フェイク!7章_4

オランダ兄さん再びっ!


結局理由はとにかくとして、イギリスが本当に疲れてはいるのだろうと、クルン兄弟はイギリスが休めるように早々に解放してくれた。

「スペインの野郎がいない時しか夜寝れないんだろうから、今日はゆっくり寝ておけよ」

というロマーノの妙な労わりに満ちた視線と言動が気にならないわけではなかったが、色々混乱もしてきて疲れたので、言葉に甘えて早めに寝かせてもらう。

とりあえず自国でやらなければならない仕事は終わったし、スペインからも仕事が終わったので交通機関が動き出したら朝一で迎えにくるというメールが来ていたので、朝は早そうだ。

そんな事を思って眠りについたイギリスは、早朝からピンポンピンポンけたたましく鳴らされるチャイムで目を覚ました。

あの勢いはスペインか…と、眠い眼をこすりながら小さくあくびをしてベッドから出ると、まだ夢の中であろうイタリア兄弟を起こさないように大急ぎで玄関に向かった。

「…トーニョ、朝なんだからもう少し静かに……」
と、相手も確認せずにドアを開けると、いきなり目の前に紙袋。

「ロマーノは何をしとるんじゃっ!イギリスはええから寝とけ」
と、そこに何故かいたオランダは紙袋を隣に立つベルギーに渡すと、イギリスを抱え上げた。

え??
何が起こってるんだ?!!
頭が状況についていかない。

とにかく連れて行かれるまま寝室へ逆戻り。
そのままイギリスをそっとベッドに寝かせると、オランダは

「ええか?ちゃんと寝とけよっ?!」
と、ピシっと指をさしてそういうと、ロマーノをどついてくると言って部屋を出て行く。

ここにこうしていて良いんだろうか?
ロマーノ、大丈夫か?
そもそも何故オランダがこんな早朝に?
聞きたいことは山ほどあったが、とりあえず…レディであるベルギーがいるのだ。
寝巻きのままではまずかろう…。

イギリスは服を着替えて廊下に出る。
なんだか1階が騒々しい気がするのは気のせいだろうか…。

嫌な予感に駆られながら急いで階段を下りると、そこに丁度迎えに来たらしいスペインの姿。
合鍵でドアを開けて入ったらものすごい阿鼻叫喚なので、物音のするリビングへと急ごうとしていたところだったらしい。

「アーティーは危ないから親分の後ろへ隠れとき」
と、当たり前にイギリスを背にかばう。

いや…とりあえずあの物音の一端はお前の身内のロリコン男だぞ?と言っていいのか悪いのか…。

結局黙ってスペインについてリビングに足を踏み入れた瞬間

「このドアホがぁああ!!!俺の嫁に何かあったらどないすんねんっ!!!」
と、怒声が耳をつんざいた。

ソファの周りをクルクルと逃げるロマーノ、追いかけるオランダ。

「オランダっ、自分なにロマをいじめとんねんっ!!」

と、そこにすかさず割ってはいるスペインにロマーノは心底ホッとした顔をするが、オランダは今度は矛先をスペインに向けた。

「このクソがあぁぁ!!!妊娠は初期が一番危ない言うのに飛行機で移動さすアホがどこにおるんやっ!!!俺の(未来の)嫁が死んでもうたらどないするねんっ!!!」

え~っと…まだあの話が続いていたのか?
というか…何故そういう話になった?
そのために早朝にオランダから来たのか?
もう何を聞いていいやらわからない…。

イギリスは喧々囂々やっている二人を放置でとりあえず自分ににこやかにフルーツの皿を差し出してくるベルギーに聞いた。

「なあ…なんで妊娠うんぬんて話になってるんだ?」
男同士で…しかも国には子どもは生まれないと前回の家族会議ではっきり言ったはずなんだが?と、さらに言うと、ベルギーはへ?と言った表情で

「昨日ロマからメールもろたんや。最初はイギリスが体調悪いらしい言うメールで、それからすぐ病気やないから心配せんとってって。
せやからうちらてっきりお兄ちゃんの永遠の幼女嫁が出来たもんかと…」

おい…ロマーノ、実は自業自得か?
なんでも姉貴分に垂れ流す癖なんとかしろ…。

イタリア男はマザコン率が高いと言うが、ロマーノは母親がいない分シスコンが入っている気がする。

…自分もこんな明るく可愛い姉がいればそうなるかもしれないが…。

「まあ…うちのお兄ちゃんも素直やないから。
ほんまは新しい家族が出来て嬉しくて構いたいねんで?
せやからたまにはイギリスの方からも絡んだって?」

今度うちにもおいで、美味しいワッフル焼いておくさかい…と、さらに笑顔でそう付け足すベルギー。

もうどこまで本気でどこまでが冗談なのかわからないトマト一家だが、陽気で温かくて、どことなくスペインらしい一族だ。


Before <<<      >>> Next


0 件のコメント :

コメントを投稿