嘘が真実になる時
「偽装結婚やて?あほらし。なんで俺がそんなことせなあかんねん。」
なぜか日本を除いて床に正座をさせられる3人。
それをソファーの上から見下ろして、スペインは呆れたように大きく息を吐き出した。
「いや…だってお前いままで坊ちゃんとどっちかっていうと仲悪かったし?」
とスペインを見上げるフランスに、ヒゲの上目遣いキモイわ、と、辛らつな言葉を投げつけながら、スペインは笑った。
「当たり前やん。ちゃんと結婚の手筈が整うまではそう見せとかな、色々邪魔はいるやろうしな。
こうやって結婚しても邪魔しにくるやつおるし?」
と、そこでチラリとアメリカに視線をむけて、スペインはまたすぐフランスに視線を戻した。
まあ考えてみれば確かにイギリスの側にはアメリカの求婚を断るという理由があったとしても、スペインの側には何もない。
そして…自分が思っていた程度の仲だとするなら、スペインは理由もなくイギリスの都合に合わせて結婚してやるような親切心を持ち合わせている男ではないはずだ。
「愛の国なのに、すっかりお兄さん騙されてましたよ…」
と、フランスはがっくりとうなだれる。
「恋愛においてラテン男の演技に騙されたらあかんで~」
と、それにスペインはカラカラと笑って見せた。
「もう隠す必要あらへんから隠さんけどなっ、親分アーティーに一目惚れしてもう数百年やしな。
ようやっと結婚できて幸せいっぱい熱々やで~。
アーティーも毎日かわええしな。ああ見えて甘えん坊でな~…」
と、それから延々と惚気を聞かされる事数時間。
ソファに座ってそれを楽しそうに聞きつつメモを取る日本以外は、もうグッタリだ。
しかし不法侵入の現行犯な手前、拒否権はない。
こうして3人が開放された時にはもう朝日が昇っていた。
そこで当たり前に
「そろそろアーティーの朝食作ってやらなあかんから帰ったって」
と、容赦なく正座で足がしびれてふらついているところを追い立てられるフランス達。
最後に戸口の所で
「あ~、今回は親分もいる時やったからまだ大丈夫やったけど、いきなり寝室に忍び込んでこられるなんてアーティーの貞操の危機やし、これからはセキュリティしっかりせなあかんなぁ。その費用は自分らに請求するからよろしゅうな~」
と、にこやかに宣言して、スペインはドアを閉めた。
「これ…どう考えても俺様巻き込まれじゃね?」
「いや、お兄さんだって…」
「俺だって結局偽装だって証拠つかめなくて踏んだり蹴ったりだぞっ!」
「お前が言うな~~~!!!!!」
プロイセンとフランスの絶叫がこだまするトマト畑。
「ふふっ。これで当分ネタに困りませんねっ」
日本一人ほくほくと収穫を手に笑みを浮かべる。
こうして、よもやこれが本当に偽装結婚だという真実は、結局誰にも気づかれないまま終わったのだった。
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