キャラクタ作成――初日Ver悪友
翌日午後5時。
寮長室のテーブルの上にはちょっとしたパーティーでも出来そうなほど、焼き菓子から手でつまめるカナッペなどのオードブル、サンドウィッチ、その他もろもろ並んでいる。
「やってる最中でも口寂しくなるだろうしね。」
とウィンクするフランシスに、それはアントーニョもギルベルトも二人揃って、フラン、偉い！と褒めまくる。
実際見た目や種類だけでなく、フランシスの料理はどれも美味しい。
ギルベルトもアントーニョも料理は出来なくはないし、実際に各部屋についているキッチンで自炊したりすることもあるが、バリエーションや見た目の美しさなどを含めて総合的には料理の腕はフランシスが群を抜いているので、集まる時の食事係は大抵フランシスだ。
とりあえず寮長室にあるミニ冷蔵庫に今飲む分を除いた飲み物を冷やすと、ギルベルトは手早く３台のノートパソコンにゲームをインストールしながら、焼き菓子をのんびり齧っている二人に説明を始めた。
「まずキャラ選びな。全部で７ジョブあるんだが、各ジョブ２名までだから、ぐずぐずしてると好きなジョブ取れなくなるから、予め何をやるかを決めておいて、時間になったら即クリックだ。
で、ジョブなんだが、大まかに説明すると、近接攻撃で平均的なのはウォーリア。同じく近接で攻撃寄りなのがベルセルク。
この２種は固い鎧着れるから、タンク（盾）の役割を担う。
近接＋遠隔攻撃できるシーフ。これは回避がダントツに高い。その代わりさっきの２種よりも防御も攻撃も低い。
だいたい敵を釣ってくる役割だな。
敵をある程度知ってねえとだし、パーティが倒せるペース配分とかも考えねえとだから、これは俺様がやろうと思ってる。
で、物理の遠隔攻撃がアーチャー。弓で攻撃する狩人だ。
同じく遠隔攻撃だけど魔法を使うのがウィザード。
この二つの大きな違いは、アーチャーは近接と同じく普通にずっと攻撃できるけど、ウィザードはMPがなくなると回復するまで何もできねえ。
その代わり唯一全体攻撃ができる。
あとは支援と回復な。
支援はエンチャンター。
MPを消費して色々な能力UPさせたり、MPを徐々に回復させたりする。
攻撃力はまあ…おまけ程度だ。
回復はプリースト。
攻撃は全ジョブ最弱。防御もウィザードに次いで低い。その代わりに唯一HPや状態異常を回復できるジョブだ。
おまけ程度に神聖魔法で攻撃出来るけど、そんな事にMP使うなら回復しといたほうがいいよな。
てことで…お前らジョブどうするよ？」
「ベルセルクにするわ。」
「お兄さんエンチャンタでっ！」
と、そこで声をそろえる二人。
ギルベルトはそれに苦い顔をする。
「ん～どっちかヒーラーやれよ。まあタンクは必要だから、フランがプリーストだな。」
と、顎に手を当てて少し考え込んだ末に言うと、フランシスが、え～！と不満の声をあげた。
「お兄さん、エンチャンタの服装すごく好きなんだけど…」
「服かよっ！」
と、その言葉にがっくりと肩を落とすギルベルト。
まあフランシスらしいと言えばらしいわけだが、今回は諦めてもらおうと思っていると、意外な事にアントーニョから待ったが入った。
「別にそれでええんちゃう？パーティは４人おるわけやし、ヒーラーは現地調達しようや。」
一見お気楽なその言葉に、ギルベルトの顔が笑みの形を取ったままひきつる。
「お前…話聞いてたよな？１ジョブ二人までっつ～ことは、プリーストは全体で２名しかいねえ。
早い段階でみつけられなかったら、他の奴らとパーティー組んじまってる可能性も高いぞ？」
と、自分的には非常にもっともな事を言っているつもりだったのだが、常識人の正論は
「何言うとるん？他に入っとってもそんなん俺らがレベルなり金なりをたくさん稼いで条件ええパーティに育てておいて引き抜けばええやん。」
という、実に俺様な上からな意見に握りつぶされた。
「いや、それはちょっと道義的に……」
「道義無視上等やん？そもそもが周りの敵対心俺らに向けといたら他に被害行かんし、いっちゃん手っ取り早いやん。」
うあぁぁぁ……と、争いを避けたいフランシスの目が遠くを見始める。
「夏休みいっぱいの短期戦やで？
地道に全員の人となりを調べて誰が問題起こしそうかなんて見極めとる時間ないやん。
それやったら、自分がターゲットになるんが手っ取り早いわ。」
「…まあ…そう言われればそうなんだけどな……うん…そうだな…」
勢いと乱暴なまでの説得力。
それがアントーニョが他２名を押さえて寮長である一つの理由でもある。
そして、今回もその激流のごとき考えにギルベルトが流された。
そしてすでに自我を通そうとしたことを思い切り後悔しているフランシスを別にして、二人はしごく納得しながら、20時になるのを待つことにした。
そして20時。
それぞれ自分大好きな3人は自分に似たキャラを作り、キャラ名は各自の愛称にする。
こうしてベルセルクのトーニョ、シーフのギル、エンチャンタのフランが、イルヴィス王国に降り立つ事になった。
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