オンラインゲーム殺人事件あなざーその3・魔王探偵の事件簿_7

保護(11日目)


こうしてなんとか無事ミッションを終えた帰り道にそれは起こった。
いきなりアーサーが崖から滑り落ちたのである。

『アーティ?そっちなんかあんの?』
と、自分も迷わずそのあとを追って崖を滑り落ちるトーニョ。
『いや…その…素でミスって……ごめん。』
と心底申し訳なさそうに言うアーサーに、
『かまへんよ~。たまには別のルート探してみるのも面白いやんなっ。』
と、トーニョがその頭を撫でて元気づけるように言う。
それを合図にギルベルトも当たり前に崖を滑り降りた。

これはもう全員で別ルートを探すことになるのか~と、フランも続こうとした瞬間…ひゅんっ!と矢が飛んできた。

「危なっ!」
一瞬警戒するフランだが、矢が飛んで行った方向ではいつのまにいたのかクモのモンスターが矢に串刺しにされて消えて行く。

矢が飛んで来た方向を見ると大きな弓を構えた見るからにアーチャーな男キャラ。
オスカーではないのでヨイチなのだろう。

一応…助けてくれたのか?
しかしフランが礼を言おうとして振り向いた瞬間、音もなく消えて行った。

行動が謎だ。
しかしいつまでも考えてても仕方ない。
フランも急いで3人を追った。



こうして4人揃うと、まずトーニョが
『さ~、道探そか~』
と先に立って声をかけてハッとする。
『アーティ!何しとるん?!そっちやばいで!』
炎につっこみかけてるアーサー。

慌てて炎とアーサーの間に入るトーニョにハッとして
『…あ…ごめん…』
と足を止めた。

『どないしたん?疲れた?とりあえず俺に追尾しとき』

このゲームにはキャラを指定して追尾する設定がある。
それをアーサーに勧めつつ、アントーニョはアーサーに電話をかけた。




「もしもし、親分やで。」
と声をかけると、電話の向こうで少しホッと息をつくような気配。

「なんかあったん?」
と、その様子に少し心配になって言うと、アーサーは一瞬迷うように沈黙した後、
『…いや…なんでもないんだ…』
と言うが、明らかに声が震えている。

なんでもないわけはないと思う。
何か泣きそうな声音が可愛くも可哀想で、抱きしめて慰めてやりたくてうずうずする。

…が、アーサーの性格からいって、これ以上尋ねても無駄だろう。
アントーニョは即そう判断すると、

「おん。わかったわ。」
と、そこで通話を打ち切って、キーボードに指を走らせた。

『今日はここまで。ここで落ちて戻るのは明日な。
明日はインしたら全員揃うまでここで待っといて。』

『へ??』

いきなりのトーニョの宣言にアーサーとフランはポカンとするが、ギルベルトは何かを察したのか

『わかった。明日は皆、他を待たせないようになるべく早くインなっ。』
と言いおいて、まず真っ先に自分がログアウトしていった。
ついでトーニョがログアウトする。



そうしておいて…
「おい、何があったよ?」
と、ログアウトしてPCを落とすと、ギルベルトは即アントーニョの部屋に向かった。

大体においてこの寮、そして3人の中で方向性を決めるのはアントーニョで、そのために色々細かい手配をするのは自分だと言う自覚がある。
ゆえに、ギルベルトはアントーニョに言いだされる前に部屋を訪ねたのだ。

「さすがギルちゃんやな。話早くて助かるわ。」
と、ドアを開けてギルベルトを部屋に招き入れるアントーニョはすでに手に持った財布と携帯をポケットに突っ込んでいる。

「…で?どこ行くんだ?」
まあ出かけるつもりなのはみればわかる。
どこへ行くかも検討はつく気はするが、一応聞いてみると
「わかっとるんやろ?」
と、アントーニョは苦笑した。

「ああ、まあ…な。
門の開閉すっから、戻ったら電話くれ。
他に何か用意しとくもんあるか?」

寮の建物内はエントランスのところに指紋認証の鍵があるので寮生は出入り自由だが、寮の門の鍵は朝の8時から夜の8時までは警備員が管理していて、その後は出歩かない前提で開かない。
だが各寮の寮長のみ、非常時用に管理室の鍵を預かっているため、一応開閉は可能である。
それをアントーニョは財布のキーケースから外してギルベルトに投げてよこす。

「あまりに何か参ってるような事あるようやったら、今夏休みで寮監もおらへんし、今晩はもうここに連れてきてまおうかと思っとるんや。
せやから気が紛れるようにフランに何か甘いモンでも用意させといて?」

「了解っ。気をつけて連れてこいよ。」
「ん。おおきに。」



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