そして一瞬沈黙。
おそらくこのプレートの文字にも、ギルベルトがこう言う行動に出るのだろうと思われる事を先読みしたエリザの影を感じて、ギルベルトはため息をついた。
いや、敵に回さなければ良いのだ、敵に回さなければ…そう思って、恋人と二人で過ごしたいであろうギルベルトを思いやって空気を読んでくれたらしい悪友と幼馴染の同僚達のお祝いの気持ちを、世界で一番大切な恋人様と頂くことにする。
食べる事が大好きな恋人は、祝う気は満々ではあるものの、目の前に繰り広げられている誕生日の御馳走に目がキラキラしていたが、最後にギルベルトが運んできたケーキを見て、きょとんと眼を丸くした。
「…そのケーキのプレート……」
「ああ、なんだかな、空気読まれたと言うか、考え読まれたというか…な。
俺様がさっきみたいな事を言うのをあいつらはわかってたみてえだな」
苦笑するギルベルトがテーブルに置いてろうそくに火を灯したケーキ。
2人でそれを前に誕生日の歌を歌う。
「ハッピバースディ、トゥ、ユゥ、ハッピバースディ、トゥ、ユゥ、ハッピバースディ、ディア…」
のあとには、アーサーの「ギ~ル~」とギルベルトの「アルト~」の声がはもる。
そして歌い終わって2人でロウソクの火を消しているところを、ギルはパシャッと一枚。
そこにはしっかりと【ハッピーバースディ、ギル&アーティ】のプレートの文字も映っていた。
このあとにはアーサーのプレゼントに見事な模様を編み込んだ手編みのセーターを貰い、ギルベルトはそれを着て宝石店に駆けこんで、裏に自分の名を刻んだ金の十字架のペンダントを自分のものだという名札代わりに…と、アーサーに贈った。
そうして2人で手を繋いで街を歩き、なにもないからこそ特別な休日を楽しんだ。
その後…今日は外食にしようと夕食の時に入った店で、誕生日だと言えば店員が誕生日の歌を歌ってくれるらしいと知って、誕生日の旨を告げたら、店中に“あの”ギルとアーティだと知られて大騒ぎになったのも良い思い出だ。
こうして楽しくも慌ただしい一日が過ぎていき、2人はそれから1月18日に互いに誕生日を祝うことになったのである。
【完】
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