Fの悲劇
イギリスから電話が来た。
いわく…
「明日、英仏間で仕事関係の話がある事にしろっ!」
という非常に突然にして意味不明な内容だったわけだが、その声が思いがけず切羽詰まってた事もあって、腐れ縁と言いつつイギリスに対しては兄弟愛に近いモノもあるフランスは、快く了承してやった。
まあ…ここで断固として断るべきだったのは、当然この時はフランスもまだ知る由もない。
ぴんぽ~ん
フランスとイギリス、二人だけで終わる程度の小規模の話し合いと言う事なので会議室を使わないでも自宅でする…という事にして、フランス宅で話し合いをする予定だったのだが、チャイムの音に扉を開ければ、途端に漂う殺気…。
「え~っと…坊ちゃん?」
顔色を悪く立つイギリスの後ろには、その一回り細い身体を抱き込むようにして立つスペインの姿。
「オーラ、フランス。お邪魔するな?」
と、思わずその殺気に一歩引いたフランスを押しのけて、イギリスを抱えるようにスペインは中に入っていく。
「ちょ、なんでスペインがいるの?」
と、当然のように聞くフランスに、
「いたら悪いんか?」
と殺気立った視線を返すスペイン。
「い、いや、別に悪くはないけど、今日は二国間の仕事の話だから…」
「仕事ぉぉ??
それやったらなんで自分の家ですんねんっ!
なんかやましい事考えとるんちゃうん?」
「いやいやいや、なんでそういう話になるかな?
単に書類の確認程度の事でわざわざ会議室取って出かけるのもって思っただけだって。
ていうか、なんでスペインがいんのよ?」
「はぁ?!自分アホちゃう?!
自分の嫁さんが仕事を口実に他の男の家に呼び出されて二人きりにされるなんて危ない事になっとるのに、一人で行かせるアホがどこにおんねんっ!!」
「へっ??」
何?何が起こってるの?
お兄さんの空耳じゃなければ、こいつ自分の嫁さんて言ったよね?
え?これって…この流れ、このメンバーだと坊ちゃんのこと??
え?ねぇ、いつからそういう話になったの??
そこは腐れ縁。
なんとなく意思の疎通が出来てしまうので、フランスが視線でイギリスに問いかけると、そこでバチっと火花があがった。
比喩…のはずなのだが、なんだか本当に痛い気がする。
「自分…何アーティに色目使っとるん?」
いやいや、使ってないからっ!
お兄さん確かに老若男女OKだけど、ただし坊ちゃんは除くからっ!
お前だって家族に欲情したりしないでしょうがっ!!
と言おうとした言葉は発する事ができず、フランスの意識は身体と共に宙に飛んだ。
目の前で見事なパンチを繰り出したスペインのコブシによって……。
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