馬鹿っぷる危険!近づくべからず_1

「喜べ、ヒゲ。相談してやる。」

ヨーロッパ会議を明日に控え、某超大国から避難していたフランスがパリの自宅へ帰り着くと、そこには当たり前に腐れ縁が居座っていた。

グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国 -通称イギリス- 。

なんと数百年にもおよぶ片思いを成就させて休暇中の現在、両想いになって以来、むしろ相手のほうがメロメロになっている恋人スペインに抱え込まれているはずだ。

何故?坊ちゃんスペインとラブラブになったんだよね?
なんでここにいるの?
と、あえて言葉に出さず相手に視線だけを送ると、顔だけは未だ可愛らしい幼馴染はきゅっと唇をかみしめてうつむいた。

「あ~、うん、まあいいや。とりあえずお茶淹れておいて。お兄さん着替えてくるから。」

嫌な予感を覚えつつも、この不器用な弟分のフォロー役は骨の髄まで染み付いていて、断るという選択が浮かばない。

童顔て卑怯くさいよね…などと思いながらもフランスが着替えて居間に戻ると、テーブルの上には何故かお茶ではなくて酒が用意してある。

イギリスと酒…この時点で逃げるべきだった。

が、戻ってきたフランスを認めると大きな目を潤ませてイギリスが

「とりあえず寝室へ行くぞ。」

と、持参したらしい高級ワインとグラス2つを両手にかつて知ったるフランス宅のいつも使っている客室へと足を向けかけるのに、ついつい逃げそこねる。

それを良い事に当たり前に客間を含む寝室のある二階への階段を登るイギリスは、焦って追いかけるフランスの

「ちょ、待ってっ!坊ちゃん来るとは思ってなかったから客室の準備してないよっ!!」

との言葉にピタっと足を止め、チッと舌打ちをした。

舌打ち?いま舌打ちしましたよ?この子…。
いつ坊ちゃんが来ても大丈夫なように用意しておかないお兄さんが悪いの?
と思いつつも、そこは長いつきあいから、それを言えばどうなるかはわかっているので言葉を飲み込む。

酔いつぶれる気満々なのか…と諦めのため息をついていると、イギリスは嫌そうに
「仕方ねえ…。お前の寝室で我慢してやる」
と、言った。

うん…お兄さんに選択権はないのね…
自分の家だというのに我がもの顔に扱われるのにももう慣れている。

まあそれは今まではフランスも当たり前にイギリスの家を私物化していた部分があるのでお互いさまなのだが、“あの”独占欲の塊のスペインがイギリスの恋人となった今、これからは今までのようにイギリスの家を我がもの顔で使ったら、生命の危機に見舞われる事は間違いない。

お前のモノは俺のモノ、俺のモノは俺の…というような不条理な扱いを受ける予感にため息しかでないが、実はそれはまだまだ甘い目測だったとフランスが知るのは、それから数時間後の事になる。

「まあ、飲めっ!」

フランスのベッドに腰を掛け、ドン!と乱暴に寝室の小テーブルに置いた2つのグラスにトクトクとワインを注いで、イギリスはその片方を手に取ると、グイっとフランスに押し付けた。

「ちょ、ちょっと待とうねっ?!お前すぐ悪酔いするからっ!話とかできなくなるでしょ。
お兄さんツマミ用意してきてあげるからっ!」
と、慌てて戻ろうとするフランスのシャツの裾を、

「いいんだっ!酔うために飲んでんだからっ!酔わねえとやってらんねえっ!!」
と、涙目で掴まれると、ああこれだから童顔はずるいよ…と思いつつも逆らえない。

「はいはい。付き合いますよ」
と溜息をつきつつ諦める。

そして…ここで諦めるべきでなかったとフランスが知るのは…(以下略


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