イギリスの不安・スペインの幸せ
「アーティー、泣かんといて。」
最初にオランダが来た時点で、対応をロマーノに任せてイギリスを寝室へと戻したのだが、少し遅かったか。
子どもが出来てからひどく情緒不安定気味なイギリスは、少しの事ですぐ塞ぎこむ。
お気に入りのティディベアをぎゅっと抱きしめてぺたんとベッドの上に座ってしゃくりを上げる様子は自分の方が子どものようで頼りなさげで、とても可愛らしい。
めっちゃ守ってやりたいという感じである。
「…男だったら…どうしよう?」
涙で濡れた長いまつげを瞬かせながら心細げに言うイギリスをスペインはぎゅうっと抱きしめた。
「とりあえず…ハンガリーが入り浸るやろなぁ…。あとは…日本?台湾にリヒテンシュタインも。」
家中女の子だらけになるで、と、スペインは苦笑してみせる。
「お前は…やっぱり女の方がいいんじゃないのか?」
とりあえず男だからといって歓迎されないわけではないと、そこでなんとなくわかってホッとしつつも、おずおずとスペインを見上げてきいてくるイギリスに、スペインは口づけを落とす。
「俺は男でも女でもええんやけど、出来れば可愛え可愛えアーティーに似た子が欲しいわ。」
「……ばかぁ…」
ニコリと微笑んでスペインがそう言うと、真っ赤になってティディベアに顔を埋めながら、視線だけ寄越してそう言う様は、もう反則ものの可愛らしさだと思う。
「ほんまやで?アーティーに似とったら男でも女でもめっちゃ可愛えの目に見えとるやん。
俺に似とったらきっと将来アーティーと結婚したいとか言い出して、自分の子とアーティー争う事になりそうやしなぁ…」
イギリスは冗談だと取って笑ったが、スペインにしてみれば真面目な悩みだ。
イギリスはこんなに可愛いのだ。
自分に似た自分と同じ感性を持った子どもなら、本気でそう言い出しかねない。
その点可愛い可愛いイギリス似の子なら、男の子でも女の子でも、大小のイギリスに囲まれて楽園だ。
「大丈夫。他人の子でもめっちゃ可愛えのに、男でも女でも親分の世界の誰より大事なアーティーが産んでくれる俺の子なんやから、可愛くないわけないやん。
まずありえへんけど、世界中が要らん言うても親分にとっては、絶対に無理やて思って諦めとった相手との大事な愛の結晶やさかいな。
世界で1番大事な赤ん坊に決まっとるやん。」
スペインはそう言ってイギリスのお腹を優しく撫でる。
そのスペインの手に応えるようにポコっと小さな固まりがスペインの手を蹴りあげて、その愛おしさにスペインは破顔した。
「こんなかに入っとるのは親分の夢と希望の結晶やで~。
ほんまイギリスと赤ん坊がいてくれたら、親分世界一の幸せモノやわ。」
「…うん……」
コツンと額をスペインの肩口に預けて力を抜くイギリス。
ほんまアホやなぁ…大事やないわけないやん…。
この子がおったらもうイギリスとは他人には絶対にならへんわけやし。
俺とイギリス繋ぐ子や。
この子がおったら、もうイギリスは俺から逃げられへんのやから…。
スペインは思う。
そう…フワフワと揺れるイギリスをしっかりつなぎとめる手段にもなって、見た目も小さくて可愛くて、イギリスと自分の血を受け継いでいる、本来なら望めないはずだった奇跡の存在。
これでもしイギリス似だったりしたら、もうオランダなど抹殺しても嫁にも婿にもやらない。
血を分けた家族でイギリスの分身で小さな子ども…スペインが何より欲しい要素が3拍子そろっているのだから、本当に大事でないはずがないのだ。
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