「ええっ?!!!」
こうしてさあ相談を始めようとなった時、いきなり落とされた爆弾に、本田は文字通り目を丸くした。
ぽか~んと口をあけたまま硬直している。
言葉がでない。
そんな本田の驚きをよそに、エルネストはスマホを弄っている。
「で、これが現在な。
ウィッグかそれこそマリアベールで眉毛隠せば全然花嫁いけるで」
と、本田に差し出すのは携帯に保存された写真。
「ちょうどこの前までイギリスにおったから、会うた時の写真なんやけど。」
と説明の通り、綺麗なバラの咲き誇る庭をバックにエルネストと並んで映っている青年…というより、少年に見える青年は、体格が良いとは言えない若く見える日本人の本田から見ても、10代にしか見えず、華奢で、確かに少し立派な眉毛を覗けば少女と言われれば信じてしまう気がする。
「たぶん…顎やなぁ。顔のラインが柔らかいせいやと思うわ。
ちっちゃい頃から病気がちやったせいで、ちょお体格も華奢やしなぁ」
「はあ…言われてみればそうですね…。服と化粧で全然イケる気がします」
言われて最初のショックから立ち直った本田は再度写真を凝視した。
「男性に花嫁役をお願いするのは大変かもしれませんが、不肖本田、精神的誠意と物理的(金銭的)誠意をもって説得に当たらせて頂きます」
どうしても…どうしてもこの幼児二人の写真からの現代の図を捨て切れず、本田がそう言うと、エルネストは
「いや、それはええんやけどな。俺が説得出来ると思うわ。
問題はそっちやないんや」
と、苦笑した。
「あ~、男性役の従兄弟さんの方が男性相手だとお嫌だと言う事ですね。
ではそちらは私が…」
という本田の言葉を
「あ~男やってことはええんや」
と、これまたエルネストが遮った。
「問題は…この子がこの写真の子ぉやって従兄弟に知られることなんや」
「はあ…それはどういう意味で?」
色々急展開過ぎて頭が付いて行かない。
目をぱちくりさせる本田にエルネストは苦笑する。
「えっとな、従兄弟アントーニョ言うんやけどな、この子アーサーが初恋なんや。
でもって…小学校の時にアーサーの方が病気療養で外国行ってそれっきりやから、実はアーサーの事女の子やって思ったままやねん」
「え…あ…なるほど…。男性だとわかるとやる気が……。でも貯蓄中なんですよね?!
ホテルの中でも重要視されているプロジェクトなので、かなり予算は出ますし、モデル料ははずめると思いますよっ!」
そう…実は数千万単位の予算が組まれている。
ハネムーンの画像もいるだろうと、海外に撮影に行く事も想定したものだ。
どういう配分で使うかは本田に任されているので、男性モデルのモデル料の比重を大きくしても良い。
「そうですね…最高1000万まではなんとかします」
とはいっても限度はある。
1年契約ということで、出来れば500万くらいに押さえたかったところだが、まあ仕方ないだろう。モデルあり気だ。
本田の言葉にエルネストは、すごいなぁと少し驚いたように目をまるくしたが、すぐ
「そういう事ちゃうねん」
と首を横に振った。
「あんなぁ、あいつが金貯めとんのは、将来的にこの子嫁さんにして養わな思うとるからなんや~。
あーちゃん以外をお嫁さんにせえへんて、この時誓ったんをおもろいから放っておいたら、いまだ本気で守る気ぃでおってな。
離ればなれになったんが小学1年の時やから、行方もわからんのやけど、絶対に探し出して嫁さんにするんや~って、おもろいやろ?
で、ちっちゃい頃は…まあ今でもちょぉそういうとこあるけど、体弱い子ぉやったから、色々無理させたらあかん思うて、何かあっても対応できるようにって日々バイトに勤しんどるんや。
学業もな、本来ジッとしとるん嫌いな奴なんやけど、この子養うためにはええ学校からええ仕事つかな~って結構頑張っとるし、そこでバラしてやる気のうなってもあれやからって、当時を知る大人も皆黙っとるんやけどな。
せやから、それバラしたら、こいつが金貯める意味ものうなるから、あかんと思うわ~」
うあ~~~と本田は頭を抱えた。
なんでそこで面白いから…という理由でそこまで黙っているんです…と、問い詰めたい。
本気で問い詰めたい。
小さい頃に否定をしてやればまだ傷も浅かったであろうものを…。
まあそのために頑張ったから今の彼があると言われれば、その対応を真っ向から否定もできないわけではあるが……
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