オンラインゲーム殺人事件_ユート_7章

第二の殺人(9日目)


結局…色々注意受けたりとか相談したりとかしたんだけどさ…実際のところゴッドセイバーがなんで殺されたのかなんて、確実なところはわかんないよな。
ゲームが原因の可能性は高いけど、リアルで何かやらかしてたとか通り魔とかいう可能性も0じゃないもんなぁ。



まあ…今回は色々出遅れたし情報でもないかと思って昼間っから普段見ないニュースなんてつけてみたら、速報。高校生また誰か殺されたって?!
秋本翔太…男ならまあいっか…じゃないけど、多分コウではないだろうし他の誰かだったとしても影響無し。
一応名前だけはチェックしとくか。

とりあえず…それでもアオイは怯えてるだろうから今日は今度こそ早くインしよ~。

そして20時。
もう思い切り時計とにらめっこして20時になると同時にイン。
やったっ!一番乗りだっ!
少ししてインしてくるアオイに
『おはよっ!』
と挨拶してパーティーの誘いを送る。
二人きりのパーティー…だったのは残念ながら一瞬で相変わらず早いコウを誘って3人パーティー、その後お姫様がのんびり来るのを誘って全員集合。

ま、揃っちゃったもんは仕方ない。
『レベル上げいこっか』
という俺に
『そうですねぇ。私、海岸行きたいです~♪』
と主張するお姫様。
もう先頭を歩く行き先決める決定権持ったコウがお姫様のイエスマンなんで、これでいつもなら
『じゃ、行くぞ』
と言って歩き始めるところなんだけど、今日は珍しく
『あ~…ちょっと今日は待ってくれ』
と、コウが異を唱えた。

『コウ…?どした?』
珍しい事もあるもんだと思って聞くと、コウは
『いや…悪いな、リアル事情で30分ほどキャラ放置するから。なんなら3人で先行っててくれ。』
と言う。
もう嘘バレバレ。
つか、ありえんでしょ。コウが自己都合で仲間待たせるって。
それくらいなら前日に来れないから好きにしててくれって言ってインしない人間だ。
ま、他は騙せても俺の目はごまかせませんよ?
『じゃ、ここでおしゃべりでもしてお待ちしてますねっ。みんな一緒の方が楽しいですし♪(^-^』
とお姫様はいつものぽわわ~んとした口調で言って噴水の端に腰を下ろした。
ま、これで追求する時間はできたか。
コウにはアオイのようにまどろっこしい前置きは要らない。
(リアル事情…じゃないよな?)
と、いきなり本題に入る事にする。
(お前はお見通し…だよな、やっぱり。ユート)
まあ俺には隠すつもりはなかったらしいコウはあっさり吐く。
(一応…アオイには言うなよ。また暴走されても困るし。)
というコウのウィスとほぼ同時にアオイから
(コウとウィス中?もしかして離席って嘘だったり?)
というウィスが来る。
あ~どうするかなぁ…。
とりあえずアオイには
(ごめんね、今ちょっと取り込み中。あとでちゃんと話すね(^^;)
と返事は先送りにしておいて、コウには
(もちろん♪)
と無責任に返しておく。
(んで?なんでいきなり居留守使ってるん?)
さらにうながすと、コウは始めた。
(ん~、お前も多分チェックいれてるとは思うが、今日また高校生殺されたろ。)
(あ~秋本翔太ね)
(そそ。あれがな…今回の参加者かどうか知りたい。ま、全員絶対にここでインアウトしてるとは限らんが、とりあえずな。)
ふむり。
(とりあえず知ったからと言って即事態が動くわけではないとは思うが、命かかってるわけだし情報は多い方が良いだろ。まあ…俺の判断が全て正しいわけじゃないし、これからは二人で情報共有するぞ。んで、お互い気付いた事は指摘し合うってことで)
(ん~それは良いけど…二人で…なん?)
(姫はもう最初の出会いの時からして暴走気質なのはわかってるしな…。変に情報与えるよりは絶対に守るべき指示だけ与える事にしてる。)
(守るべき指示?)
(リアル話さない事、呼び出しは絶対に受けない事、俺がいないところでユートとアオイ以外の参加者と話をしない事。それだけ守ってればまず人物特定される事ないし、姫にはその3点を厳守してれば絶対に身の安全は保障するって言ってあるから)
(なるほどね~。だから意外に冷静なのね、お姫様は)
コウ…さすが賢いな…。
逆に俺もそれ守ってればおっけぃって事だな。ま、アオイ以外にってことで。
(で…本当はアオイにも情報共有させてって思ってたんだが無理っぽいから…。これからは姫と一緒。必要な指示だけ出す事にした)
まあ…アオイの精神衛生上もその方がいいだろうな。

