黒河先生は”ファントム”でした。
彼にとってのクリスティーヌは“生徒会のミスコン候補者”という立場の人間ではなく、アーサーという個人です。
とりあえずそれだけ明らかにした上で話を進めます。
学祭準備の一日目、黒河先生がアーサーの家を突き止めるのを確認した犯人は黒河先生を使って殺人計画を練ろうと考えます。
そして犯人は黒河先生が花をアーサーに届けに行くのを確認。
カードをチェックし、”ファントム”の名をみて、クリスティーヌを主演にすえるため邪魔者を排除するオペラ座の怪人”ファントム”になぞらえて、アーサーをミスコンで優勝させるために邪魔者を排除していく”ファントム”という図式を考えだします。」
「そして犯人は最終的に、自宅がわかるサッカー部の候補者は自宅に、自宅のわからないテニス部、化学部の候補者に対しては部室に、同じカードで脅迫状を送りつけることにしました。」
「ちょっちょっと待て!それじゃ、お前はサッカー部OBの俺が犯人だと言いたいのか?!」
ギルベルトの言葉に松永が慌てて駆け出すとギルベルトの襟首をつかんで詰め寄った。
ギルベルトはその手首を静かにつかむとはずさせて、ゆっくりその手を下におろさせる。
「やましいところがないなら…静かに聞いていて下さい。
全てを話したあとで反論なり質問なりは受け付けます」
「ふざけるなっ!素人探偵のくだらん推理など聞いてられるかっ!名誉毀損で訴えてやるっ!!」
叫んで帰ろうとする松永の腕をサディクがつかむ。
「警察の横暴も糾弾するぞ!」
それに対してギロリとサディクをにらみつける松永だが、サディクは
「できるもんならな。俺はいくつもの事件を解決した実績のあるこの名探偵に自分のクビかけるぜ?」
と平然と言い放った。
その言葉に一瞬目を丸くするギルベルト。
それから
「これは…絶対に失敗できませんね」
と苦笑した。
「まあ…松永さんがまどろっこしいのが嫌だとおっしゃるので、結論言います。
殺人の犯人は黒河先生ではありません。
黒河先生にとってのクリスティーヌがアーサー個人であるのに対して、犯人にとってのクリスティーヌは生徒会のミスコン候補者の立場にあるもの、つまり本来ロヴィーノになります。
しかし犯人は殺害した黒河先生の遺書を偽装する際にアーサーをミスコンで優勝させたいということで話を進めています。
ゆえに、犯人は”クリスティーヌ”に当たる生徒会からの候補者が”ロヴィーノ”ではなく”アーサー”と思い込んでいた人物という事になります。
なので各人の認識を追って行きたいと思います。
まず生徒会役員は全員その後の候補者にロヴィーノを据えるという確認取っているので省きます。
残るはサディクさん、松永さん、黒河先生。
サディクさんには翌日、俺が剣道部で打ち合わせをしてた時に候補者がロヴィーノであるという話をしています。
よって省きます。
残りが松永さんと黒河先生。
松永さんが最後までそれを知らなかったのは、ついさっきのご本人の発言から明らかです。
では黒河先生はどうか?
実は同じ日、フランがミスコン用の衣装を生徒会室に運んできた際に同行し、その時に候補者がロヴィーノだという話をきいて、実際にロヴィーノを見てるんです。
その後アーサーをクリスティーヌとして、ラウルと幸せにという祝福のメッセージと花を再度送っていますが、ミスコンうんぬんについては全く触れてません。
だから…その時点で黒河先生にとってのミスコン出場者はアーサーではなくロヴィーノに修正変更されているので、アーサーをミスコンで優勝させるために黒河先生が殺人を犯すというのはありえないんです。」
「でたらめだっ!黒河が犯人じゃないからといって俺が犯人だなんて証拠にはならんぞ!
俺を陥れるために誰かが仕組んだんだ!」
松永はサディクに腕を掴まれたままさけぶ。
それにもギルベルトはうなづいた。
「あとは…物的証拠ですね。」
ギルベルトは片手に持っていた茶封筒から2枚のカード、そして3通の脅迫状を取り出した。
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