翌日…アントーニョは東京の某駅に降り立った。
駅前は小さな商店街で、ぱらぱらと買い物客が行きかっている。
ゴッドセイバーは刺殺ということだったが、こんな真昼間の商店街で殺傷沙汰もないだろう。
まあ飛び道具が出てくる事はないだろうし、刃物くらいならなんとかなる気もするが、アントーニョは念のため商店街の中の小さな花屋に入って、丁度目についたバラにかすみ草を混ぜて花束を作ってもらった。
棘もあり、顔につきつければ目くらましになるし、万が一何もなければ土産とでも言えば良い。
こうして、周りに注意を配りながらも何気ない風を装って商店街を通り抜け、住宅街にある4階建てのマンションに足を踏み入れた。
昨夜アーサーに聞いた自宅はこのマンションの3階の端、306号室だ。
一応郵便受けを確認すると306は確かにアーサー・カークランドになっている。
だが、実際そこに住んでいる人物が自分が知っているアーサーとは限らない。
罠だとすれば人目がなくなるマンション内、306号室にたどり着くまでだろう。
たどり着いたら別人だと言う事がばれてしまう。
あまり用心しているように見せては相手も警戒するかもしれない…。
そう思って、アントーニョは小さく口笛を吹きながら、エレベータのボタンを押した。
チン!と音がして開くエレベータのドア。
一瞬緊張するが、中は空。誰もいない。
降りる時も一応ドアが開く正面には立たず、側面の壁に張り付いて身構えていたが、やっぱり降りても誰もいなかった。
ここにきてアントーニョはさすがにおかしいと思い始めた。
このままだと306号室についてしまう。
それともぎりぎりまで行動を起こさず油断をさせておいて…なのだろうか…。
…などと考えている間に306号室の前。
(さすがに自宅前で人刺したらまずいやんな?)
と、それでもまだ罠だと言う疑いを捨て切れず、釈然としない気持ちでチャイムを押した。
ドアの向こうでパタパタと軽い足音がする。
そしてドアの前で止まる気配。
おそらくドアスコープからこちらを覗いているのだろう。
「オーラ、親分やで。」
と、声をかけると、チェーンを外す音がして、ガチャっとドアが開いた。
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