コツコツと勉強をし続けて国立大、大手企業へと勤めたものの肉体的精神的過労からくる疾患のため2年で退社して1年療養。
そんな本田がその後ここで体も心も壊す事もなく、神経質どころか鷹揚で動じない人物として親しまれ頼られ異例の出世を遂げたのも、この彼の気質の影響を多分に受けたためだと思う。
そんな彼とも一緒にいたのは入社してからの1年間だけ。
それを今頼み込んで自分のプロジェクトのメンバーにいれてもらったのは、つい最近だ。
昨今、不景気なせいか、お金がかかりそうなイメージがある老舗ホテルアルマダでの結婚式が減ってきている。
その事態を憂慮した上から、敷居が高すぎるというイメージを払拭しろと命じられて、それなら若い世代がここであげたいと思うような企画を…というところまではきたものの、そこからが進まず、胃がキリキリしてきたところにちょうど手があいているらしいと知って自分のプロジェクトに入ってもらった。
しかし久々に会った先輩は相変わらずの~んびりしていて、
「まだイメージすら決まってないんですっ。
若者の結婚?!
それ年齢イコール彼女いない歴の私に聞いちゃいますっ?!馬鹿なんですかっ?!
どうしろって言うんですかっ?!」
と、二人きりになったところで昔に戻って泣きごとを言う本田に、
「イメージねぇ…まあ、若い子ぉの結婚写真言う事ならこんなんあるで~?」
と、面白そうに自分のスマホを本田に突き出した。
…………
…………
…………
「うっあああ~~!!!かっわいいっ!!天使ですかっ!天使っ!!!」
それを見た瞬間、本田の脳内から仕事も疲れも全てが吹っ飛んだ。
実は可愛いものが大好きな本田の目の前に出されたスマホに保存されていた写真は二人の幼児が教会でキスをしているものだ。
どこかエルネストに似た茶色がかった黒髪に褐色の肌の男の子がタキシードを着て、レースのベールを被った真っ白な肌に光色の髪と、男の子とは対照的に色素が薄くて透けてしまいそうな女の子の頬に口づけている。
本当に二人とも天使のように可愛らしい。
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