フェイク!6章_3

第一回トマト一家家族会議開催!-オランダ兄さんの暴走-


「おい、それすごい荷物だな…まさか結婚祝いか何かか?」
先にスペイン宅へ来て料理だのを手伝っていたロマーノは、少し遅れて到着したオランダの手に抱えられた紙袋に目を丸くした。

新婚家庭を訪れる際に結婚祝いを持参するのに“まさか”と形容するなど大概失礼ではあるのだが、相手は締まり屋として名高く、さらに一家の中ではスペインと友好的とは言いがたいオランダだ。

ロマーノがそう言うのももっともなことである。


「そんなんやないが。しいていうなら…先行投資やざ」

と、その失礼な発言を気にすることもなく、オランダはきょろきょろとあたりを見回し、丁度そこに料理の皿を運んできたイギリスの姿を見つけると、

「アホッ!そんなもん持たんでええっ!ロマーノに持たせえっ!」

と、袋をベルギーに押し付けて駆け寄っていくと、イギリスの手から料理の皿を取り上げた。

驚いたのはイギリスとロマーノだ。
オランダってこんなキャラだったか??と、二人の脳裏に丁度同じ疑問が浮かび上がる。

「あ、あの???」
きょとんと見上げるイギリスの腕をガシっとつかむと、オランダはそのままイギリスを椅子へと促して
「ええからここで休んどけ。スペインのアホをどついてくるで」
と、強引に座らせる。

なに?何が起こってる??と、思わずベルギーを振り返るロマーノ。

「あ~…薬効き過ぎたかもしれんなぁ」
と、その視線にベルギーは苦笑いをした。


「あ~、オランダにベルギー、よう来たなぁ。これで最後やさかい、席についとき~。」
そこでパエリアの大皿を抱えたスペインがダイニングに入ってくる。

それにつかつかと歩み寄ると、オランダはスペインが皿をテーブルに置いたタイミングで、ガコン!とその大きな手でスペインの後頭部をど突いた。

「いきなり何すんねんっ!」
さすがに怒鳴るスペインに、オランダはさらに大声で怒鳴り返した。

「嫁に重いもん持たすなっ!このドアホがっ!!!」

へ???
硬直するスペイン、ロマーノ、イギリス。

そんな3人に構わず、オランダはベルギーに向かって手を伸ばした。
そしてそれに応じてササッと、さきほど預けられた袋を手渡すベルギー。

それを受け取ると、オランダはグイっとそれをスペインにつきつけた。

「おおきに?結婚祝い…かいな?」
珍しい人物から珍しいこともあるものだ…と、スペインが驚いて受け取ると、

「アホがっ!自分にやないわっ!イギリスにじゃっ!」
とにべもない返事。

「俺に?」
と、そこで名前を出されたイギリスは目を丸くする。

「おうっ。とりあえず…顔はもちろん性格も可愛え方がええから、まずは胎教にええ言われとる曲のCD片っ端から取り揃えてきたんじゃが…。
あとはあれじゃ、体にええらしいサプリとかな。
生まれてからはこっちで育てるから気にせんでええが…」

ぺらぺらと語られる言葉は理解不能で…もしかして自分が知っている言語とは似ているが違う意味があるのだろうか…と、イギリスとロマーノ、そしてスペインは通訳を求めてベルギーに視線を送った。

「あ~…えーとな、この前ロマからメール来たやん?
それにあの日イギリスが魔法で女の子になっとったって言うてたから……」

「なんやっそれっ!!!親分聞いてへんでっ!!!なんで言うてくれへんねんっ!!!」
と、そこでベルギーの言葉をさえぎって絶叫するスペイン。

「それでのうても可愛ええイギリスが可愛え女の子っ?!!
もうそれ最強やんっ!!世界最強やんっ!!!
ロマだけずるいっ!ずるいわぁあああああーーー!!!!」

「うるせえっ!!黙れっ!!!ベルギーの話が聞こえねえじゃねえかっ!!!」
「怒鳴んなっ!!!胎教に悪いがっ!!!!」

と、頭を抱えて天を仰ぐスペインを左右からロマーノとオランダがど突き倒す。

一瞬にしてカオスな空気に包まれたダイニングで、イギリスはギギ~っとこわばった表情でベルギーに目を向けた。

「えとな…それで魔法で女の子になれるんやったら子どもの一人でも作れるんやないかなぁ~ってな?」

「…ってな?じゃねえよ…」
がっくりと肩を落とすイギリス。

「そもそも国なんだから子どもなんて生まれるかっ」

「いや、魔法で女になれるんやったら造れるやろっ!!
ついでに国やからずっと成長せんで幼女のままやったりするんやろっ?!そうなんやろっ?!!
あ~、もしかしてスペインのアホのこと気にしてるんやったら気にせんでええっ!
生まれたらうちで引き取ってちゃんと年頃の幼女にまで育てて嫁にもらってやるやざっ!」

ものすごい形相でつめよるオランダに、いや…幼女な時点で嫁として年頃じゃねえ…と、もう勢いに押されて正常な突っ込みどころがわからなくなりかけているイギリス。

「ちょっと待てっ!!あの体格でスペインに抱き潰されたら、イギリス壊れちまうからやめとけっ!!」

と、こちらも突っ込みどころがカオスなロマーノ。

それには、こちらも必死な形相で

「余計な事言わんといてっ!!
お兄ちゃんに幼女な嫁が来るかどうかに、うちが超シスコンの過干渉から開放されるかがかかっとるんやでっ!!
邪魔するならロマーノ、自分、女装でもしてお兄ちゃんの相手してやってえなっ!!!」
と、叫ぶベルギー。

スペインはスペインで
「なんで可愛ええアーティーとの愛の結晶を他所にやらんとあかんねんっ!!
うちの子ぉは嫁になんかださへんでっ!!!」
と、イギリスとオランダの間に割って入った。

もうカオスすぎて誰もつっこめない…収まりがつかない。

世界会議の踊りっぷりなどまだ生易しいくらい会議は踊ったトマト一家の家族会議は、こうして途中空腹になって食事をつまんだり、疲れて仮眠を取ったりしつつも、結局朝まで踊り続け…なんの解決もみないまま、期待と誤解をたっぷり量産して終わった。

そして…今後、スペイン、ロマーノだけでなく、【オランダ兄さんの永遠の幼女嫁娶り計画】のため、オランダ&ベルギー兄妹もイギリスのガードに加わる事になるのだった。





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