ペナルティらぶVer.SBG_27_激動の日々

ここ数日はとんでもない驚きの連続だった。

宇髄と呑む予定だった場に不死川もいて、なし崩し的に負けたらペナルティ有りのゲームに巻き込まれた。
そして案の定負けて誰かに告白をしてOKをもらってくることに…。

OKどころか告白出来る相手すら居ない義勇は、告白されて断るとしてもあとで嫌な態度とかをとったりはしないと思われる唯一の人物錆兎に告白に行った。

しかし彼は義勇が思っていたよりもさらに優しい人物で、泣きながら事情を話した義勇の告白にOKをくれたばかりか、そのまま家に泊めてくれて、美味しい手料理をふるまってくれる。

たった一人の家族の姉が嫁に行ってしまって以来、一人暮らしの義勇の食事はほぼ出来合いの物だったので、手作りの料理の温かみが身に染みた。

しかも全てが美味い。
さらに…会話の中で義勇が姉が作ってくれた鮭大根がこの世の食べ物の中で一番好きなのだと言えば、ちょうど材料があるからと義勇に色々聞きながら姉さんの味を再現してくれた。

もちろんまったく同じというわけではないが、錆兎の鮭大根も姉さんのと同じくらいに美味いと思う。
幸せな味がする。

そうして二人で幸せな時間を過ごさせてくれて、それがずっと続く、それだけでも十分すぎるほど幸せなのに、錆兎はさらに義勇の不安まで取り除いてくれるつもりらしい。

金曜日に錆兎の家に泊まって、土曜日に車で義勇の家まで送ってもらって、着替えや身の回りのものを取ってきてまた錆兎の家へ。

そしてそのまま土曜と日曜を錆兎の家で過ごし、翌日の出社日が少し不安な義勇に、錆兎は不死川と宇髄への報告の時に自分もついていくと言ってくれた。

一応不死川から色々言われた時用に、ちゃんと告白してOKをもらって付き合っているのだという証拠に指輪まで買ってくれて、それをつけていくから大丈夫だとは思ったのだが、錆兎が来てくれるなら百人力だ、と、そこで義勇は心底安心出来たのである。


当日…一人で不死川につかまって揉めないようにと、錆兎がちょうどシステムについて誰か手配してほしいと言われていた総務の知り合いに義勇を推してくれたため、一日を健やかに過ごすことができた。

そして一度にすべて終わらせるとかはせず、昼に先に宇髄に報告。
宇髄の方もきちんと状況を理解して不死川が何か言ってきても一緒に説明に加わってくれる形を作っている。

グダグダにならないように段階を追って根回しをきちんとするあたりが、さすがしご出来エリートなんだなぁ…と義勇はそこに感心した。

そうしておいて、いよいよ本番、不死川への報告。
ここまでお膳立てしてもらったのだからと、義勇は自分で報告したのだが、よくはわからないが案の定グダグダと揉めそうになる。

しかしなんだかわけのわからない方向で暴走しかける不死川を錆兎と宇髄が上手に軌道修正して、ようやくわかってもらえたか…と思ったら、不死川はキレて帰って行った。

今までなら納得ができない不死川の手が出て…という場面だったと思うので、何かで怒っていたとしてもあちらから距離を取ってくれるならいいかとそのまま錆兎と宇髄と楽しく呑んで、これで解決!と思ったのは甘かった。


珍しく落ち込んだり委縮したりすることなく楽しいだけの呑みを終えての帰り道。
いきなりガラの悪い男たちに囲まれた。

怯えるばかりの義勇と違って錆兎は堂々と後ろを振り返って男たちに声をかけ、用件を尋ねたが、相手は用があるのは義勇の方だという。

その時点でめまいがした。

無駄に絡んでくるガラの悪い男なんて不死川だけで十分迷惑なのに、相手はなんと3人。

どうしようと思っていると、錆兎は
(大丈夫だから。でも出来るならこっそり録画出来るか?)
と義勇を振り向いて安心させるように笑顔を向けて言った。

全然大丈夫な状況ではないと思うのだが、錆兎がそうしてくれと言うのなら…と、義勇はこっそり自分のスマホを取り出して録画を始める。

そして義勇の代わりに一発殴られる錆兎。

──とりあえずこれで正当防衛だなっ。
と言う声は本当に淡々としているが、殴られて痛くないわけがない…と、義勇はすでに泣きそうになっていた。

なのに相手は錆兎が全く堪えてないと思ったのだろう。
いきなり3人揃ってナイフを出してきた。

これ以上はダメだ!
自分のせいで錆兎が死んでしまう!!
そう思って思わず前に出かける義勇の動きを見もせずに察したのだろう。
錆兎は軽く後ろ手に制した。

そうしている間に一人がナイフを持って突進してくる。

もうだめだっ!!

