避難所が狭いから支部復興準備が出来るまでは帰って来るなと言われた時には泣きましたが…これは帰れないで正解でしたっ。
フェリシアーノさんとアーサーさん…この先お二人を天使組と名付けましょう!」
廊下に面した中庭の少し離れた一角できらり~ん☆と光る視線。
言うまでもなく乙女ジャーナル編集者の一人、羽子である。
一応極東支部所属のブレインで、乙女ジャーナルの編集員をやりたい一心で…もとい、本部イケメン達の載っているこの雑誌に自分の支部のジャスティスも載せたい!その一心で月一でアーサーの情報を持って“自腹で”本部に通いつめてる熱心な女性だ。
今回はアーサー達極東ジャスティスが本部に来るのにこれは仕事で随行し、そのまま一日有給を取って乙女ジャーナルの編集室にこもっていたら、なんと極東支部壊滅の方を本部で聞く事になったという数奇な運命(?)をたどった運が良いんだか悪いんだかわからない状況で、それでもめげずに萌えのために奔走している。
「天使組…ナイスなネーミングですね。ではこのパーティーはさしずめアントーニョさんの楽園パーティーと言う事で」
と、こちらは羽子の指導の元、中庭の一部にアーサーの好きだと言う薔薇のアーチを作成中の妙香。
極東の生まれで採用も極東だったのだが、いきなり何故か本部へ飛ばされたという変わり種の庭師だ。
目下の目的は編集長エリザの指示のもと、アントーニョとアーサーのカップルを成立させるべく、二人…おもにアーサーがその気になりやすいであろう環境をということで、人のあまり来ない中庭の一角にバラに囲まれた一帯をと、3m四方に芝生を植え、その周りを薔薇で囲み、中には小さな二人掛けのベンチという、もう思い切り趣味に走ったモノをこっそり作っている。
その入り口は今3人が通り過ぎた廊下から反対側に設置されていて、今作成中の薔薇のアーチで出来ている。
バラに囲まれているため入口から以外は外からは中が見えないのがポイントである。
3人が出動と言う事でこのあたりを通るだろうと、その薔薇の合間から望遠鏡で廊下を見張っていた二人だが、案の定3人がそこを通って揃ってガッツポーズを決める。
「極東って…あれですよね。豪州と違って基地は壊滅すれども人は無事なんですよね。
豪州は人も全滅したって聞きましたけど…」
3人が見えなくなって、再びぱちぱちと剪定ばさみで薔薇を整えながらきく妙香に、羽子はうなづいた。
「あ~、なんていうか…あれですね。極東支部って元々頑強っていうよりは複雑なからくり屋敷みたいになってるんですよ。だから力押しに強いっていうか…ね。
元々ジャスティス二人しかいなくて、その二人も防衛範囲が広大な事もあって留守がちで、そんな時攻めてこられたら、どんなに頑丈な設備持ってても無駄じゃないですか。
だから時間を稼いで人員が避難できる造りが必須だったんです。
なので部員の犠牲者が著しく少なかったんだと思いますよ。
再度大きなからくり屋敷作るまでは、それぞれ小規模な隠れ家に身を潜めてるってとこですかね」
「さすが忍者の国」
クスクス笑う妙香に、
「妙香さんだって極東の出身じゃないですか」
と、首をかしげる羽子。
「ん~、噂ですけど…」
パチンパチンとやはり鋏を動かす手はそのままに、妙香は少し考え込むように眉を寄せた。
「極東支部は…実は特定の家系の子孫のみで構成されているらしいですよ。だから私みたいに極東出身でも一般の家系の人間は他の支部に飛ばされるって聞いた事あります。
他はみんな現地採用、現地配属じゃないですか…」
「あ~…そう言えばそうですねぇ…。そう言えばうちも従兄弟やら親戚やらが支部にいっぱいいるかも…。そんなご大層な家系だなんて聞いた事はないですけどねぇ…」
「遠いご先祖なのかもしれませんね…。
でもホントに極東支部以外では聞いた事ないんですよ、遠くの支部に配属って…」
パチンと最後に葉を一枚落とし終わると、妙香は、さ、お昼にしましょうかっ…と、持参したカバンの中から竹の皮に包んだおにぎりを出して、羽子にも勧めた。
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