親分の憂鬱・乙女達の援軍
「ぎ……ギルロヴィきたぁ~!!!!!」
ティナ提供の映像を見て、きゃあぁあ~!!!と、抱き合って叫ぶ妙香と羽子。
「でかしたわっ!さすがティナちゃんっ!これエリザさんに報告しなきゃっ!」
はしゃぐ二人。
そんな中、カメラ室のドアがノックされた…。
「あ~。もしかしてエリザさんかな?そろそろ記事提出だっけ?
私、この前中庭で取ったアントーニョさんとアーサーちゃんとフェリちゃんの3ショット、まだ提出してないや。」
言って羽子は妙香の手を離してドアにかけよる。
そしてガチャリとドアを開けて硬直…。
羽子だけじゃない。
ティナは慌てて画像を映し出しているモニタを消し、妙香は薄い本を隠す場所を探し、結局見つからずに上着の中に抱え込んだ。
(…やばい……)
3人全員の脳裏に浮かんだのは全く同じその一言だった。
そこに立っていたのはアントーニョ・ヘルナンデス・カリエド…。
ジャスティス最強にして中心的人物…さらに言うなら、乙女達の活動の中でも今一番ホットな中心的人物であったりする。
たら~りと冷や汗をかく羽子を真剣な目で見つめるアントーニョ。
ああ…良い男だなぁ…と、こんな時でもつい思ってしまうような精悍さの中に甘さが見え隠れする整ったマスク。
「羽ちゃん…」
イケボで言われて、思わず赤面する羽子。
しかしガシッと羽子の両肩を掴んでそのまま目の前で
「なぁ…頼みあるんやけど…」
と、がっくり肩を落とすアントーニョに、ハッと我に返る。
「えと…私に…ですか?」
と、自分自身を指す羽子に、アントーニョは顔をあげて
「正確には…そっちの監視カメラのお嬢ちゃん?
親分ほら、直接知らへんから。自分は仲良うしとるんやろ?頼んだって?」
と、奥のティナを指さす。
「え~?!私ですか?なんでしょう?」
目を丸くするティナに、アントーニョは再度羽子に視線をやった。
「絶対に言わんといてや?」
「はぁ…まあ他ならぬアントーニョさんの頼みなら…」
ひどく真剣な顔で迫られて、一歩引く羽子。
了承を取ってアントーニョはまたはぁ~っと大きく息を吐き出した。
「フェリちゃんなんやけど…」
といきなり始められてポカンとする3人。
「フェリちゃんが何か?」
「いや…最近やけにタマんとこ通ってへん?
かと思うと今度の戦勝祝いのパーティーな、なんや二人でお揃いの服とか着るんやて…。
親分たまたまさっきタマん病室行った時にタマが桜ちゃんに電話しとるの聞いてもうてん。」
へにゃりと眉尻を下げ、情けない泣きそうな顔をするアントーニョとは対照的に、乙女達は脳内で、
(ネタキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!)
と叫ぶ。
ちなみに…アントーニョはアーサーを子猫みたいだからとタマと呼び、アーサーはアントーニョを犬みたいだからとポチと呼んでいる。
「つまり…もしかして焼きもち…というやつですか?」
もちろん表面的には喜びの声を上げるわけにはいかないので、一番ポーカーフェイスが得意な妙香が極々普通のトーンで聞くと、アントーニョは
「もしかせんでも焼きもち…嫉妬って奴やで?
なんで親分とやなくて、フェリちゃんとなん?!
あの二人最近医務室で何かあったん?!
何話しとるん?!」
と矢継ぎ早に言う。
「なあ、頼むわ…」
アントーニョはそこまで言うと、歩を進めてティナの前まで行って、その小さな手を両手で握って自分の額に押し付ける。
「お嬢ちゃんも守秘義務とか色々あるやんな?
でも親分ほんま気になって気になって何も手につかへんねん。
後生やから医務室でタマとフェリちゃんがどんな会話しとるんか教えてもらえへん?」
「…はぁ……」
ティナは戸惑って妙香と羽子に視線を送る。
そこで羽子がキリリっと言い切った。
「仕方ないですねッ!他ならぬアントーニョさんの頼みです。
この羽子が一肌脱ぎましょうっ!」
そう言ってアントーニョとティナの方へ歩を進め、ティナに
「なんでフェリちゃんとアーサーさんがお揃いの服着ることになったのか、ティナちゃん、アントーニョさんに教えて差し上げて?」
と、にこりと促す。
「えと…いいんですか?」
と上目遣いにお伺いを立てるティナに、羽子は
「いいんですっ!」
と、大きく頷いた。
「じゃあ…えと…ですね、画像…一応何か起こった時のためにしばらく消さずに保管する事になっているんですが、そちらをご覧になります?」
と、聞くティナに、
「ええのっ?!おおきにっ!恩にきるわ~」
と両手を合わせて拝むアントーニョ。
「じゃ、ちょっと待って下さいね~」
とカチャカチャと映像を出すティナの手先をアントーニョは食い入るように見ている。
そして、問題の映像がスクリーンに映し出されると、そちらを穴が開きそうなくらいの真剣な眼差しで凝視した。
そして映し出されるやり取り…。
いつものようにアーサーに謝るフェリシアーノと、白いヒラヒラの服をフェリシアーノに押し付けて、戦勝祝いに一緒に着ろというアーサーの図が映し出される。
「確かにアレは…親分よりフェリちゃんの方が似合いそうやけど……」
両手で頭を抱え、その場にがっくりと膝をつくアントーニョ。
さすがラテンは落ち込み方も激しいなぁと、生粋の日本人の羽子と妙香は変なところに感心している。
「でも…やっぱり親分以外がタマとお揃いなんて悔しいわ……」
と、続けるアントーニョに、ティナが声をかけた。
「お揃いじゃなくちゃダメ…ですか?」
「どういう意味なん?」
と、意外な人物の意外な言葉にアントーニョは顔を上げた。
「えと…アーサーさんの白い服と対になるような感じの黒い服とかどうです?
確かあの服って医療班のお姉様方が縫ってた気がするので、お願いすれば縫ってもらえると思います。
服の胸元についてる薔薇の刺繍をお揃いでつけた黒い服とかだとペアって感じでよくありません?」
ティナの言葉にさきほどまで力なく落ち込んでいたアントーニョの目がキラキラ輝いた。
「お嬢ちゃん!それええわっ!ていうか情報通やなぁ!!」
「一応監視カメラであちこち異常ないか見張ってるので、結構目についちゃうんですよ」
「あ~、ええなぁ!羽ちゃんもええ後輩持っとるなっ!」
「はあ…どうも」
落ち込みやすいが立ち直りが早いのもやはりラテンだ…と、羽子は苦笑した。
「まあ…ついでにルートさんにも同じくフェリちゃんとお揃いになるように、アントーニョさんのとはまた違うデザインの黒服着せたら、アーサーさんとフェリちゃんがペアというより、白黒のペア二組って感じになるのかな?」
と、そこで妙香がすかさず口をはさんだ。
(これでルーフェリも出来るっ!)
3人揃って脳内きらり~ん☆としている。
「あ~…でも今からとか間に合うんかいな?」
「大丈夫っ!間に合わせますっ!私医療班のお姉さま方の知り合い多いんでっ!!」
すっかり乗り気なものの時間の方を気にするアントーニョに、ティナが請け負う。
「ほんま~?おおきにっ!嬉しいわぁ。今度なんか埋め合わせするわっ」
キラキラしい笑顔で言うアントーニョ。
(お礼は…ネタでっ!!)
と、3人ともやはり脳内だけで叫んでいた。
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