「若いママねぇ。」
まずイギリスの服と靴を買ったあと、ベビー用品店で店員ににこやかに話しかけられる。
ああ、家族に見えるんだなぁ~…と、プロイセンは幸せを噛み締める。
こんな生活も悪くない。
「そうだな。若いしまだまだ兄弟作るか~」
と、抱き寄せて囁けば、真っ赤になるのが可愛い。
買い物が終わっても楽しすぎて、アリスのためと理由をつけて外を散歩した。
イギリスの靴はわざとヒールの高い物を買わせたため、履きなれないヒールにふらつくイギリスはどうしてもプロイセンの腕につかまることになるし、そんな小細工をしなくても可愛い娘は耳元でぱぁぱ、ぱぁぱ、言いながらきゃらきゃら可愛い笑い声をたてている。
初めて感じる無条件に愛され頼られる心地よさ。
神様の贈り物のような夢のような時間。
ああ…今日誕生日だし、日々いい子にしてた俺様への神様からの贈り物なんじゃね?などとふと思った。
家に帰るとプロイセンが食事を作る間にイギリスが買ってきたものを片付ける。
3人で食事を取り――アリスは自分だけ違う食事なのが不満なようで、小さな手でパンパンとテーブルを叩いてイギリスに怒られ、泣きべそをかいたのを可哀想に思ったプロイセンがきちんとテーブルを叩くのはよろしくないと説明した上で自分の皿の中で食べられそうな物を口に放り込んでやると、ごきげんな笑い声をたてる…そんな一幕もあり――風呂は親子3人で一緒にというプロイセンの主張はイギリスに却下され、イギリスが入れた赤ん坊をプロイセンが受け取って服を着せた。
なんのかんので笑い声が絶えないままアリスを挟んで川の字に並んでベッドで休む。
あ~…ヴェストに連絡入れるの忘れてたなぁ…あとで怒られるな~などとそこでそんな事を思いつつ携帯を覗くと鬼のような数のメール。
ほとんどが弟からだ。
しかし…今日は家族で過ごすので仕方ない。
子どもを放置は虐待だと可愛い弟ならわかってくれるだろう。
きちんと謝るのと説明は明日にしよう…と、簡単な事情説明だけをメールで送ったあと、プロイセンが携帯をテーブルに放り出して寝返りを打った瞬間…プロイセンとイギリスの間…ちょうど赤ん坊が眠っている場所がキラキラと光る。
「へ?な、なんなんだ?!なあ、イギリス、起きろっ!!!」
慌てて眠っているイギリスを揺すると、イギリスは眠そうな目をこすりながら
「ああ…時間…なのか……」
と、つぶやく。
「時間て?なあ、なんかアリス透けてるぞっ?!」
消えそうになる赤ん坊に手を伸ばすと、スルっと手が空気をつかんだ。
「おいっ!!アリスが消えちまうっ!!!」
必死なプロイセンとは対照的にイギリスは少し寂しそうだが冷静だ。
「うん…こっちにいるのは…今日いっぱいだったから…」
「…今日いっぱいっ…て……聞いてねえぞ?そんなの聞いてねえっ!!
なあっ!!もう会えなくなるのかっ?!アリス消えてちまうのかっ?!!」
必死な形相で肩を掴まれ、イギリスは少し戸惑ったように
「…会えるけど?」
と、プロイセンを見上げた。
「へ?」
「あれは…未来から来た俺の子だから……」
「ええ~っ?!!!」
いや…確かに似てた…似てたが……
「誰との子なんだっ?!」
「…わかんね。昨日の0時に急に未来の俺から丸一日預かってくれって言われて……」
イギリスと…誰かの子ども……
今日並んで歩いた自分の代わりに…未来で誰かが自分の愛妻と愛娘に囲まれている…。
そんなの…そんなのってありかよっ!!
あの子は確かにプロイセンの子で…イギリスは自分の妻だったはずだ!!!
「…イギリス……」
掴んだイギリスの肩をベッドに押し付けて、プロイセンはイギリスを見下ろした。
「ちょ、プロイセン?どうしたんだよっ?!」
急に不穏な空気を纏うプロイセンにイギリスは驚いて暴れるが、それでなくても女性化しているせいでビクともしない。
「なあ、どうしたんだ?なんだよっ?」
怖い怖い怖い怖いっ!!!
今日一日完璧に自分をガードしエスコートしていた男の急変に、イギリスはすくみあがった。
「……お前……誰と子ども作る気なんだ?」
「…へ?」
「…言えよ…相手叩き殺してやるからよ…」
「…ええっ??」
「…貞操は絶対のもんだ。俺様は絶対に浮気はしねえ。その代わり相手の浮気も許さねえぞ?」
「なんでそうなるっ?!!!」
凍りつきそうな声でそう言ったあと、プロイセンは、あっと、良いことを思いついたとばかりに笑みを浮かべた。
「そうだ…子ども…作れねえようにしたらいいんだよな?
すでにお腹にいる間は作れねえよな?」
「ちょっと待てェェ~!!!!」
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