コウとのウィスはそこで終わって、結局離席宣言して30分経たないうちに、ゲーム離脱宣言したショウとメルアド交換スルーのヨイチ以外は姿を見せたんで、コウが動き出した。
『待たせて悪い、行こう。』
いつもみたいに先に立って歩き出すコウの後を皆で追いながら、アオイに事情を話す。
もちろん…コウには絶対に話した事秘密って条件付きで。

殺人も二度目だったせいか、もしくはコウが全面的に守ってくれるらしいという安心感のせいか、俺が心配したほどアオイは動揺してないぽい。
狩り場の話などしながら足取りも軽くコウの後ろを追うお姫様を追っている。
俺が最後尾でそれをさらに追ってると、またメッセージが来た。
今度は…アゾット。

『アゾットって…男プリーストだったよな?』
ってコウが言うってことは…今度も全員にメッセきてんだな。
『だね。いかにもヒーラーって感じのあたりが柔らかい奴だった気がする。』
と答えて、俺はそのメッセに目を通す。

『こんばんは。参加者のアゾットです。
なんとなく気にしていらっしゃる方もいるとは思いますが、今日の昼過ぎに秋本翔太君という高校生が殺害されたというニュースが放映されました。
参加者の一人、イヴさんによると、殺された秋本君は元このゲームの参加者のショウさんらしいです。
親しかった相手が二人とも殺害された事でイヴさんも非常にショックを受けていますし、犯人の男の次のターゲットが自分なのではと、とても怯えてもいます。
もちろん、僕を含めて全ての参加者がそのターゲットになりうるわけですから誰しもが他人事ではありません。
そこで下手に相手の事を知らないまま不安を抱えるよりは、一度全員街の広場に集まってどういう参加者がいるか顔合わせをしませんか?
現在僕はイヴさんと共に街の広場の噴水前にいます。
来られる皆さんはぜひ、噴水前までお願いします』

ショウっつ~と…あのコウに絡んでた嫌な奴か。
俺は正直コウが言う通り他にリアル明かさず呼び出しを受けても行かないを誰かが魔王倒すまで徹底すれば別に大丈夫だとは思うし、どっちでも良かったんだけど
『戻る?』
とコウにお伺いをたてると
『そうだな。』
という答えが返ってきたから、まあ戻る事にした。

俺らが戻るともう俺らの他に4人ほどが噴水の周りに集まってた。
イヴと…その隣にはもう見るからにプリーストのアゾット。
アーチャーなシャルルはなんだかコウに興味があるらしくコウを追い回してキレられてる。
そこで
「コウってさ、すごぃ男らしいよなっ!そういう奴って僕超好きだよ!」
ってキレたコウに向かって言えるところが大物なのか怪しい奴なのかよくわからん。
ある意味…うちのお姫様と同じ、周りの意見も気持ちも全く関係のない人種なのかもしれない。
まあ、お姫様は見るからにお姫様オーラふりまいてるからやんごとないですむんだけど、こいつは下手するとただの痛い奴かな。

あと一人はウィザードのエドガー。
こいつはイヴとアゾットの周りをウロウロうろついて、今回の殺人事件、イヴが怪しいとか言ってる。

殺人事件はとにかくとして、イヴがろくでもないのは同感。
裏で画策するタイプだよな。
取り巻き二人がいなくなった途端、あの女王様ぶりをすっかり隠して傷ついた乙女を装ってアゾットを取り込んでる。
たぶん…プリーストのアゾットだったら前衛のイヴとしては理想のパートナーなんだろうな。
後ろで回復だけさせて自分は1億狙えるし。
ゴッドセイバーは馬鹿だったしショウは嫌な奴だったとは思うけど、イヴが俺的には一番気に入らない。

