オンラインゲーム殺人事件あなざーその6・魔王探偵の事件簿_10

『アゾットの日記 -7- 
面白い事が起こった。

情報を集めてかぎ回っていた雑魚、エドガーがイヴが犯人てとこまで辿り着いた。
まあそこまでは雑魚にしてはよくやったと褒めてやってもいいんだが、雑魚は所詮雑魚。
僕がイヴに騙されてる哀れな第三者だと思って離れるように忠告してきた。
本当におめでたすぎて笑えるな。

ま、笑うのはいいとして、それを明晩全員の前で発表しつつ主催にメールを送るつもりだというのはなんとかしないと楽しいゲームが終わってしまう。

僕は奴に非常に感謝していると礼を述べ、事情を全く知らないので、詳しく話を聞かせて欲しいと丁重にお願いする。

探偵もどき君は自分の推理を話したくてしかたなかったんだろう。
礼もしたいし話もじっくり聞きたいからと呼び出すと、やっぱりノコノコ呼び出された。

もちろんそれはイヴに始末させる。


さて、そろそろ仕上げの時間か…と思っていたら、とんでもない事が起きた。
なんとトーニョが僕とイヴのパーティに入りたいなどと言ってきたのだ。

どうやらギルベルトとパーティの進め方について揉めたらしい。
トーニョはこんな殺人事件が起こっているからさっさと魔王を倒した方が良いと思うのだが、ギルベルトは殺人犯を明らかにするまで終わらせたくないとのこと。

最初は僕がイヴの共犯者とバレたのかとも思ったが、理由を説明する際、「ギルちゃんは親が警察官やさかい、無駄に正義感とか持ちすぎてんねん」とか、ギルの身バレにもつながるような事を言っていたので、疑われてはいないようだ。

それでもこの状況はあまりありがたくはないな。
それでなくてもイヴは前のパーティで組んだ相手が二人殺されている。
ここでさらにトーニョが殺されれば、疑いは間違いなくイヴに行くだろう。

だからここは遠回りになっても先にギルとフランを殺して、1人になったアーサーを心配したトーニョがアーサーの方に戻ったタイミングで殺すのがベストなのだが、イヴは言う事を聞かない。

トーニョがいなくなれば魔王にトドメを刺しやすい近接前衛が自分だけになると言う事に固執しすぎている。

まったく、誰がここまで苦労して疑いを晴らしてやったんだか、全くわかっていない愚か者はこれだから嫌だ。

だが、放置すればイヴは勝手にトーニョを呼びだして殺しかねない。

…仕方ない…復讐は別の方向性でやるか…。

アーサーを犯人に仕立て上げるのは無理なら、もう二度と顔をあげて世間に向き合えないような事をしてやればいい。

イヴが暴走してトーニョを殺す前に、アーサーをレイプさせよう。
男にレイプされるなんて確実にトラウマになるだろうし、なんならそれを動画に取ってネットで流してやればいい。
どこに行っても男に犯された男という事実がついて回るだろうし、人生はある意味殺人犯になるよりもめちゃくちゃだ。
イヴにはそれを条件に、その後すぐのトーニョの殺害を許可しよう…』

おそらくこのあとアーサーを呼びだしてイヴの所で本人が殺されているのだろう。

日記はここで途切れている。
途切れていて…終わっていて良かった。
さすがのギルベルトでも、これ以上読んでいたら冷静さを保つ事は難しそうだ。

大きな丸い目の…まるでヒナ鳥のようなアーサーの顔を思い出す。
アゾットの計画通りの事があの子に対して行われたとしたら……(俺様でも、イヴもアゾットも殺しちまうかもしれねえ…)と、ギルベルトはとりあえず落ち着こうと大きく深呼吸をした。

実際ギルベルトが駆け付けた時にはアーサーは上半身はシャツが破かれていたが下半身の服装の乱れはなかったため、未遂だったようだが、アントーニョがいなければそういう事も起こりえたわけで…なんだか悪夢を見そうだ。

「…まあ…でももう殺人の実行犯のイヴは刑務所で、アーサーに敵意を持つアゾットは死んでるわけで…解決はしたんだよな…」

と、独り言をつぶやくと、

「そうですね。トラウマになっていたら何か解決の足しに…とは思いましたが、そうでなければ本人には見せない方が良い内容かもしれませんね。」
と、トーリスが珈琲のカップを渡してくれる。

それに礼を言って口をつけると、苦い味が口の中に広がった。





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