オンラインゲーム殺人事件再びっ6章_2

 「なるほどなぁ…死んだ奴らの恋人かいな」

香から自分がいなかった間のギルベルトからあった話を聞くと、アントーニョは小さくため息をついた。


確かに同情しないでもない。

家族と違って法的には他人の恋人はどんなに相手を思っていても相手が亡くなってしまった時点で相手に対して何の権限も持たないのだ。

楽しいこの先の思い出と唯一相手と自分をつないでいたお互いの生というモノを断ち切った殺人犯に、行き場を失った思いの矛先が怒りと言う形で向くのも理解出来る気はする。


「もしホンマに俺が犯人やったら、その思いは受け止めたらなあかんなぁ…て思うんやけどな」

と、腕組みをしたままうなるアントーニョに、香は何をのんきに…と、呆れた声をあげる。


「あのさ、トーニョ殺されたら色々困る人間いるんだからね?」
と釘をさすと、

「せやから、俺が犯人やったらって言うとるやん。
犯人ちゃうんやから殺される気ぃはないわ」
とアントーニョは苦笑した。


「なら良いけどさ…」
と胸をなでおろす香だったが、次に冷やりとした空気を感じて、ぎょっとアントーニョの方を確認する。

そこで普段は飄々としていて、温かく、唯一感情的になるアーサーの事でも冷ややかにというよりはふつふつと沸騰するような怒り方をするアントーニョが、珍しく冷ややかな空気を放っている事に香は思わずたじろいだ。

「良うないと思うで?」
と冷たい声音で返され、香はどう返すべきか考えあぐねて結局口をつぐんで次の言葉を待つ。


「会社は大切なモンかもしれへんけどな、自分の範疇でできひんからって、そんな大事な相手殺されてめっちゃつらい思いしとる人間を騙して犯罪者にして、自分は安全なところで高みの見物って許せへんわ。
相手のために人殺してもええって思うくらい好きやった相手を亡くしとる人間を自分の欲だけのために陥れとるんやで?あのクソ副社長がっ!」

吐き捨てるように言うアントーニョに、香はぽか~んとする。


「え~っと…相手はそれでもお前殺そうとしてる馬鹿なんだけどとか、その馬鹿になんで感情移入してるさとか、色々つっこみたいところではあるんだけど…ま、いっか。
とりあえず…副社長に制裁与えたいって事でOK?」

と、それでもそこで素早く頭を切り替えて対応するあたりが、凄いと言えば凄いと、傍で聞いていたフランは香の対応の方にぽか~んだ。

「あ~、できればそうやな。このまま知らんぷりはさせたない。
何か証拠つかんで引きずり出したいわ」

「というわけで、とりあえず今晩俺らが例のバットシリーズから情報聞き出すね。
その後犯人特定と、犯人特定できた後に俺らがそいつ呼び出したあとどうやって副社長引きずり出すのかの策はよろしく、賢者様っ」
と、香はギルベルトに振る。

そこでようやく我に返ったギルベルトは、
「あ、ああ、そうだな。先にそっちだよな」
と、ハッとして頭を切り替え始めた。

「できれば春休みの間に片つけてスッキリ転校してえしなっ」
目標を持って頭がクリアになり始めるギルベルト。

「まあ…色々なパターン考えるわ。タヌキジジイと知恵比べだなっ」
と、先ほどまでとは違い、にやりと策士の顔になってきた。

「んじゃ、そう言う事で。俺あーちゃんの様子見てくるわ。
起きたら色々報告したらなあかんこともあるし…」
と、ギルベルトが稼働し始めた事でアントーニョは安心して立ち上がった。

「あ~、お兄さんに許してもらえたの?」
フランが聞くとアントーニョはにやりと

「その条件が例の転校やねん。あれ条件に一緒に暮らす許可出てん。
せやからこれからず~っと側におって支えてやれるしな。
おはようからおやすみまでやで~」
と、そう言うと、香がぴゅ~っと口笛を吹いた。

「その年で同棲?すごいね。ここで暮らすん?」
「そそ。今でも月の半分は一緒に暮らしとるけどな。
やっぱり正式に許可取りたいやん。将来的な事もあるしな」
そう言って寝室のある2階に上がっていくアントーニョを見送って、香はしみじみつぶやいた。


「トーニョってさ…あれだよな。親分て感じだよな…」
「何を急に」
そのつぶやきを拾ったフランが首をかしげる。

「うん、なんつ~かさ、一人でもすごい賢者様とかと違って他人が介在しなくて一人きりだとただの我儘な男なんだけどさ、懐に誰かいたりとかすると、とたんに空気がボスになるっつ~か…。
ちょっとローマ爺に似てる。
あれもただの調子の良いクソ爺かと思えば、変なとこでボスだったりとかさ…」

「ふ~ん、ヴァルガス財閥の会長って一代で財をなした人だよね?
トーニョもなんかそういう才能あったりすんのかねぇ」

コポコポとコーヒーのおかわりを注いで回るフランに、PCで何やら作業中のギルベルトが手は動かしながら

「ああ、あいつは将来なんかやらかすかもな。
エンジンかかった後の集中力とか半端ねえから」

と、口をはさんだ。




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