生贄の祈りver.普英_2_2

天使


悪漢に攫われかけてた天使をギリギリのところで助けた。

さすが俺様……
と、思ったのも束の間、自分の正体がばれたら気を失われた。

天国から地獄へまっさかさまと言うのはこう言う事を言うのだろうか…



いや、諦めるな、ギルベルト・バイルシュミット!
少なくとも自分にはお姫さんを守る力もお姫さんに快適空間を提供する力もあるじゃないかっ!
もちろん最終的には自分にも慣れて親しんで欲しいが、とりあえずの目標はお姫さんに鋼の国の王城に慣れてもらう事だ。


それには無事お姫さんを王城まで連れて行かなければならない。


というわけで、国境沿いにとどまっているのは危険と判断。

ギルベルトは気を失ったままのお姫さんを乗せて馬で王城まで飛ばす事にした。


そして馬に乗ってみて気付いた。


お姫さんを抱えて馬に乗るとして…これ痛いよな?
どうやったって重鎧姿の自分に抱き締められたら、お姫さんは痛い。


これまで誰かと一緒に馬に乗るとか想定していなかったので、考えてもみなかった。


「ちょっとお前…」

ちょいちょいとそこにいる稲妻隊の隊員の1人を手招きして、一旦お姫さんを降ろして自分も降りる。

そして…おもむろに鎧を脱ぐ。


焦る隊員達。

それに言うギルベルト。


「このまま一緒に抱えて乗ったらお姫さん痛いだろ?」

「ま、まあそうですが、だからと言っていくら王でも危険ですっ!」

「んーーでもまあ…俺様が多少怪我するよりお姫さんの快適性じゃね?」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


「わかりました。ではせめて私の装備をお付け下さい」


当たり前に王として何か足りない主張をするギルベルトに、付きあいの長い隊員は早々に諦めたらしい。

自分の鎖帷子とサーコートを脱いで王に差し出した。


「私がこの王の鎧を身につけ、他の者と共に残党を狩ったあと目立つように別ルートで戻って囮になりますので、王はなるべく目立たぬよう速やかに王城へとお戻りください」


王は言ってもきかない気が満々のようなので、これが一番建設的かつ安全だと判断した隊員は、そう言って王の鎧を身につけ、王を見送ってため息をつく。



この若き王はこと戦闘となると有能で戦術に長けていて剣技も惚れぼれするほどだが、それ以外の事ではフリーダムで突拍子もないところがある。

まあ、それを含めて最強にして敬愛すべき我らが王だ…と、隊員は苦笑しつつ、仲間を集めて残党狩りを開始した。



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