ローズ・プリンス・オペラ・スクール第六章_1

闇に潜むモノ


街外れの空き地の鬱蒼とした草木をかき分けていくと、シュルリと伸びてくる何本かの触手。

バササっと闇夜に光る光沢のある翼をはためかせた黒鷲の起こしたかまいたちが、その殆どを切り落とし、残った僅かなものはギルベルトの銀の剣が切り裂いた。

――本体は…どこだ?
触手の切り口から流れでた緑の――おそらく血であろう――液体で染まったそこかしこからしてくる異臭を極力嗅がないようにしつつ、ギルベルトは歩を進める。

最初の戦闘で媚薬のような効果があると教わったその匂いは本体を倒せば徐々に薄れてやがて消えるが、それまではまともに吸い込むと危険だ。
戦えなくなる。


魔法や魔法を帯びた武器でしか倒せないそれは、どういう風に生まれどこから来たのか、理事長は当然知っているが、学生達には知らされていない。

ただ、それが地上に現れると宝玉の適応者達はなんとなくそれを感じる。

そして皆対を持っていなかった去年までは悪友二人とは別に、宝玉を使用しないでもその能力を操れるようになった指導役の元適応者が一人か二人ついて、その殲滅に当たっていた。

宝玉の適応者達が学校を卒業後ほぼ全員と言って良いほど就職する一流企業ローズ・プリンス・オペラ・カンパニーは、学校と同じく歌劇団と言う表の顔の裏に、その殲滅という裏の顔がある。

たまに引退…という形も取らずに消えていくスターがいるのは、とどのつまりはそれで命を落としたということだ。

いや…落とした…というのだろうか……?



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