ジュリエット殺人事件G_3

ロマンティストな裏切り者


「しかしまあ…すでになされている契約を破棄させるような女に寝返る男も馬鹿野郎だよな。
裏切りを勧めるような女は自分も平気で裏切るぞ?」

別荘へ行く車の中で、ギルベルトはやや嫌そうな顔でそう言った。

自分なら絶対にそんな女に近寄ろうとは思わないと思う。
プライベートの付き合いでは信頼が第一だし、異性で恋愛対象と見ているならなおさらだ。

多少美人でもそれは同じだ。
むしろそういう外見だけの輩は中身に失望するよりは絵画でも見る感覚で遠目に見ているのが良いと思う。
と、そんな風に考えていたわけだが、少し違うらしい。
ギルの言葉にエリザは、ん~~と考え込んだ。

「ロイはネリーは苦手だから近寄りたくないって言ってたんだけどな…。
まあ内気でロマンティストな奴だから、どこをどうやってもネリーとは気が合わないだろうし…」

どうやら今回の喧嘩相手がネリー、寝返ったチェス担当がロイというらしい。
まあ、ギルベルト的にはどちらにしろ付き合いたいタイプではないし、名を覚える必要性も全く感じないのだが…。

「ロマンティストすぎて悪女に血迷ったか…」
男は単純で馬鹿だから…というエリザの口癖を思いだしながらため息をつくと、いつもはそう言うエリザは少し考え込んだあとに言う。

「うーん…ロイは大人しいタイプが好みでネリーは真逆だからないと思うわ。
なにしろミッション系の男子高で、四葉のクローバーを天使からの授かり物だって押し花にしてお守りに肌身離さずに持ち歩いてるような男よ?
女を怖がる事はあっても女に媚びるような度胸ないし、寝返る度胸があったなんて思えないのよね…」

散々な言われようである。

それに対して
「ふ~ん?」
と気のない返事をして相手に対する興味を失ったギルベルトは何か考え込むように窓の外へと視線を移した。




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