息をついた。

「だからね、今一緒にいたい相手を絶対に離したくないんだ。
家族みたいにって言ってもね、それこそ家族って最終的にそれぞれ伴侶見つけて離れていっちゃうじゃない?
でも初めての相手になれば一生そのことだけは誰も奪えない。そう思わない?」
という真摯に求めるフェリシアーノの言葉は“思わない”と否定する事ができなかった。

「…男じゃ無理…かな?セック○したいと思えない?」
少し瞳をうるませて聞いてくるフェリシアーノに、何故無理と言えるだろうか…。

「うん…まあなんというか…な、思えなくはないと思うんだけどな…。
実際戦場いると女を連れて歩くわけにもいかねえから、男同士なんて腐るほどあるしな。俺も経験あるし…。あ、これはルッツやアルトには内緒な?」
「うん」
「でもな…普通の環境いたらいきなりそれは少数派だぜ?まずはお友達からとかだめか?」
「もうお友達以上ではあるし…」

「普通に親友とか?」
「伴侶見つけられたりする前じゃないと意味がないんだって」
「…う~ん……」

「で、相談したらね、寝込み襲って既成事実作っちゃえば?って言われたんだけど、ダメだった。裸でね、ベッドもぐりこんだんだけど、普通に朝まで並んで熟睡された」

「そこまでもうやったのかっ?!」
箱入りの行動力恐るべしっ。

「…ていうか、誰や、それ言ったん…」
無邪気にそんな試みをされて相手は困ったやろなぁ…と、その相手に同情しつつ諸悪の根源を聞いてみる。

「エリザベータさん」
「あいつかよっ」
ギルベルトは軽いめまいを感じて眉間を押さえた。

「やっぱり…胸ないとダメなのかなぁ…」
とずれた心配をするフェリシアーノの肩をガシっとつかむと、ギルベルトは大きく首を横に振った。

「フェリちゃん、それちゃうと思う」
「ん~、じゃあ髪とか?伸ばせばいける?」
「フェリちゃん……気にするとこが違えよ」

ああ…もうなんかこの坊っちゃんわかってねえ…どうするよ……責任者、教えるならちゃんと教えとけっ!

フェリシアーノが話を持ちかけたのが自分で良かった…と、少し思うギルベルト。
王族…というのを別にしても、こんなに可愛い顔をしているのだ。
下手をすれば実地で思い知らされかねない。

「あのなぁ…簡単にセック○って言ってるけど…意味わかってるのか?」
まあわかってないだろうと思って聞くと、
「一応、お城で性教育は受けてるよっ。」
とにこやかに答えるフェリシアーノ。

「体の仕組みが違うから、男同士のは男女のとやり方違うんだぜ?わかってるか?」
さらにたたみかけると、そこでフェリシアーノはようやく少し困った顔をした。

「えと…具体的には……その時にルートに任せておけばいいかなって…」

「あのな、言いたくないけど、ルッツも知らないと思うぜ?俺様、男同士のやり方まではさすがに教えてねえし」

ほんと、育て子にそんなことまで教えられる気力はねえよ、と、ギルベルトは思う。

「あのなぁ、フェリちゃん、よく聞けよ?」

無邪気で無知な子供が大やけどをする前に注意してやるのが大人の役割だろう。
ギルベルトは仕方なく自分がその役割を担う事にした。

まずルートがいきなり男同士の恋愛について学んでない以上、当然そのための知識もないであろうことを説明した上で、男同士の性交について具体的に説明してやる。

「…っていうわけでな、男女と違って簡単じゃないんだぜ?
特に男役が慣れてねえと、下はつらいし、下手すると怪我をする。
悪い事は言わねえから他の方法探したほうがいい」

説明が終わって…固くなって俯いているフェリシアーノを見た時、恋に恋する少女のような子供にはさすがに衝撃的すぎたか…と、ギルベルトはオブラートに包まずそのまんま説明した事を少し後悔しかけた。

「………」
「………」
お互いにしばらく無言。

しかししばらくしてフェリシアーノがガバっと顔をあげた。
笑顔だった。

「じゃ、俺が頑張って勉強してリードすればいいんだよね?俺がんばるよっ」

……どうしてそうなる?

「フェリちゃん……俺の話聞いてたか?」
なんだかドッと疲れてギルベルトは眉間に手をやり軽く頭を振る。

「俺、あきらめないよっ!絶対にあきらめないっ」
断固として主張するフェリシアーノに、少し呆れ顔のギルベルト。

どうやら諦めさせるのは無理らしい。
悪い、ルッツ。知識は与えた。あとは自力で頑張ってくれ。
ギルベルトは心のなかでそうルートに詫びて、ため息をつきながら天井を仰いだ。


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