コウがさっき2Fに俺呼び出してこの話をするって言った時、俺止めなかった。
コウは仲間は何をおいても優先してくれる奴だから…俺がどうしても絶対にやめてくれって真剣に頼んだらやめてくれたかもしれないけど…俺止めなかったんだ」
その物悲しい音色が響くなか、ユートは真由に言った。
その言葉に真由はちょっと俯き加減に微笑んで首を振る。
「ううん。ずっとハラハラして気が休まる時がなかったから、全部バレてホッとしたよ。
私ね…去年のね、7月3日に京介死んで、4日にそれが同じ学校の同級生のせいだって知って…ユートの事諦める事にしたんだっ。」
言って真由は顔をあげてまっすぐユートをみあげた。
「ホントはね、4日まではね、ユートに剛とつきあうって電話した日、あの日にユートに告白しようって思ってたんだよ?
でね、高2の夏休みは伯父さんに頼んでね、手伝いながらユートとただでここに泊まれたらな~なんて思ってたっ。
だから…つまんなかったな、夏休み。
2学期もクリスマスも冬休みも3学期も…ずっとずっとつまんなくて悲しかった。
だから私、2学期の終わりにユートに彼女できたって聞いてものすご~~~くショックで悔しくて、いつか会う事なんかあったら絶対に意地悪してやるって思ってたよ。
そんな事もあって今回の旅行は別の意味でもすごく楽しみだったんだけど…会ってわかった。
私じゃなかったんだなって。
あの誰にも執着しないでいつも飄々としてるユートが彼女落ち込んだりするとすっごい本気で焦るんだもん。
笑っちゃったよ、ホント…」
笑った真由の瞳からはポロポロ涙がこぼれ落ちる。
「ユートの彼女になりたかったな。すっごくすっごくなりたかったっ。
でもユートがつきあいたいと思った相手はアオイちゃんだったってわかったからあきらめるっ。
だからユート絶対に別れないでねっ!
ユートが他の子とかとフラフラして、もしかしたら私だっていけたのにって思ったら、絶望的な気分になるから。
絶対絶対約束してねっ!そしたら私今までの事全部振り切って頑張れるからっ!約束だよっ!」
「うん…約束な」
ユートも少し目をうるませて、それでも小指を立てた右手を差し出す。
真由はその指にやはり右手の小指を絡ませた。
そして
「ゆ~びき~りげんまん、嘘付いたら針千本の~ます、指切った」
と歌って指を離すと、真由はアオイを振り返って、
「というわけでね、アオイちゃん。ユート浮気でもしたら本当に針千本きっちり一本残らず飲ませてやってね」
と、まだ涙の残る顔で笑った。
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