それでも東京郊外の広大な敷地に森…と言っても良いのではないかと思われるほど植えられた大量の木々のおかげで、都会よりは若干涼しい。
正面玄関近くに立つ校舎から庭をはさんで200mほどの場所に隣接する寮の中で東の端に立つ赤竜寮からは東門が一番近いので、秘書には東門前に車をつけてもらうように手配している。
「ギルちゃん、門ついたから開けたって~」
と、ギルベルトに電話。
門を開けてもらって外に出ると、アントーニョはすでに待っていた車に乗り込んだ。
アーサーの方には当然連絡はいれてない。
行くと言えば恐縮して遠慮するだろう。
そういうところがじれったくも可愛くて、ついつい甘やかしたくなってしまうところなのだが…。
「とりあえずどのくらいかかるかわからへんから、そっちの駐車場にでも入れて待っといて。」
マンションに着きドアを開けて外に出ると、3件隣りのコインパーキングに視線を向けて言って、そのまま返事を聞かずにマンションのエントランスに入る。
そのまま合鍵でガラスドアを開けて中に入り、エレベータのボタンを押すと、自然に鼻歌が口をついて出た。
出迎えた瞬間、あの子はどんな顔をするだろうか。
驚きに、あの大きなまあるい瞳をまんまるく見開いて、可愛い小さな口をポカンと開けて呆ける図が目に浮かぶようだ。
ちん!と静かな廊下に響くエレベータの音。
3階に着くと足取りも軽くアーサーの部屋を目指す。
そして部屋の前。
ぴんぽ~んと鳴らすチャイム。
そして声をかけた。
「オーラ、親分やで~」
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