一人生活
スペインとイギリス…いや、アントーニョとアーサーが偽装結婚してもう2ヶ月が経とうとしていた。
二人は同性婚が認められているスペインで結婚したため、基本的にはスペインの自宅に住んでいるが、イギリスに自国で処理しなければならない仕事が発生した時は二人でイギリスの自宅に滞在する。
こうしてそれなりに忙しいはずの国が二ヶ月もの間、仕事が重なることもなく一緒に暮らしてこれたのは、かなり運が良かったと言っていい。
しかし結婚して2ヶ月…とうとう仕事が重なって2日ほどそれぞれ自国に離れて住まなければならなくなった。
「あっか~ん!!親分もう仕事やめるわっ!!
アーティー一人にするくらいやったら仕事やめたるっ!!」
それがわかった瞬間スペインがブンブンと首を振って絶叫した。
「おい…落ち着けっ…お前国だからっ!やめられねえからっ!」
と、それに、居合わせたロマーノが突っ込みをいれる。
とりあえず…例のカオスな家族会議の時と違い、ボケが一人までなら的確な突込みが入る、トマト一家突っ込み担当な男だ。
「せやかて…アーティーは狙われとるんやでっ?!
あの変態ヒゲ男に狙われ取るんやっ!!
親分の留守中もしものことがあったらどないすんねんっ!!」
訴えるスペインにロマーノは
「おい、なんのために俺がいると思ってんだよっ。」
チッチッチっと人差し指を振ってニコリとイケメンスマイルを浮かべた。
しかし…そこで出てきた言葉は…
「もしあいつらが押しかけてきたら手榴弾ぶっ放してその隙にイギリス様と一緒に逃げてやるよっ」
おい、そこで逃げるのか?…と、イギリスは二人の会話を聞きながら眉間に手を当て、この突っ込み担当の言い分にも心の中で突っ込みをいれた。
(いや、ほら、俺ヒゲくらいぶっ飛ばせるし…そのほうが早えし…)
とは思うものの、それは言ってはいけないお約束なのだろうと黙っておく。
同じ島国の親友の影響ですっかり空気を読んで黙り込む癖がついた気がする。
「せやかて…もし万が一捕まったらどうするん?」
それでもさらに心配そうに尋ねるスペイン。
スペインが自分を心配してくれるのは、正直少しくすぐったい気分だが嬉しい。
…が、繰り返すがフランス相手にガチでやりあったら勝てる気がする…以前に、別に狙われているわけではないと思うのだが……。
顔だけは好みと公言はしていて、男も女も美しければいけるというフランスも、イギリスだけは守備範囲外らしい。
言うなれば…フランスにとってのイギリスは、イギリスにとってのアメリカのようなものだ。
仲が良い時も悪い時も、完全に潰れられるのは嫌なのだが、かといって恋愛対象にだけは見られない。
まあ…イギリスの方もアメリカの場合と違って、あの男だけはそういう対象で見るなどということはありえないわけなのだが…。
そんな話をしても、きっとこの思い込みの激しいラテンズは納得しないだろう。
とりあえず言わせておこうと黙って聞いていると、とりあえず進展があったらしい。
「俺だけで心配なら馬鹿弟も連れてきてやるよ。」
「え~、イタちゃんいたかて変わらんくない?」
「いや、とりあえず二人いればどっちかが守ってどっちかがお前に電話で助け呼べるし?」
「おお~!!そうやなっ!!!」
ああ…突っ込みたい。
本当に危険だとして…果たして電話でスペインに助けを求めたとして、スペインが自国からイギリスまで着く間に色々終わってると思うのだが…主にヒゲが自分にぼこられて……。
しかしまあ、巻き込まれるイタリアには気の毒だが、あまりつつくとオランダあたりがまた幼女幼女言いながら飛んできかねないので黙っておく。
こうしてイタリア兄弟がイギリスの家に来ることでなんとか納得して、スペインはイギリスが自国に発つのを見送った。
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