腐れ縁の推察
「え?あれってフェイクじゃないの??」
スペインの家を逃げるように出たアメリカが日本を連れて駆け込んだのはフランス邸。
そこで日本とアメリカから新婚夫婦の馬鹿ップルぶりを聞いたフランスは、驚きのあまり言ってはいけない一言をもらした。
「フェイク?それどういう意味だいっ?」
その言葉に希望を再度見出したのか、キラリと眼鏡の奥の瞳を光らせる超大国。
たまたま泊まりに来ていて居合わせることになったプロイセンに、この馬鹿が…と、渋い顔で肘でわき腹をつつかれて、フランスは初めて自分の失言に気づいた。
「い、いや。なんでも……」
慌てて顔の前で手を振るフランスに、勢いづいた超大国は良い笑顔で
「隠し立てするとパリに間違ってミサイルが落ちるかもしれないんだぞっ☆」
と、詰め寄る。
え?お前そんなことくらいで国際問題起こしちゃう?と顔を引きつらせるフランスに、アメリカは
「俺はね、もうとっくに彼への愛のために独立戦争まで起こしてるんだぞっ☆」
と、にこやかに宣言した。
ああ…そうでしたね…と、その場にいる他の3人は一斉に顔をそらせてため息をつく。
「しかたねえ。お前が考えてたことは俺が言ってやるから、お前はもう黙れ」
と、最終的にプロイセンがその説明役を買って出た。
「俺様もヴェスト育てたから気持ちはよくわかるんだけどな…イギリスにとってのお前は俺にとってのヴェストと一緒だ。
俺はヴェストは世界で一番しっかりした良い男に育ったと思ってるし、実際あいつはもう子どもじみたところなんてほとんどねえわけなんだけど、それでも俺にとってはアイツは可愛い弟なんだ。
だから本当の意味で対等な男として見られるかってえと、見られねえ。
イギリスも同じだ。
あいつだってお前の方がもう国力も大きくなって図体だってでかいのはよくわかってる。だけど、それでも自分が小さい頃から育てた相手だから、恋愛って意味では見れねえんだよ。
でもやっぱり可愛いから傷つけたくはねえ。
だから諦めるしか無い理由を作るためにスペインと偽装結婚したんじゃねえかってフランスは考えてたわけだ。」
「え?偽装だったのかいっ?!」
騙してまでプロポーズを断りたかったという一点については見事に右の耳から左の耳に抜けて行ったらしい。
ただ本当に好きで結婚したわけじゃない、都合よくその点だけを頭に入れて、超大国はとたんに顔を輝かせた。
「そうだよねっ!イギリスとスペインってそこまで関係深くなかったしっ。
そんな不正はヒーローとして見逃せないんだぞっ!」
と言うアメリカに、あとの三人は、だめだこれは…と首を横に振る。
「じゃ、さっそく別れさせに行くんだぞっ!」
と、速攻立ち上がるアメリカを
「お前は…ひとの話をきけっ!!!!」
と、プロイセンが慌てて引き止めた。
「なんだいっ?聞いたから別れさせてくるって言ってるんだぞっ」
「だ~か~ら~!!!これは飽くまでフランがそう思ってたってだけで事実じゃねえっ!!
実際はそうじゃなさそうだったんだろ?日本」
アメリカの腕をしっかりつかんだまま、プロイセンは今度は日本に話を振った。
振られて日本は少し考えこんでいたが、やがて、そうですねぇ…と、うなづく。
「もし…演技するとしたらイギリスさんだったら照れもなく上手に甘えて見せられる気がするんですよね…。
あの方は私生活では不器用ですが、いざ騙すとなったら華麗に嘘をおつきになる方ですから…。
でも先ほど拝見した限りでは、愛情を示され慣れてないところに照れもなく実にストレートに愛情を示されるラテン男のスペインさんの態度にもういっぱいいっぱいといった感じでしたから…演技するならああいう方向にはならないかと…」
ええ、初心な新妻といった感じが大変可愛らしゅうございました…冬コミは情熱的で甘々なラテン夫と初心な幼な妻設定の西英本にしようと思うのですが…と、最後は違う話になっているが、まあ言って欲しいあたりは言ってくれたから良しとしようとプロイセンはうなづく。
「そういうことだ。イギリスは本当に騙そうとするなら動揺なんかしねえ。
目の前で情熱的なキスシーンくらいやるぞ。」
「あ~、やるかもねぇ」
と、プロイセンの言葉にフランスも同意して見せるが、アメリカはせっかく見えた一縷の希望を諦めきれない様子だ。
「わかんないんだぞっ。もしかしたらそう見せて裏をかいてる可能性だってあるじゃないかっ」
「ねえよっ。てか、もしこれが偽装だったとしたらな、お前それだけ絶対に何があっても結婚したくねえって思われてるって事だからな?自覚しろよ?」
自家製ヴルストや燻製を手土産に楽しく飲もうと思ってたところに巻き込まれて、いい加減面倒になってきたプロイセンがそういうと、アメリカはプスっと膨れて
「それだって絶対とは言い切れないんだぞっ。心をこめて口説き続ければいつかは気持ちが変わるかもしれないじゃないかっ!」
と、今度はフランスを振り返る。
「とにかく、こうなったら偽装かどうか確かめないとスッキリしないし、こんなスッキリしない状態だと、間違ってミサイル発射ボタン押しちゃうかもしれないんだぞっ」
と、恐ろしい発言をし始めるアメリカに、フランスは頭を抱えた。
「あのね~じゃあどうすれば気が済むのかなぁ、この坊やはっ。確認しようがないでしょ?」
「そこをなんとかするのが君の役目なんだぞっ!」
「いや、だから何をもって偽装と判断すんのよっ。もし偽装だとしたら、問い詰めたところで坊ちゃんだって絶対に認めないよ?」
「それもそうだね…」
少し考え込むアメリカに、ようやく諦めてくれたかとホッとしたフランスだが、次の瞬間、アメリカが実にいい笑顔で言った言葉で、それが大いなる間違いだったという事を悟った。
いわく…
「ねえフランス。君スペインん家の合鍵持ってるよね?
君ん家の鍵もスペイン持ってるくらいだしっ。
それ使って夜中にこっそり入ってみればいいよっ。」
「はいぃ??」
「きっと寝室別だろうからさっ。何もしてなければすなわち偽装って事でっ!」
「ちょ、待ったぁぁ!!!それ犯罪だからっ!!!」
「大丈夫っ!鍵勝手に使うのは君だから無問題さっ☆」
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