リトルキャッスル殺人事件_幽霊は桜の海で釣られるのか?2

それぞれ食後、自室に戻って支度をすると玄関に集合。そのまま跳ね橋を通って外に出る。

ギルベルトとアーサーとぴったりくっついて歩く女4人。

空手部3人はそれを面白くなさそうにたまにチラ見をしながらも、アーサー1人にすら3人がかりでも勝てないのは昨日実証済みなので、しかたなしにちゃっちゃと歩を進める。


「ああ、そこが倉庫だな。ちょっと悪い」

海へと続く水路にかかる細い橋の手前にある、昨日ジョンが行っていた釣り具、浮き輪、その他がある倉庫をにかけよると、ギルベルトは内ポケットから薄いビニール製の手袋を取り出して付けた。

「ギルベルトさんすご~い!!刑事みたいっ!!」
と、それを見てはしゃぐ女子高生組。

空手部達は
「わざとらしくそんなもん持ってるって、馬鹿じゃねっ」
と、ケッと言わんばかりに嫌な笑みを浮かべる。

そのどちらに対しても良くも悪くも感情的になることなく、

「ここんとこ旅行とかってロクな事なかったから、トラブル起こった時用に念のため持参した。
これまでと違って元々トラブル起こる前提の旅行って感じの話だったしな」

と、返答を返し、ギルベルトはそのまま倉庫のドアを開け、中身を確認した。


浮き輪が3本、パラソルが1本、大量の釣り竿と…魚篭もある。
まあ昨日ジョンが言ってた通りな感じで特に怪しい物はない…いや、怪しくない物もない?

「シンディー、確認したいんだが…」
ギルベルトは後ろに立つシンディーを振り返った。

「なに?」
シンディーは言って一歩前に出る。

「いや…対した事ないと言えばねえんだが…昨日ジョンさんの話だとゴムボートもあるって言ってた記憶が…。今ここにねえんだが、別の場所にうつしたとか?」

「え?そんなはずないんだけど…」
ギルベルトの言葉にシンディーも倉庫を覗き込んで

「あら、ない。あとで伯父さんに聞いておくね」
と、首を傾げた。

「他に…無くなってる物は?」
さらに聞くギルベルトの言葉には

「ん~、ないと思うわ」
とシンディーは首を横に振った。



「マジ探偵ごっこかよっ、ちゃっちゃと行こうぜ!」
少し離れてそれを眺めていた空手部3人組は馬鹿にした様に鼻をならすと、先に歩き始める。

「なによ~。元々フェリと殿下が見た怪しい物探すって主旨なんだから色々調べるのは当たり前でしょ~!」

女性陣がそれに向かって舌を出して言うのに苦笑すると、

「悪い、行こう」
と、ギルベルトは倉庫を閉めて、みんなを先にうながした。


水路にかかっている橋を渡り、さらに宿の裏側を目指してすすむと、サラサラと雪の様に桜吹雪がふってくる。

「うあ~綺麗ね~。お昼はお弁当もって裏でお花見でもいいかも♪」
女子ははしゃぐ。

可愛いミニチュアの城に満開の花吹雪…。
ギルベルトがチラリと横を見るとアーサーも桜の木の方に目をやっている。

しかしそれはギルベルトが想像したような花びらが舞う上の方ではなく、木の根元。
ギルベルトもアーサーの視線の先を追ってみると、そこには漁網のようなものが…


「お姫さん、見んなっ!!」

瞬時に判断したギルベルトがアーサーの視界からそれを隠すようにアーサーの顔を自分の肩口に押し付けると、女子高生組の方にアーサーを避難させた。


「うあああ~~~!!!!」
先を行っていた空手部3名が慌てふためきながら逃げ惑っている。

その様子に女3人はお互い寄り添って不安げに抱き合った。



「おひめ…さん?」

咄嗟にとったギルベルトのその行動と言葉に、一人他の女の子達と距離を取ったシンディーが首をかしげる。

その少し不思議そうな…でも何か察したような、物問いたげな視線に気づいたギルベルトは、シンディーと視線を合わせた。

「ああ、アルトは見た通り結構恥ずかしがり屋だから言わなかったけど…俺様にとって唯一守るべき相手、恋人なんだ。
去年の夏に会った瞬間俺様の方が一目ぼれして、とにかく尽くして尽くしてやっと付き合うに至ったわけなんだけど…」

くしゃくしゃと頭を掻きながら言うギルベルトに、シンディはどこか複雑そうな表情で、それでも

「そう…なんだ。意外」
と、さらりと流してギルベルトとそのまま並んで視線を前方にむけた。

そして固まる。

「どうしたの?!」
とブルブル震える手で一際大きな桜の木を指差す男3人に声をかけるジェニー。

「桜の木が何か?…!!」

と、見に来ようとするのをギルベルトは

「来るなっ!!女性陣とアルトは宿に戻ってジョンさんに伝えてくれ!
マイクが死んでる。警察に連絡!!」

と、他はありえない展開に確認に来ようとするが、そこはさすがに何度も事件に巻き込まれたアーサーは即状況を理解して、

「見ないほうがいいっ!行こうっ!!」
と、それをとめた。

その対応に安堵してギルベルトは前方に足を進める。

薄桃色の花びらが降り注ぐ中…魚と共に漁網に包まれ白目を剥いた男の遺体。マイクだ。


「マイクっ?!!」
走りよりかけるシンディーの腕を近くにいたアーサーがあわててつかむと、他3人の女性陣も一斉に止める。


「ギル、女の子達も連れて戻るからっ!!」
と、シンディーを押さえつつアーサーが残りの女の子3人を宿の方へと誘導する。


「ああ、アルト、頼む!」
と、ギルベルトが答えると、

「放してぇ~!!!」
叫ぶシンディーを2人はそのままひきずるように連れて行った。



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