スペイン帝国の暴走
「…日本…これどうなってるんだい?」
今度は預けられた日本にしがみつこうとするアメリカの手を、邪魔したら殺しますっ!と、こちらも殺気だって払いのけてカメラのシャッターを切り続ける日本。
それでも涙目の孫のような友好国に日本は
「スペインさんは今でこそあんなトマトなキャラですが、現役時代は文明をいくつも滅亡させてブイブイ言わせてた超武闘派ですよ。あなたも少しは自国以外の歴史も勉強しなさいっ」
と、説明しつつ苦言を呈す。
爺と孫がそんな会話を交わしている間…楽しげにフランスの頭を片手で締め上げるスペインにプロイセンが向かっていくと、なんと大の男一人片手で持ち上げた状態から、鋭い蹴りが飛んできた。
ありえない筋力だ。
プロイセンがそれを慌てて避けると、ターゲットをプロイセンに変えたのか、スペインはなんとも軽々とフランスをアメリカ達の方に放り投げた。
ピーターパンのように華麗に軽々と…とはさすがにいかず、まるで荷物のように放り出されてアメリカに激突するフランス。
イタタ…と腰と頭をさすりつつも、それで済むあたりがさすがに国だけあって丈夫にできている。
「…やばいよ、あれ…。寝ぼけてるせいか、坊ちゃんが隣にいて防衛本能が全開になっちゃってるのか、完全に現役時代に戻ってるよ、スペイン。」
ふるりと身を震わせて恐る恐るベッドから少し離れたところでプロイセンと対峙するスペインを振り返るフランス。
「ああ、おかげさまで良い図が取れそうです。
…というか、あのスーパーサイ○人化したスペインさん相手に互角にやりあってる師匠もすごいですよねっ!さすが元軍事国家っ!」
相変わらずカメラを構えたまま興奮気味の日本が言うとおり、プロイセンもいつものおちゃらけキャラから一転、鋭い空気をまとっていた。
「なんだいっ!欧州の連中は化け物かいっ?!まるでホラー映画の怪人だよっ!」
と、涙目のアメリカに、フランスは
「お前さんと違ってチートなレベルでの物量作戦とか遠くから銃器でとかいうことができなかった時代に切磋琢磨してきたから、単純に個人レベルでの戦闘能力って言うなら修羅場くぐってきたぶん、まだまだお前さんは敵じゃないよ。
これに懲りたら下手につついて怒らせるのはやめときなさい。」
と、苦い顔で笑った。
3人がそんな緩い会話をしている間、こちらは半分命がけのプロイセン。
「今度は自分が相手かいな…。自ら飛び込んでくるとはええ度胸やな。」
潰すっ!と、殺気と共に飛んできた拳は慌てて避けたものの、かすかにかすっただけで擦り傷ができた。
とりあえず自分達の方が不法侵入者な上、以前みたのと微妙に変わった寝室…もっと言うならば、おそらくイギリスの趣味を取り入れてリフォームしたのであろう寝室を少しでも破壊したら、ドイツの弟の元にまで莫大な慰謝料の請求書が来そうで、怖くて思い切り避けられない。
…が、ここで避けたらヤバイ!と思って蹴りを受け止めた腕は、力学を利用して上手に力を逃したはずなのだが、すさまじい衝撃のあと感覚がなくなった。
骨までは行ってないはずだが、おそらく明日は打撲ですさまじい色の痣になっているだろう。
ほんの1mくらいのところでここまで凄まじい殺気を放った戦闘が繰り広げられているにも関わらず目を覚まさないイギリスはすごい…と、一瞬現実逃避をしてみるプロイセン。
よほど疲れているのだろうか…ああ、こんな体力馬鹿に思い切り愛されたらそりゃ気絶レベルだよな…と、ひそかにイギリスに同情してみたりもする。
しかしことは急を要す。
これ以上リミッターの外れた元武闘派覇権国家の攻撃を受け続ければ、いくら丈夫な国といってもただではすまない。
疲れきって眠っているなら可哀想だが、ここは心を鬼にして大声を出して起こすか…と、決意した瞬間…
「師匠っ!このアイテムをっ!!!」
と、キラリと光るモノが日本の手から投げて寄越される。
パシっとそれを空中でつかむと、プロイセンはそれを迫ってくるスペインに突きつけた。
ピタリと瞬時に止まるこぶし……。
止まる空気……
なに?何が起こったんだ?と、プロイセンが確認するまでもなく、プロイセンの手からアイテム…もとい日本の携帯電話がもぎ取られた。
「なんやこれぇぇ!!!かっわ、かわええええええ!!!!!」
絶叫するスペイン…と、それでも起きないイギリス。
このレベルで叫んでも起きないということは、もしかして俺様叫んでも死亡してた?…と、遠い目をするプロイセン。
そんなプロイセンの脇をすり抜けて、ある意味さっきとは別の意味で正気を失っているスペインは日本に駆け寄る。
「なんなん?なんなん、これっ!!かっわかわええわ~~!!なあ、親分のとこにもこの写真送ったってっ!!」
とハイテンションで詰め寄るスペインに、日本はにこりと答える。
「以前私の家に桜を見にいらした時に撮ったベストショットなんですよ。
もちろん、送らせていただきます。
なんなら他の写真も一緒に…」
「ええのっ?!嬉しいわ~~」
「…おい……」
どうやら危機は去ったらしいのでホッと安堵の息を吐き出しつつも、日本の肩をつんつんとつつくプロイセン。
「ああ、お師匠様、お疲れ様でした。おかげさまでいい絵が撮れました。ありがとうございました。」
何を言いたいかは当たり前にわかっている空気を読む国ナンバーワン。
もう文句を言う気力すらわかず、プロイセンはがっくりとその場にへたり込んだ。
こうしてなんとか目が覚めて正気に戻ってくれたらしいスペインは
「アーティー疲れて寝とるから起こしたら可哀想やし、場所変えるで」
と、4人を寝室の外に促した。
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