ローズ・プリンス・オペラ・スクール第七章_7

兄貴とルッツ


――兄さん……

「ん~?なんだルッツ?」

その日は久々に戦闘もなく、1人と1羽はゆっくりと食堂で食事を取ることにしたところに双子にあって、結局3人と1羽で夕食を摂った。

普段は黄色の小鳥のままギルベルトの頭にとまっているルッツも意志の疎通のため黒鷲になっていたので目に止まったのか、双子の弟の方、フェリシアーノはやたらと1人で黒鷲のルッツに話しかけながら、時折ギルベルトに許可を得て自分の皿のモノをルッツに取り分けていた。

もちろん人の言葉を解し、人の言葉を操れる事は秘密なので、ルッツの方はしゃべらなかったのだが、ギルベルト以外であんなに話しかけられ、構われたのは初めてだったので、随分と色々刺激を受けたように思う。

――俺も…鳥の姿でなければ会話をしても問題がないのだろうか……

「あ~、お前フェリちゃんか?あの子と話したいんだろ?」
ケセセっと笑うギルベルトに、

――からかうな…

と、そんなわけはないのだが、黒鷲はかすかに赤くなった気がする。

――ただ…話しかけられて答えないのが済まない気がしただけだ。

プイッと顔を逸らすルッツに、ギルベルトはすぐ反省をする。

「わりい、わりい。でも良い事だと思うぜ?
お前がちゃんとしたお前でいるためにはよ、俺様以外の人間にも好意を持てる方が良い。
それがお前の魔力を正しい方向に導いてくれっからな?」

――そう…だろうか…。魔と人間の血を引く俺のようなモノが近づいたら迷惑ではないか?
そう言った途端、ギルベルトの目が鋭く細められた。

「…おい…ルッツ…ルートヴィヒっ!
お前は俺様が信用できねえってか?
俺はお前をきちんと聖の方向に向かわせるようにって事でローマの爺さんから預かって、ちゃんとそう育ててるはずだが?」

手にした鞭を指先でいじりながら、目はルッツの方に向けられている。

「しかも忘れんなよ?
お前は魔の中でも誇り高き竜と若かりし頃の才能ある爺さんを救うために自らを犠牲にすることを厭わなかった爺さんの世界で一番大切だった対の間に生まれた命だ。
誰だろうと…例えお前自身だろうと、俺様がビシっと育てている、そんな風に生まれたお前を貶める事は許さねえ。」

怒りを含んだギルベルトの静かな言葉に、ルッツは自身の発言を恥じた。

――すまない。恥じるとしたら生まれでも育ちでもなく、自分自身の心の在り方であるべきだな。

「わかればよし!精進しろよ、ルッツ。
そうしたらいつか人型もとれるってローマ爺さんが言ってたしな。」

――うむ。そうなれるよう鍛えてくれ、兄さん。

「よっしゃ!それでこそ俺様の弟分だぜっ!
じゃ、今日は戦闘もないから中庭で戦闘訓練でもすっか。」

こうして1人と1羽はすっかり日の暮れた庭で汗を流すのだった。





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