時を超えたファントムの想い
「ファントム…いや、黒河先生な…アーサー自身に執着したわけじゃねえみたいだぞ?」
とんだ事件があって伝統のミスコンは中止になったものの、無事海陽祭が終わった生徒会室。
忙しかった分半分放心状態の生徒会役員の面々だったが、ロヴィーノの一言で、一斉にそちらに注目をする。
「これ…未発表のまま大事にしまい込まれてた作品な。ジジイがやってる美術館で買い取ることになったんだけどな。」
と、ピっと机の上に滑らせた一枚の写真。
金雀枝の花をバックに見覚えのある姿が描かれている。
「これ…アーサーじゃん?」
と目をぱちくりするフランに、横から写真を覗きこんだアントーニョがアホっ!と軽くその頭を叩いた。
「ちゃうわっ。これあれやろ、あーちゃんの爺ちゃん。」
「当たり。さすがだな。」
アントーニョの言葉にロヴィーノがうなづいた。
「高校の一学年先輩だったアーサーの祖父が好きだったらしいな。
んで、ジジイいわくな、アーサーの爺さんにもしばらく花とカードが届いてたらしいぞ?」
「で?どないしたん?」
「あ~…ストーカーかなんかだと思ってジジイ自分の学校そっちのけでおはようからおやすみまでずっとつきまとってガードしてたらいつのまにか来なくなったらしい。
で、その時に届けられてた花も金雀枝な。
で、数十年たった母校でその想い人と同じ顔を見てついつい同じ花を贈ってみたら、数十年前邪魔しやがった奴と同じ顔の奴がやっぱりつきまとってたと…。」
これってファントムよりホラーっぽくね?とロヴィーノが苦笑すると、ギルベルトも苦笑しながらうなづいた。
「でもなんだか…悲しいよね…。自分の想いが叶わなかった昔をまた彷彿させる光景を今更見ちゃったわけなんだからさ…」
フランが少し伏し目がちにため息をつく。
「ん~、でもないと思うぜ?想い人がさ、幸せそうにしてる光景なら何度みても嬉しいもんだ。」
そこでギルベルトがそう言うと、
「ああ…そうかもな…」
と、ロヴィーノもうなづく。
(俺達“幸せ見守り組”だもんな)
二人は気付かれないようにソッとアーサーに目をやった後、お互いに目配せすると小さく微笑みあった。
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