全員がアントーニョのリビングに集まって山のようなお菓子と飲み物を前にゲームにインした。
「じゃ、今晩は魔王倒すで~!かんぱ~い!!」
と、ジュースの入ったグラスを掲げてアントーニョが言うと、みんなでチン!とグラスを重ねる。
『じゃ、それぞれ買い物して城の門前に集合な』
ギルベルトの一言で、それぞれ目的地に散っていく。
魔王退治のミッションは城で受けた後に教会に行く様に言われ、教会で聖痕をつけてもらう。
それがついていると城の裏にある湖から魔王の城のある世界に行けるのだ。
全員城前に集まると、裏にある湖に向かう。
『なんだかドキドキするな。今度こそ倒せるといいなっ。』
リアルで頬を紅潮させながら目を輝かせるアーサーに思わず笑みを浮かべるアントーニョ。
「アーティは俺が守ったるから後ろから離れんといてな」
と、こちらはリアルで声をかけた。
そこで初めて隣の存在に気付いたかのように、さらに赤くなるアーサー。
「うん…よろしく…お願いします…」
と照れて俯くのも可愛くて、もう魔王よりこちらを攻略したいくらいだ。
『じゃ、そういう事で行くぞ!』
と、ギルベルトの合図で全員が湖に降り立った。
全員が水上に浮かぶと、水が波紋を描き、次の瞬間景色が変わる。
今までいた世界が水底に見えて、目の前に魔王の城が見えていた。
魔王の部屋への道は、前回のチャレンジでアーサーがマッピングして図解して全員にメールで回している。なので、道をきちんと把握している分、余計な戦闘が省けて魔王の間までは余裕を持ってつく。
広間にはいると即イベント&戦闘になるので、その前にそれぞれ作戦と持物を確認。
万全を期してドアを開けた。
入ってイベントが終わると即フランが命中率UPと防御UPの魔法をアントーニョにかけてアントーニョは魔王に向かって特攻する。
フランはその後ギルベルトのために攻撃力UPの魔法をかけた。
魔王と雑魚敵3匹がアントーニョに襲いかかるが、それのタゲを取りつつ、きっちりと雑魚のタゲをアントーニョが取ったらギルも加わってまず雑魚を片付け始める。
支援魔法は2つまでしかかけられないので、これでアントーニョは命中率&防御、ギルベルトは攻撃&防御がかかっていることになる。
アーサーには防御と魔力の自動回復の魔法。
そして最後にフランは自分のために攻撃力UPと命中率UPの歌をかけて、最後に敵に向かっていった。
最初にアントーニョが魔王も雑魚も殴ってタゲをひきつけ、アントーニョが殴りである程度ヘイト稼いだ頃に、タゲを取らない程度にギルベルトとフランシスが殴りに参加。
アーサーはひたすら回復し、フランは殴りつつ効果時間が切れそうになった時に魔法のかけなおしといった感じで戦闘を進めていく。
『あと20秒で雑魚がまた沸くぞ』
雑魚の再生時間を測っていたギルがそう告げる。
再生した雑魚がまず向かう先はおそらく回復でヘイトが乗っているアーサーなので、アントーニョは急いで魔王を引き連れながらもアーサーのそばの後衛側に走った。
『ちょおここで殴っとるさかい、万が一タゲ向いたら取り返せへんし、アーティは回復少し控えてや』
と、注意をうながしつつ、魔王を殴るのをやめて雑魚の再生を待つ。
やがて雑魚が再生したのでアントーニョがとりあえず急いで全部順番に殴っていく。
そうして全部の雑魚のタゲを取ったアントーニョが再び魔王も引き連れて、後衛にとばっちりの行かない少し離れたあたりまで戻った頃に魔法をかけ終わったフランシスが同じく前衛の位置に向かいつつ、後ろからプスプスとサーベルでつついていた…その瞬間!!!
ピカ~っと光を放って魔王の身体が霧散した。
え??えええ????
なんだかめでたそうな音楽がなっている!コングラッチュエーションだ!
どうやら…フランシスのプスっと刺した一撃…というより一針と言った方が良いかもしれない攻撃が最後のとどめになったらしい。
呆然とディスプレイを眺める4人をよそに、なんだか魔王を倒した祝いみたいな画面が流れて、ストーリーが進んで行く。
そして有無を言わせず終了画面。
めでたそうに平和が戻った事を喜ぶお城の面々の画面のまま、テロップが流れた。
『魔王討伐お疲れさまでした。
今回参加して頂いた皆様には当企業の側でささやかながら祝宴と粗品をご用意しております。
また、その場で一億円の授与式も予定しております。
明日午前中、それぞれのご自宅にお迎えにあがりますのでご自宅前でお待ち下さい。
なお、お迎えに上がる時間には多少差がございますので、別個メールにてお知らせいたします。』
なんだかあっけない終了宣言だ。
「なんやこれ…ほとんど削ってへんのに、フランが魔王倒した事になるんかい」
リアルで少し不満げなアントーニョ。
しかしアーサーは真面目な顔で
「う~ん…でも1億取ったって事が何かの記事にでもされて表沙汰になれば、今度はゲームの参加者じゃなく、不特定多数から命狙われたりしそうだしな…。下手に取らない方が安全で良い気がするな。」
と、すっかり他人事発言をすると、
「あ~、それもそうやな。ミッション達成金だけで100万近くになるし、それで十分か。まあそう考えれば俺らやなくて、取ったのフランで良かったわ。またアーティが狙われたりしたら、ほんま生きた心地せえへんし」
と、アントーニョがまた薄情な事をつぶやいた。
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