いい加減疲れて半分放心していると、急に重い体をどかされた。
「うわあ♪さすがハンガリーさん。」
どこからか持ってきた木の棒を利用してテコの原理でアメリカをどけてくれたらしいハンガリーの横にはパチパチと呑気に手を叩くイタリア。
何故お前らここにいる?…かはわかるが、その扉どこから出した?
何故か何もない空間に開くまるで絵本に出てくるような綺麗な扉…。
「さあ、アリア、今のうちに俺と逃げよう♪」
まるでおとぎ話の主人公のように笑顔で差し出されるイタリアの手をイギリスもついつい勢いで取ってしまう。
「じゃ、とりあえず行くわよ、イタちゃんっ」
と、ハンガリーの声にイタリアはうなづくと、扉の向こうにイギリスをうながし、パタリとドアを閉めた。
そして…そこに広がるのはお菓子の国…ではないが、可愛らしいお菓子に囲まれた部屋。
「あのね、俺アリアのためにお菓子いっぱい作っちゃった♪気に入ってくれた?」
どうぞ?と、差し出されるクッキーを、その手から直接パクリと食べると、その美味しさに色々がどうでも良くなってほわぁ~~っと顔がほころぶ。
そしてそんなイギリスの顔を見て、イタリアもハート型になったクルンをぴょんぴょんさせてホワホワ笑った。
そんな二人を見て、
「じゃ、私もう少しスコットランド巻いてくるから、男に戻ったら宜しくねっ!」
と、シュタっとイタリアに手を振ると、ハンガリーが部屋を出て行く。
色々が現実感がなく、わけがわからない。
とりあえず今口に入っているクッキーを飲み込んだら質問しよう…そう思っていると、ごっくんと飲み込んだ端から差し出されるお菓子。
「イギリス、イギリス、好きだよっ♪好き、好き、だあいすきっ♪」
パクパクとそれを食べている横で抱きついてスリスリと頬をすりつけるイタリアに、なんだか毒気を抜かれた。
そしてイタリアは少し身体を離してニッコリ笑う。
「ね、俺ね、ほんとにイギリスの事大好きだよっ。
だからイギリスが嫌な事、悲しい事があったら言ってね?
そしたら俺は頑張って楽しい事、嬉しい事をかき集めてイギリスにプレゼントするよっ。
嫌なことをいっぱいの楽しい事で埋めてあげるっ。」
そう言ってイタリアは可愛らしい形の小さなチョコレートをイギリスの口の放り込んだ。
「これはね…イギリスが女の子になった日、スコットランドに怒られて怖い思いをした分」
それを飲み込むとまた別の形のチョコレートを一つ。
「これは…兄ちゃんの隠れ家まで行くのに怖い思いした分かな?」
こうして、どうやらイタリアが想像したイギリスが体験したであろう怖い事、嫌な事、悲しい事を一つ一つあげて、最後にアメリカの話まで終わった時に、イタリアは
「他には?何かある?」
と、こくんと首をかしげ、イギリスが首を横に振ると、じゃ~ん!と手の中から2つのハート型のキャンディを取り出した。
そして、グリーンの方を、はい、と、イギリスに渡して、茶色の方をイギリスの目の前にかざすと、
「これはね、たくさんの嫌な事の底から出てきた希望の塊♪
俺のイギリスに対する愛だよっ」
と、イギリスの口に放り込み、それからイギリスの手に視線を移して
「でね、そっちはイギリスのために一生懸命幸せを集めた俺にご褒美に食べさせて」
と、イタリアはあ~んと口を開ける。
あまりのイタリアらしさに皮肉を言う気もせず、イギリスは笑みをこぼしてその可愛らしい口にキャンディを放り込んでやった。
もう本当に状況がわからなさすぎて聞きたい事はたくさんあるのだが、イタリアといるとそんな現実はどうでも良くなってきてしまうから不思議だ。
「美味しいねっ」
と、片方の頬をキャンディで膨らませて笑うイタリアに、ああ、これを食べたら今度こそ聞かないと…と思いつつも、イギリスは笑って頷き返した。
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