ぺなるてぃ・らぶ・アナザー7章_3

――結構お似合いだと思いますよ?
流されて籍を入れてしまった旨を報告したら、遠方の同じ島国の親友は電話の向こうで穏やかに笑った。

「いや、お似合いとかありえないだろ。俺とスペインだぞ?」

そう…犬猿の仲として名高い二人だ。
フランスをして告白してもOKは絶対に返って来ない、だから選んだと言わせるほどの二人だ。

――イギリスさんはスペインさんの事お嫌いですか?
「いや、俺がどうのと言う問題じゃないだろ?」

――いえ、そういう問題だと思いますよ?スペインさんは答えを出されて入籍の手続きをされたわけじゃないですか。

「え、いや、あの……」

――爺はイギリスさんに幸せになって頂きたいんです。大事な大事なお友達ですから。
辛い時、寂しい時、悲しい時に一人で泣いて欲しくありません。
でも日本とイギリスはとても遠いですしね。
出来れば欧州でイギリスさんの事を爺か爺以上に大事にして下さる方がいらっしゃるなら、とても安心なのですが……。

幸せになってほしい大事な大事な友達……。

しんみりとそう言う日本の言葉をイギリスは脳内で反復しながら感動に浸った。
そこまで自分の事を思いやってくれるなんて、やっぱり日本は良い奴だ…と、思う。
スペインにNOと言われるには…と言うアドバイスをしてくれていたはずの相手…というのは、いつのまにやらイギリスの脳内からは消えていた。

――スペインさんは情が厚い方だと思うのですが…そういう意味でダメそうですか?
と聞いてくる言葉も労りと誠意に満ち溢れている気がする。

「…今この瞬間という意味なら、いいのかもしれないけどな…。」

――…スペインさんは身の内に入れた相手を自分から突き放された事は早々ないと記憶しているのですが?
「…そんな相手に突き放されたら、普通の相手より嫌じゃないか?」

そう…あの美味しい料理を用意したフランスよりも何もない自分を選んでくれた優しかったアメリカにすら、今では顔を見れば嫌味や暴言しか吐かないくらい嫌われてしまったのだ。
スペインもそうならないなんて保証はどこにもない…。

そういうイギリスに、日本は、

――大丈夫ですよ。

と、請け負う。

――あの方は自分の方の要因で心を変える事は無い方だと思います。イギリスさんの方が嫌にならない限りはちゃんと受け止めて下さいますよ。
それでも万が一があったなら、爺にご連絡下さい。
その時は私も日本男児、何を置いても即イギリスさんをお迎えにあがります。

柔らかな口調の中に本気が見え隠れする。
普段は穏やかなくせに、日本はたまに惚れ惚れするほど男前だと思う。

ああ…良い友人を持ったな…と、イギリスはしみじみ思った。
そうだ、こんなに良い友人が本気で気にかけてくれているのだ。
昔々、差し出される優しさがあまりに心地よすぎて失う事怖さに逃げまくったあの大きな手を取ってみる勇気も必要かもしれない。

……それは常に不安と隣り合わせではあるけれど……

「ありがとう、日本。努力してみようと思う。」
イギリスが言うと、日本はやはり穏やかな声で言う

――いいえ、本当に何かあったら…いえ、何もなくても何でもお話して下さい。繰り返しになりますがイギリスさんは大切なお友達なので、幸せにやっていらっしゃるかとても気になりますので。

「Thanks」

電話の向こうで親友がネタ帳を片手にしている事には当然気づかず、イギリスは暖かな気持ちで通話を終えて、さあ、とりあえずどうしようか…と思った瞬間ハッとした。

しまった…一番聞かなければならなかった事を聞きそびれた。

スペインとの関係を継続させるのに一番の問題……実は最初の告白が罰ゲームだった事をずっとバレないようにするには、どうすればいい?
そこでイギリスは再度携帯を手に取ったが、その時戻ってきたスペインの足音が聞こえてきたので、慌てて携帯を隠した。

とりあえず…まずヒゲをなんとかしなければ…そこさえ押さえればバレる事はない。

秘かにイギリスがそう決意を固めたのが、フランスの悲劇の始まりだったという事は言うまでもない。



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