ま、個人的好き嫌いを別にして今の状況を整理してみるか。

殺されたのは通常会話でリアルの自分の情報をだだ漏らしてたゴッドセイバーとメルアド交換すらせずにゲームから離脱宣言をしてたショウ。
両方ともイヴの取り巻き。
ゴッドセイバーはもうリアル漏れてたわけだから誰でも殺す事はできたんだけど、ショウはメルアドすら誰も知らなかったんだよな。
リアル情報知ってたのはイヴだけ。

でも今アゾットとエドガーとのその辺のやりとりから、イヴいわく、ショウは例のメルアド交換提唱された時にやめるって言ってなくて、自分のメルアドも送ったのにやめる事になってたから、メグに問い合わせ中だったとのこと。
ショウがやめるって言ってなかったというイヴとショウはやめると言ってメルアドを送って来なかったというメグ。
どちらかが嘘をついているという事になる。
んで、それを問いつめようにも、何故かメグが今来てない。
まあ…どっちが嘘ついてるかなんて死人に口なし、肝心のショウが死んでるから確実な事はわかんないんだけどね。
嘘をついてるのがイヴならイヴ、メグならメグが一番怪しいって事になるんだが…。
まあ…アゾットの、もしイヴが犯人ならどう考えても仲良かった二人から殺すなんて自分が真っ先に疑われるような殺し方はしないっていう意見も一理はあると思うんだよな。
なんか…嫌なこずるい女の典型みたいな感じもするから、確かにどうせなら他になすりつけられるような形で殺してくと思う。
だから、もし嘘ついてるのがイヴだったとしても自分が疑われる状況になっちゃったからメグになすりつけるための嘘の可能性もある。

そんな事をモンモンと考えてると、いきなり珍しい奴からウィスがきた。
(突然ごめん。僕の長年培われてきた洞察力だと、君が一番人間性的にも理性的にも信用できる気がしたんで相談したい)
と、なんだかほめ殺し(?)から入ってきたのはエドガー。イブが怪しいと本人に詰め寄っていたウィザードだ。
(あ~、まあなんつ~か、”良い人担当”らしいから、俺。信用できるかどうかは別にして、言いたい事あったらどうぞ?)
思い切り何か期待されても困るし、でも情報はなんでも集めておきたいんでそう返しておくと、エドガーはニヤリと笑った。
(頭も…良いらしいね。安心した。最初に言っておくけど、僕の事は君の他の仲間にも言わないで欲しい。)
(あ~、はいはい。エドガーの名前出さなきゃ情報はもらしてもおっけい?
例えば…俺らがショウが秋本翔太って知らなくてエドガーがそれ知ってて俺にショウ=秋本翔太だよって言ったとして、それをある筋から知ったんだけどショウ=秋本翔太らしいよ、みたいな感じで)
(ああ、それはいいよ。漏らして欲しくない事の時はその都度僕の方がそれを付け加えるから。)
(らじゃらじゃ。んで?相談て?)
(それを証明する術は本当にないんだけど、僕は今回の殺人には一切関与してないし、君もそうだと僕は確信してる。というか…僕の判断で一番犯人だという可能性が少ないのが君だと思ってるんだ。
で、僕は誰が犯人なのかを突き止めて行きたいと思ってるんだけど、個人で動いてるあたりはともかくとして固定パーティーだと人物像を把握しにくいんで、できれば君の仲間がどんな感じの人物なのかとか教えてもらえるとありがたい。
もちろん別に君の仲間を特に疑ってるとかじゃなくて、とにかく集められるだけの情報を集めて、その中から必要な情報と不必要な情報を取捨選択して推理を進めていきたいんだ)
ん~~どうするかねぇ…。
まあ…流す情報はこっちで選択できるわけだから個人情報とかもらさなければいいだけなんだけど、問題はそれを他に隠してっていうがなぁ…バレたらこんな疑心暗鬼になりやすい状況なだけに仲間の信頼失いかねない。
でも向こうからも有益な情報くる可能性もあるわけだし…。
コウは…事情話せば信じてくれるか…。
お姫様は気にしないな、多分。
アオイが…暴走するのが一番怖い…

(ちょっと考えさせてくれる?俺は俺の仲間を全面的に信じてるから、万が一にでもその仲間から信用をなくすのは怖い。こういう状況だから余計にね)
とりあえずそう返しておく。
(もっともな話だね。一応…僕が言いだした事だし僕の方からは随時情報が入り次第送らせてもらうよ。)
幸いエドガーはそれを好意的に取ってくれたらしく、もめずに終わった。


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