オンラインゲーム殺人事件_Anasa_第一章_2

キャラクタ作成 それぞれに…


(初日)  悪友会議


あの日は結局3人ともディスクを送られていたと言う事でスカイプで打ち合わせをした。



フランシス:「3人で進めて行くとして…ジョブはどうしようか?」
ギルベルト:「ジョブは分けた方がいいな。まず前衛職。これはとにかく殴って殴られる。」
フランシス:「え~、お兄さんそういうの嫌だなぁ」
ギルベルト:「じゃ、アントーニョ、お前やれ」
アントーニョ:「ええけど…ギルちゃんはなんでやらんの?」
ギルベルト:「俺様プリーストやるから。回復はパーティーの命綱だからな。」
フランシス:「お兄さん何やれば良い?」
ギルベルト:「プリースト以外の何か攻撃系ジョブじゃね?」
フランシス:「じゃ、お兄さんエンチャンターにしよ」
ギルベルト:「なんで支援?攻撃系ジョブって俺言った気が…」
フランシス:「これが一番見かけがおしゃれだからさ~」
ギルベルト:「……」
アントーニョ:「……」

こんな感じで、意外に真面目にやる気を出しているギルベルトの指示の元、3人は予め決めたジョブをとれるようにスタンバる事にした。




アントーニョの場合


ということで…最初くらいは真面目にやろうと、アントーニョは8時少し前からPCの前に座り、8時になると同時にアクセスしてみた。

スタートをクリックすると現れるキャラ選択画面。
まずはジョブ選択。
即ベルセルクをクリック。
ウォーリアーでも良かったのだが、後ろにいるのが悪友二人だと考えると、真面目に守ってやるのはバカバカしい。
だからより攻撃性を重視したベルセルクを選択する。
ジョブ確定で、次に性別。
当然男。
ネットゲームでは必ずしも現実の性別を選ぶ必要はないというのはわかっているが、フランシスじゃあるまいし、女役などやってられない。
というか…自分がそんな事をやったら確実にリアルで笑いモノにされることうけあいだ。

次に容姿。
RPGと言いつつロールプレイをするという発想も面倒なので、結果…自分に近い容姿のキャラを作る。
名前はそのままトーニョ。
どうせ一緒にやるのは悪友二人だ。
面倒なのでそのままでいい…と入力。

ポチッと完了ボタンを押すと、画面の中の自分にちょっと似た感じのキャラクタがクルクル回って光の渦の中に消えていき、プロローグ画面になった。

舞台はイルヴィス王国。
光の神を奉るその国を滅ぼそうと闇の魔王がモンスターを送り込んできているというありがちな設定。
参加者はその国お抱えの兵で、ミッションをクリアするごとにより重要なミッションを任せられ、最終的に魔王退治を命じられるらしい。

プロローグが終わると、鎧を身にまとった自分の分身トーニョが街の広場にたたずんでいた。




ギルベルトの場合


決してゲームをやった事がないわけではないが、ギルベルトがやるのは悪友と一緒の時には単純な格闘ゲー、一人の時には戦略シミュレーションと決まっているので、実はオンラインゲームはもちろんのこと、RPGもほぼやった事がないと言っても良い。

しかしやるとなったらとことんやる!完璧にやる!彼は意外に真面目なところのある男だ。
8時からという事なので、その日は朝から予習に励む。

まずはRPGというものの概要から始まって、ネットゲームというものの有名どころを検索してみて、おおよそどういう感じで進めて行くものかを研究する。
キャラ作成からパーティーの組み方、各ジョブの役割などを丹念に調べ上げ、今手元にあるゲームのマニュアルと照らし合わせた。

その上でまず自分がやるべき事の検討に移る。
まずはキャラ作成。
1ジョブ2名までという事は早い者勝ちになるはずだ。
ということは…あらかじめジョブは決めてインすると共に連打するしかない。
なので、その旨はメールで悪友二人に回しておいた。

まあ最悪、自分が唯一の回復役であるプリーストを確保できればなんとかなるとは思うが。

そして8時。スタートをクリックすると現れるキャラ選択画面。
まずはジョブ選択。
即プリーストをクリック。
ジョブ確定で、ひとまず安堵のため息。

次に性別。当然男。
ネットゲームでは必ずしも現実の性別を選ぶ必要はないというのはわかっているが、彼には女キャラをやるという発想はない。
もしかしたら他に女性プレイヤーがいて、カッコいい俺様に一目ぼれするかもだし…と、戦略厨なわりに、頭の中が少しRPGな男だ。
次に容姿。
もちろんカッコいい俺様にそっくりなキャラにする。
もしかしたら他に女性プレイヤーがいて、カッコいい俺様に…(略 という理由な事は言うまでもない。




フランシスの場合


ギルベルトからメールが来た。
キャラは早い者勝ちだから…(以下略 ということで、時間の少し前にはスタンバっておけとの事だ。

「ギルちゃんなんかやる気出し過ぎだよねぇ…」
と、呑気にあくびをしながら、フランシスはゆったりと時を過ごす。

実はネットゲー経験者のフランシスは、一度インするとなかなか席を立ちにくいなどと言う事も知っていて、その前に~と、夕食後、ゆっくりと飲み物とお茶菓子を用意していたら、気付けば時間が過ぎていた。

「あらら、やっば~。」
と慌ててアクセスし、おそるおそるジョブを選択するが、幸いエンチャンターは残っていてホッとする。
「なんでだろ?偶然?」
と首をかしげるフランシスの脳内には、みんな賞金を取るためにとどめを刺しやすいジョブを選んでいるのだという事などみじんもない。

「ま、美しいお兄さんに美しいキャラをってことで皆が残しておいてくれたのかもね~♪」
などと、攻撃系ジョブが軒並み埋まっている事の意味などみじんも考えずに呑気に言うと、サクサクとキャラメイクを進めていった。

そう…3人とも根底では似たモノ同志の呑気者。
賞金1億がどれだけ魅力的で、危険なものなのかをこの時全員が全く理解していなかった。




アーサーの場合


キャラはウィザードだ。
もうそれ以外は考えてない。
真面目な生徒会長として通っているアーサーは、大きな声では言えないが、意外に小さな頃からファンタジー趣味…魔法使い大好きっこだった。

アクセス開始時間1時間前からPC前にスタンバって、開始と同時にピシっとウィザードを選択する。
取れた…嬉しい…と、鬼の生徒会長が夜の自室でほわほわと浮かれているなどと、誰が想像するだろうか…。

キャラも自分に似せて、魔法使いな自分をイメージして浮かれる。
ああ…楽しい……。

一応地道にやるならソロでも出来て…でも、後衛に入るからもしかしたら誰かと一緒にやれるかもしれない…などと秘かに期待する。

こちらも普段の明晰な生徒会長モードの頭なら賞金額による危険性は当然のように浮かんだのだろうが、現在夢見る子供に返って脳内ファンタジー中。
浮かれ過ぎてて危機管理能力がぶっとんでいた。


こうして若干危機感にかけた4人4様のオンラインゲームがスタートしたのだった。





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