ローズ・プリンス・オペラ・スクール第七章_3

対のピンチ?!


アーサーが早退した…。

2年生の教室から、走りやすいようにランチにしているサンドイッチをくわえて、いつものようにアーサー達がいつもランチを摂っている中庭まで疾走したアントーニョは、その話を聞いて今度は自分の離れまで疾走する。

二年の教室から一年の教室を超えて中庭について、そのまま10分も一緒にいたら今度はとんぼ返りで二年の教室に向かって昼休みが終わるくらいの距離だ。

離れに足を向けた時点で午後の授業には間に合わない事は確定。
当然早退届など出してないわけだが、それがどうしたというのだ。

大事な大事な宝物に早退しなければならないような事態が起こっている…体調を崩しているのかもしれないのに、それを保護する以上に大事な事などあるはずもない。

そんな理屈で離れにたどり着いたアントーニョの目に移ったのは黙々と立ち昇る黒い煙…。

いったい何が?!よもや敵の襲来かっ?!!
そう思って玄関のドアを開けた途端爆音が響き渡った。


「アーティィィ~~~~ッッッ!!!!!!」

まさかあの子に何かっ?!!!
蹴破るようにドアを開け、煙の発生地らしいキッチンへと駆けこむと、涙目のままへたり込んでいる愛しいパートナー。

「アーティ?!大丈夫かっ?!!怪我ないかっ?!!!」

もうとにかくそれが一番で、真っ黒になっているキッチンの惨状など後回しでアーサーの顔を覗きこむと、大きなペリドットに涙を溢れさせた愛しい愛しいパートナーは、子どもじみた仕草でフルフルと頭を横に振った。

「…ほなら、良かったわ~~~」
アントーニョは安堵の息をつきつつ、アーサーを強く抱きしめた。

「…ご…ごめ……」
ヒックヒックと腕の中でシャクリをあげる愛し子に、

「ええよ。アーティが怪我してへんかったらなんでもええわ。」
と、安心させるように微笑みかけると、アントーニョはヒョイッとその身体を抱き上げて居間のソファに運んだ。

「ちょっと片してくるさかい、ここで大人しゅう待っとってな?」
コツンと額に額を軽く押し当ててそう言うと、アントーニョはキッチンへと向かう。

その後姿を見送って、アーサーは絶望的な気分になった。
結局自分は迷惑をかけるばかりで、アントーニョに何一つ返せない…。

ダメだ…このままでは嫌われて追い出される日も近い……。

アーサーはフラリと立ち上がると寝室へと向かった。



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