お姫様の言うことには
「ロヴィーノさん、ギルベルトさん、わたくし今回のことで思いましたの…」
とりあえず冬の新刊はストーカーに拉致された天使君とそれを救出するナイト様の話で決まりらしい。
それぞれノートPC持参で桜の描いた原画を元に、PCでトレースするギルベルトと色塗りに勤しむロヴィーノ。
「私のお家で幸せを見つけるお手伝いをして頂けませんか?」
と、にっこり微笑む大和撫子に惑わされた結果である。
「はいはい、なんだよ?」
と、トレースに集中しながら投げやりに答えるギルベルトに差をつけるように、顔をあげてニコリと
「何を思ったって?お姫様?」
とそれと意識して綺麗な笑みを浮かべるロヴィーノ。
しかし、
「作業しながら聞いて下さいね♪」
と、きっぱりとかわされて、ざまあ!と笑うギルベルトを蹴っ飛ばし、二人して作業の手が止まって居る事を桜に怒られる。
それでも大の男二人揃って聞いてしまうのは、頼られると弱い兄気質の悲しさというところだ。
「で?何を思ったって?」
と、ギルベルトが作業の手を進めながら聞くと、桜はにっこりそれはそれは可愛らしい笑みを浮かべて、それはそれは容赦なくもえげつない宣言をする。
「やっぱりね、こういう本て本当に大切な人を題材にしないほうが自由にかけるんじゃないでしょうか?」
「はぁ?」
耳だけ傾けるロヴィーノ。
「つまりね、下手につついて大事な大事なアーサー君の幸せを壊したくないので天使君シリーズはこれで完結。
次に題材にするのは、どうでも良い方にしようと思いまして♪」
お姫様の言葉に、いや~な予感を感じてその時ばかりは二人仲良く複雑な表情で顔を見合わせるギルベルトとロヴィーノ。
「あ、お二人の事じゃないですから、安心して下さいねっ。お二人は大切ですよ?
フランソワーズとエリザのサークル抜けちゃうと、どうしても一人では手が足りなくなりますし、お二人がいらっしゃらないととてもとても困るんです。」
喜んで良いのか悲しんで良いのか…まあ、気を許しているから本音で我儘を言ってくるんだろう、きっとそうだ、そういう事にしておこう…と、悲しい兄組はひっかかる部分はスルーすることにした。
「で?俺らじゃないとすると、誰を考えてるんだよ?」
それでもここでギルベルトと絡めと言われないだけいいかとホッとしつつロヴィーノが聞くと、桜はニコリとギルベルトに目をむけた。
「へ?」
きょとんとするギルベルト。
「あのね…これまで癒し系ほわほわ描いてきたので、次はドSとドMのコメディとかどうかな~とか思ってるんです♪」
「…それで?なんで俺様の方見るんだ?」
「ギルベルトさん…アーサー君の従兄弟さんとお友達というお話でしたよね?
ドSの帝王様×股間に薔薇男…元同級生で知らない仲でもありませんし、結構素敵じゃないかと思うんです♪」
素敵…素敵なのか?あれが??
帝王様…件の誘拐事件のあとアーサーが自分達よりアントーニョといることを選んだ時点でかなり機嫌が悪かったわけだが…
そのあとおそらく確実にアーサーがアントーニョといる元凶になった股間に薔薇男ことフランシスのところに八つ当たりに行ったと思うのだが…。
「どつき愛…素敵だと思いません?」
色々想像して無言になるギルベルトに、お姫様は満面の笑みを浮かべてそうのたまわったのだった。
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