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「お前なあぁぁ……」
完全にシン…としたところで、はぁぁ~~っとギルベルトが片手で頭をかきながら、大きく息を吐き出した。
「ギルちゃん、めっちゃ焦っとったなぁ」
と噴き出すアントーニョ。
笑い事じゃねえ…と、軽く睨みつけるギルベルトに、アントーニョは
「今後万が一アゾットの名前出したのフランに聞かれとっても、気にせんようになったやろうから、やりやすいやろ。」
と、ウィンクして見せる。
「…そういうことかよっ。ああ、確かにこの先何かで俺らの会話の端々が耳に入るって可能性はあるけどよ……先に言っておけよ。心臓に悪い。」
「言う暇なかったやん。
ま、それはええとして、実際のところ被害者は順番にゴッドセイバー、ショウ、メグ。
犯人側は…なんで協力体制取っとるかはわからんけど、俺はアゾット主犯でイヴ共犯やて思うとるんやけど?」
「ああ、俺様もそう思う。
てかな、むしろ俺様、実はイヴは中身が入れ換わってるっつ~か、アゾットに乗っ取られてんじゃねえかって思ってる。」
「ほお?」
「ショウが死ぬ前と死んだ後、明らかにイヴのキャラ違いすぎだろ。
で、同じくれえのタイミングでアゾットと接近してっしな。
実はIDとパス盗まれて秘かにイヴが殺されるかしてて、今イヴのキャラ使ってんのがアゾットの協力者って可能性が一つ。
もう一つはイヴがアゾットに弱み握られて協力させられてるか…そう、例えばゴッドセイバーとショウ殺したのがイヴでそれがバレて…とかな。」
「まあ…そんなとこやなぁ…」
「だから…フランが聞いてる場所では犯人について言及できねえから、ああは言ったが、たぶん…オスカーはあれだ、単にアーサー個人に粘着してるっつ~か…ネトゲでよく中の奴が女だと知ってストーカーする野郎と同じで殺人には無関係だと思うから、きっちり対処した方が良くねえか?」
怯えた状態でいさせるのも可哀想だしきっちりとけじめを…と言うギルベルトの発言に、アントーニョは静かに…しかし絶対に反論は許さないと言う威圧感を持って宣言した。
「アーティの事は親分がちゃんと考えとるから、ギルちゃんは口出さんでおいてな?」
そう言うアントーニョの瞳が暗い…しかし射抜かれそうなくらい強い光を放っている。
久々にアントーニョから冷やりと背に鋭利な刃物を突き付けられたような恐ろしさを感じて、ギルベルトは息を飲んだ。
大抵のことは適当に流すアントーニョだが、これは本気だと思う。
(それが…良い方向に本気だと良いんだけどな……)
おそらくアントーニョがこうと決めてしまったら自分では止められないどころか、下手をすればこの一連の殺人事件に乗じた殺人の被害者になりかねない……が、ぎりぎり、そんな恐怖に正義感が勝った。
「…アーサーにとって悪い状態になる事はしねえよな?
俺様は犯罪に協力する気も見逃す気もねえぞ。」
震える手をぎゅっと握り込んで押さえこむと、ギルベルトはそれでも正面からアントーニョを睨みかえす。
一瞬絡み合う視線……張り詰める空気……
それを破ったのはアントーニョの方だった。
ニコリと口元にのみ笑みを浮かべて、この状況と言葉に不似合いな明るい口調で言う。
「ギルちゃんと殺し合うのはしんどそうやな。
まあ出来れば避けたいし、ちょっかいかけてこんといてな?
親分が大事なお宝ちゃん傷つけるわけないて、ギルちゃんが一番知っとるやろ?」
これ以上踏み込むな…と、言外に言われて、しかし同じく、危害を加える気は一切ないのだという事も、また言外に含む言葉に、ギルベルトは頷くしかない。
殺し合うのは…という言葉が脅しではないとわかっているだけに余計に…だ。
こうしてその日は若干飲み込みきれないものを抱えたまま、ギルベルトも部屋に帰った。
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