オンラインゲーム殺人事件あなざーその6・魔王探偵の事件簿_3

真相へ(17,18日目)


「トーニョは?」

翌朝、寮に戻ってきたギルベルトは、ひどく不機嫌だった。

「おかえり~。ご飯食べる?それとも食べて来た?
疲れてるならお風呂にお湯はってあげようか?」
と、いつものように甲斐甲斐しく迎えるフランシスの問いに答えもせず、そう問いかける。

フランシスはそんな態度にも慣れたモノで、
「昨日戻ってからはずっとアーサーと一緒。
お兄さんは会えてないけど、アントーニョが特に荒れた様子も見せてなかったから、落ち着いてるっぽいね。」
と、必要であろう情報を添えて答えると、
「そっか…なら良かった。」
と、ギルベルトは少し厳しい表情を緩めたが、しかし相変わらず考え込んだままだ。

廊下に立ち止まったまま思案するギルベルトに、
「ね、お兄さんの部屋でゆっくりしながら考えたら?
話聞いて良いなら聞くし、いけないなら、お茶でもいれてあげるから。」
と、フランシスが声をかけて自室に促すと、ギルベルトは
「ああ、悪い」
と、頷いて、フランシスの部屋へと足を運んだ。




少し時を遡り、昨日の午後の事だった。

その日はアーサーが異母兄に会いに行くのにアントーニョがついて行くと言うので、実質1人になり邪魔される事もないと言う事で、ギルベルトはゲーム内外の今後について考えていた。

ゲーム外、リアルについては、全員もう帰省する事もないので、寮に籠っていれば安全だろう。

ゲーム内については、もうさっさと魔王を倒したいところではあるが、タンク役であり削りのメインであるアントーニョが抜けると、それも難しい。

というか、無理だ。

だから決着はまずリアルの方で。
ギルベルトの予測では最初の二人、ゴッドセイバーとショウはイヴの単独犯。
その後イヴとアゾットがどうやってか手を組んだが、アゾットはおそらくイヴのアリバイ作りや犠牲者のおびき出しを担当。殺人の実行犯はイヴ。

だからイヴがアントーニョを襲って現行犯逮捕されてくれれば、少なくとも身の安全は保障されると思うので、魔王を目指すのはそのあとになる。
もっとも…その時にはこのゲームが原因と判明する事になるだろうから、ゲーム自体が中止されている可能性もあるとは思うが……。

そんな漠然とした考えをノートにまとめつつ、整理をしていた時に唐突に携帯が鳴った。
…アントーニョからだ。

『ギルちゃんっ!!アーティが誘拐されてんっ!!今、タクシーで連れ去られてんけどっ!!』
と、名乗りもせず叫ぶアントーニョの言葉に、脳内でカチャカチャと情報が整理され、そこからはじき出された結論に、さ~っと全身から血の気が引く。

…もしかして……アーサーの兄貴もゲーム関係者…もっと言うと犯人のどちらかっ!!
即手を下せる場面はいくらでもあったであろうに、今回誘拐という手段を取ると言う事は、実行犯のイヴじゃなく、アゾットの方かっ!
と、そこまで分析して、今すぐ考えなければならないのはそこじゃない、と、また情報を整理していく。
アーサーの居場所…もっと言うならアゾットの向かった先の手がかりになるものは……
即今までの情報を全部メモした大学ノートを目を皿のようにして見る。

これだっ!!
とある記述で思いだした。
それをアントーニョに告げる。

「お前…以前、アーサーの兄貴にGPS付きの時計送ったっつってたよな?
兄貴も一緒ならそれで居場所わかんねえ?」

と言えば、アントーニョもハッとしたようで、
「おおきにっ、ギルちゃん!また連絡するわっ!」
と言うと、ギルベルトにそれ以上何もいわせる間もなく即電話を切った。

こちらも援護の準備をしたいからマメに連絡を寄越せと言いたかったのだが、まあ仕方ないだろう。
緊急事態でアントーニョもおそらく余裕がない。


とりあえず場所がわからないなりに自分に出来る事を…とギルベルトは考えて、父親に現状を説明したメールを送って、出来るなら連絡がつき次第人員を送れる準備だけしておいて欲しい旨を告げておく。

そのうえで自分は連絡が出たら即出られるように準備。

そうしているうちに、父親が、まだ物理的に犯罪が起こっていないので公式には動けないが、これまでの経過を考えると犯罪が起こる可能性は十分すぎるほどあるので、信頼できる部下にプライベートという形で協力して動いてもらうと連絡をくれた。
ありがたい。

なんとすでに車でこちらに向かってくれていると言うので、ギルベルトは急いで正門に向かった。



Before <<<  >>> Next


0 件のコメント :

コメントを投稿