温泉旅行殺人事件_3

「露天…一緒に入る?」
ロビーについてユートは思い切り期待して言ったわけだが…
「それは嫌っ」
と、アオイに即却下されてしょぼ~ん。
「だって…さすがにお風呂は恥ずかしいよっ。フロウちゃん一緒にはいろっ」
と、アオイは赤くなってそう言い訳をするとフロウを誘う。

それを見てユートは
「コウ、姫と入りたいでしょ?」
と、コウに助けを求めるが、こっちも
「それは嫌だ」
と即答される。

「コウ~、青少年のくせに夢なさすぎ~!」
ユートはブーイングだが、コウはきっぱり
「風呂は落ち着いて入りたい。姫はどこでもじゃれつかずにはいられない女だから、無理」
と、返す。
結局…男性陣はそこで断念。アオイとフロウだけ5:00~5:40の予約を入れた。

4人は他の宿泊客同様2対2に分かれて母屋から徒歩2~3分の離れへ落ち着く。
そしてそれぞれ荷物を置いて落ち着くともう3時半だ。
(露天…5:00だから母屋出るのが4時半くらいかぁ…。あと1時間くらいじゃ無理だな。
戻って6時過ぎ。
夕飯が6時半からで8時から花火見えるって旅館の人言ってたからそれ見に行って…。
ムード盛り上がったとこでか…)
女性だけのサービスの部屋の名称にあわせた模様の浴衣をはしゃぎながら着込んでるアオイを背に、もう頭の中はその事一色なユート。今日の予定をたてている。

「見てみて、似合う♪」
この離れの名称、花火の間にちなんだ花火模様の浴衣を着て自分の前に回り込むアオイにユートの頭の中はさらに妄想でいっぱいに。
着物を着た状態で…というのは男のロマンだよなぁ…などと親父のような事を思いながら内心ほくそ笑んでいるが、よもや目の前の男がせっかく着た浴衣を脱がせる事しか頭にないなどとは、アオイは夢にも思っていない。
「すっごくいいねっ」
という言葉を言葉通りに取って嬉しそうに笑っている。

そのまま仲居さんが入れて行ってくれたお抹茶を飲みつつアオイの着替えを持って4時15分にコウ達の離れ蝶の間を訪ねる。
入り口で声をかけると
「ほら、姫。ユート達来たからいい加減放せっ」
と、コウがシャツにしがみついたままのフロウをひきずったまま出てくる。

「コウ…もしかして襲われてたん?」
ボタンがいくつか外れてるコウのシャツにしがみついてるフロウを見て、目を丸くするユートを指差して、コウはため息をついた。
「ほら、ユートだって着てないだろっ。別に俺はこれでいい!」
「え~せっかくなんですし、浴衣着ましょうよ~」
というフロウはもちろん、淡い桃色に蝶の模様の浴衣着用。
ちなみに…男性用のはただの紺の浴衣だ。
「そういうのは女のためにあるんだっ。ていうか…そんなもん着たら俺雑用できないぞっ。」
というコウにフロウはプゥっと可愛らしく頬を膨らませた。

「とにかく放せっ」
と、フロウの手を外させて、コウは外れてるシャツのボタンをはめ直す。
そして渋々着替えを取りに行って戻って来たフロウを連れて出てくる。
「コウさん…絶対に着物似合うのに…。戻って寝るだけになったら…着てくれます?」
口をとがらせて、それでも上目遣いに見上げるフロウに、コウはきっぱり
「パジャマ持参してきた」
と、却下の意を表明する。
「姫といる限りいついかなる時に雑用できるかわからんだろ。」
不満げなフロウにそう宣言すると、コウはアオイ達の方にフロウを促した。




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