出会う瞬間まで…それは小さな呪いだった。
――憎らしや…我は死すとも決しておぬしを許さぬ。
恨みの言葉を向けて来たのは、取るに足らぬ小さな神社の神主だった。
その村は鬼から人の世界を守る村として名高く、その神社には一振りの剣が奉納されていた。
人の世が危機に見舞われる時現れる選ばれた者だけが扱えると言われる剣。
その名も【鬼滅剣桃太郎】と呼ばれる剣は、唯一上位の鬼を滅することの出来る剣である。
その剣を恐れ、それが枷になり、狭い鬼ヶ島から外に出ることの叶わぬ鬼達。
しかし長きに渡り、細々と暮らしていた鬼の中に、稀代の能力を持つ者が生まれ、頂点に立った時、その不遇な時代は終わりを迎えたのだ。
そんな剣、使わせなければ問題はない。
知恵に優れた鬼の王は、角を隠せる上位の鬼を村によこし、現在その剣の主が存在せぬことを探らせて、一気に攻勢に出た。
剣を扱う者は当然剣の安置されているこの村に生まれ落ちるのだろうと、男どもはもちろんのこと女子供も一人残らず滅ぼしたあと、村の奥の神社まで足を運んだ鬼の王に、神主は呪いの言葉を投げつけた。
【今から16年ののち、鬼ヶ島に桃太郎と3人の守護者がたどり着く。そして…今日この村を鬼が襲ったように、全ての鬼は若者と守護者の前に倒され、鬼の王もまた、愛に絶望しつつ倒されるであろう】
バカバカしい事を…と鬼の王はあざ笑った。
自分が最も愛した者など、もうとうにこの世にはいない。
ゆえに今更愛に絶望などしない。
そして鬼の王は血まみれの神主を棍棒で叩き潰し…やがて気づく。
安置されているはずの場所に剣がすでに無いことに…。
神主にしてやられた事に気づくと鬼の王は舌打ちをして配下に剣を探させるが時すでに遅し。
剣は持ち去られたあとで見つからず、仕方なしに王は決意した。
剣を求めて人の地で暮らすことを…。
こうして1つの村が消え、人の中に人ならざる者が一人、暮らす事になった。
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