アーサーと魔法のランプⅧ-秘めた想いこそ3

「さてさて、それでは今度は食で日本文化を堪能していただきましょうね。
欧米の男性だと少し物足りないとおっしゃられるんですが、女性ならちょうどいいかもしれません。
用意してくるので少しお待ちくださいね。」

ようやく気持ちが浮上してきたイギリスに自分の少し寂しく思う気持ちを欠片ほどでも悟らせて気を揉ませてはならない。

いまは飽くまで暖かく優しく心地よいものだけを…そう、自分はそれが出来るくらいには長い長い年月を生きてきているはずだ。

日本はそう気を取り直して、可愛らしい少女に姿を変えた愛しい相手に、彼が好きそうな美しい写真集や本を残して、台所にたった。

「あ、私も手伝…」
と、立ち上がりかけるイギリスに、
「今回は綺麗な日本の料理にとりあえず驚いて頂きたいので、楽しみに待っていて下さい。」
と、微笑みかける。

愛があってもイギリスの料理の腕だけは頂けない。

(世の中…どうしても超えられない壁もあるんです…すみません)
と、心の中で謝罪しながら、それでもその言葉でイギリスが納得してくれたらしく

「それなら楽しみにしてる。和食は美味しいだけじゃなくて綺麗だから楽しみだ」
と、傷ついていないようににこやかに言うのにホッと胸をなでおろした。

しかし…少しのちに日本はこの行動を深く後悔することになるのである。




(和食…楽しみだな♪もしかして懐石料理とかか?)

縁側で日本が貸してくれた色とりどりの着物の本をめくりながら、イギリスはご機嫌で庭の方に投げ出した足をぷらぷらさせた。

以前出されて食べたことのある懐石料理は本当に見事だった。
綺麗に盛り付けられた料理が少しずつ出されるそれは、まるで宝石箱のように美しく、見て楽しく食べて美味しい素晴らしいものだった。

アリアとしては初めて日本を訪れた事になっているので、日本もその美しい料理で驚かせようと思ってくれているのかもしれない。

鼻歌交じりにページをめくっていると、ふと目の前に影がさした…。

「日本は中かい?」
にこやかな笑みを浮かべるのは元弟…。
何故ここにいる?とか、こいつにこんな姿みられたら何を言われるか…とか色々脳裏をよぎるが、意外にもアメリカは目の前の少女がイギリスだと気づかないらしい。

冷や汗を掻きながら無言でコクコクうなづくイギリスの横を
「Thank you☆」
とパチーンとウィンクして横切っていく。

…と思って油断した。

横を通り過ぎた瞬間、チクっとしたかすかな痛み。
しかしそれを認知するまもなく、イギリスの意識は闇に沈んでいった。



Before <<<       >>> Next



0 件のコメント :

コメントを投稿