ミッション(12日目)
今日はこれからミッション4に行く事になってる。
『ミッション4はどんな感じなん?』
とりあえずアントーニョは一番情報を持っているアーサーに声をかけた。
『ん~、少なくともソロ無理。というか…プリーストいないと絶対に無理だな。レベル高くても無理。
2体…なのは良いにしても状態異常すごすぎて逃げ戻った。
状態異常の種類は毒と暗闇。後衛は毒のスリップがすごくて死にかねないし、暗闇は前衛だと格下の敵にすら攻撃があたらなくなる。しかも自然治癒はしないから…』
という事でミッション4。
やる事はやっぱり中ボス退治。
街を出て海岸とは反対方向に進んだ山の中。
忘れもしない一番最初のミッションで麓の兵隊に手紙を渡したあの山の上だ。
敵自体はプリーストもいるし、削り、盾、支援とジョブのバランスの良い4人のパーティーはサクッと倒せた。
城で報告して初めてクリアなので、あとは報告に戻るだけの帰り道。
いきなりアーサーが崖から滑り落ちた。
『あーちゃん?そっちなんかあんの?』
特に何も言わずにいきなりだったので聞いてみると、
『いや…素でミスった、悪い。まあそこからは敵に絡まれる事ないだろうから、お前らそのまま行ってくれ。俺はなんとか自力で帰り道みつけるから。』
との返事だ。
ゲーム内では行動に卒のないアーサーが珍しい…と、ギルベルトやフランシスが思ってると、止める間もなくアーサーを追うアントーニョ。
『…トーニョ、何してんだ?』
ああ、聞くまでもないかも…と思いつつギルベルトが言うと、
『やって、あーちゃん一人にすんの嫌やん』
とアントーニョは期待を裏切らない言葉を返してくる。
『しかたないね…みんなでそっち行こう(^^;』
フランシスも苦笑して崖を滑り落ちた。
その時ひゅんっ!と矢が飛んできた。
「危なっ!」
慌ててアントーニョがアーサーをかばうと、矢が飛んで行った方向ではいつのまにいたのかクモのモンスターが矢に串刺しにされて消えて行く。
矢が飛んで来た方向を見ると大きな弓を構えた見るからにアーチャーな男キャラ。
オスカーではないのでヨイチなのだろう。
一応…助けてくれたのか?
しかしアントーニョが礼を言おうとして振り向いた瞬間、音もなく消えて行った。
行動が謎だ。
しかしいつまでも考えてても仕方ない。
4人は戻る道を探す事にした。
『さ~、道探さな』
とアントーニョは声をかけてハッとする。
『あーちゃん!何してるん?!そっちやばいって!』
炎につっこみかけてるアーサー。
アントーニョの声でハッとして
『…あ…悪い』
と足を止める。
『今日はなんだか変やで?俺に追尾しとき』
このゲームにはキャラを指定して追尾する設定がある。
それをアーサーに勧めつつ、アントーニョは携帯でアーサーに話しかけた。
「あーちゃん…いったいどないしたん?」
それに対してアーサーは無言。
なにか言いにくい事か…。
俺アントーニョの脳裏にふと全員集合したあの日の出来事がよみがえる。
あの時アーサーに粘着してたオスカー、
「リアルもさ、そんな感じ?可愛い系?服とかどんなの好き?
体格は?やっぱり華奢なのかな?
制服は学ラン?ブレザー?アーサーのイメージだとブレザーって感じだね。
寝る時ってさ、パジャマ?Tシャツ?それとも着ないで寝ちゃったりとか?
あ~、そだ、トランクス派?ブリーフ派?…………」
といきなりかまして、アーサー怯えてたなぁ…と思う。
「もしかしていつものオスカーからのウィスやったりするん?」
聞いてみると、アーサーはまた無言。
その後アントーニョのゲーム画面にざ~っと流れる原文ウィス
(アーサー、今どこ?一緒に遊びに行かない?)
(アーサーってさ、恋人いるの?)
(もしかしたら今フリーだったりする?)
(いないならさ…溜まった時って自分でしてるの?)
(週何回くらい?)
(その時どんな相手を想像してやってる?)
きっつ~~~
これ…まともに受け取って硬直したわけかぁ…とリアルで苦笑いをするアントーニョ。
「これ…オスカーからのウィスやんな?」
『ああ。』
「動揺してる?」
『……』
無言だが肯定なんだろう。
アーサーみたいなタイプは軽くかわすなんてできなさそうだ…。
つか…オスカーもなにもんなんや?
これ聞いてどないするんや?
リアル特定するためとかにしては聞く事がちょっとアレやろ。
どっちかっていうと動揺誘ってる?
よもやフランと同じような人種ではないやろし…それならもう少し上手くやるやんなぁ。
これじゃあただの変態や…いや、フランかて変態なんやけどな…と、こんなゲームに巻き込んでおいてアントーニョは思う。
あ~そう考えたらでも、変態モードのフランやったらこのくらい聞きそうやなぁ…やっぱフラン殺っておこか…と、全然関与していないのに脳内でそんな扱いを受けているフランシスはやはりギルベルトより不憫な存在なのかもしれない。
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