午後一の本番を控えて、アントーニョが朝からアーサーを連れて楽屋入りをしたところを、悪友二人が見咎めると、ギルベルトは腰に両手を当ててうつむき、フランシスは片手を額にやって空を仰ぎ、同じようにため息をついた。
昨夜…緊張で眠れないアーサーがよく眠れるように…と、優しく高めてやろうとして途中で理性がログアウト…激しく愛し合ってしまった痕跡は、服で隠れるところのみならず、隠れないところにまで及んでいるので、当たり前だが気づかれてしまう。
「どうすんのよっ!こんな痕つけちゃって!」
と細い首筋から肩にかけて点々と散る赤い華に目をやったフランシスが言えば、その言葉に青くなるアーサーに気づいたギルベルトが、
「それは衣装係がドーランで隠すなりなんとかすっだろ。
それより本番前日にアーサーに無理させんなよっ!
体力馬鹿のお前とは違うんだから!」
と、アーサーには心配させないように、しかし、アントーニョの事はしっかりと責める。
「やって~、しゃあないやん。本番前で興奮しとったし。
アーティとの初舞台やで~。
めっちゃ嬉しかってんもん。
それでも最初は加減したろ思っとったんやけどな、アーティがあんまりかわええから、理性飛んでもうた。」
「あ~!そういう話は聞きたくねえっ!とりあえずやっちまったもんはしょうがねえ!
さっさと着替えろっ!!」
にへら~っと締りのない笑みを浮かべて言うアントーニョに、ギルベルトは耳を塞いで首を横に振る。
本当は…自分の対になった可能性もある、一目惚れした相手。
2つの宝玉の対に選ばれたと知れば混乱もし憔悴もするだろうと黙って身を引いたわけだが、理性で諦めても心はすっかり諦められたわけではない。
理性的と言われるギルベルトでも、二人が睦み合った証を見せられて平静でいられるほど、枯れてはいないのだ。
「じゃ、アーティ預けてくるわ。」
そんなギルベルトの葛藤に気づいてか気づかないでか、当たり前にアーサーの肩に手をかけ、今回、そのセンスと手先の器用さとアーサーとの仲の良さを買われてアーサー付きの衣装係に抜擢されたキクの待つアーサーの楽屋へと向かうアントーニョ。
少し唇を噛み締めてそれを見送るギルベルトに
「じゃ、俺らも行こうか、ギルちゃん。」
と、心配そうに声をかけるフランシス。
今回、初めて対を得た適応者の舞台は、こうして波乱含みに始まる事になった。
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