義勇は思わず目をつむったが、錆兎の大きな手がやはり後ろ手にふわりと義勇の腰にかかって、彼の後ろに誘導した。

おそるおそる目を開けると錆兎に避けられたらしい男がナイフを持ったままたたらを踏んでいる、

──これは…少し動けないようにしておかないと、下手すれば殺される案件だな。
とそれにそういう錆兎。

さきほどと違って明確に”殺される”という言葉が出たことで、義勇の涙腺は完全に決壊した。

もういいから。
もういいから自分を置いて逃げてくれ!
そう言おうと口を開いた瞬間、また突進してくる男。

しかし次の瞬間、男は床に転がっていた。
怖くて目をつぶっていたために何が起こったのかわからないが、男は今度こそナイフを放り出して、腕を押さえて地面でのたうち回っている。

さきほどとはうって変わって青ざめる暴漢達。
怯えを見せる彼らに錆兎は去るなら追わない旨を告げる。
すると地面に転がっている男を抱えるように逃げて行った。

目をつぶって目を開けた瞬間に一転した光景に義勇はびっくりしすぎて言葉もない。

録画をオンにしたままのスマホを持ったまま硬直している義勇をくるっと振り返って、錆兎は
──もう大丈夫だぞ、義勇。
と世界の至宝と言えるんじゃないかと思えるようなまばゆいばかりの笑みを浮かべると、義勇をいたわってくれた。

でも振り向いた瞬間に錆兎のスーツの裾がひらりと切れているのに気づいて背筋がぞっとする。
もしかして…一歩間違えれば刺されてたのか……自分のせいで?

そう思えば義勇は今自分が生きて呼吸しているのさえ申し訳ない気持ちになってきた。
自分が生きていなければ錆兎がこんな危険な目にあうこともなかったのに…

そこで号泣しかけた時、なんだか錆兎が不死川が隠れているのを見つけて、彼の関与を問いただし、その後なぜか宇髄まで呼び出したりして、その時はゴタゴタでうやむやになる。

でも不死川が逃げて行って宇髄がそれを追っていったのを見送って、錆兎の家について落ち着くと、また申し訳なさがこみあげてきて、義勇は子どものように声をあげて泣いてしまった。

自分みたいに誰からも好かれない必要とされない人間のためにこの世の皆から好かれている大切な錆兎を危険な目に合わせてしまったなんて申し訳なさすぎる。

こんな自分なんて自分でも要らない、自分なんて居なければ良かった!と泣きわめいたら、錆兎は綺麗な細工のガラスのグラスに美しい黄緑色の冷茶を入れて渡してくれて、

──本当か?
と聞いてきた。

何がなのかわからず、
──皆に好かれないし必要とされないこと?
と聞くと、錆兎は

──お前自身もお前のことを要らないということ。
と言う。

自分で言ったことなのだが、錆兎の口からそれを言われるとなぜかショックで、また涙がぽろぽろあふれてくるが、とりあえず事実なので頷くと、錆兎は義勇をグイっと抱きよせて

──男に二言はないな?
と聞いてきた。

ここで否なんて言うのも今更な気もするし呆れられそうで、義勇はついつい頷いて見せる。

すると次に錆兎の口から出てきたのは突拍子のない言葉だった。

「そうか!ならいいっ!
よ~し、そういう事ならお前は俺がもらう!
お前の人生はもう俺のものだからなっ!
勝手に居なくなったりは許さんし、俺が楽しく愛玩するのに文句は言わせんっ!」

──はっ???

あまりにわけがわからず、涙も引っ込んでしまった。

──えっと…錆兎に愛玩されたい人間なら俺なんかじゃなくてもいっぱいいるんじゃ?

思わずそんな言葉が零れ落ちれば、錆兎は何を言うとばかりのしたり顔で

──俺が愛玩したいという人間は義勇だから、他に人がどれだけいても仕方ないだろう?

などとつむじに口づけを落としてくるので、もう動揺してしまう。

「安心しろ。俺はお前だけに人生をよこせなどと言う不平等な事は言わんから。
俺の人生もお前にやる。
とりあえず一緒に住むぞ。
爺さんが戻るまではここを離れられないからお前がここに越してきて、爺さんが戻ったら一緒に住む家でも買うか」

そんなことまで言われて、あまりに都合の良すぎる現実に、これは夢なんじゃないかと頬をつねってみるも確かに痛い。

おそるおそる顔をあげると、とんでもなくカッコいい…カッコよすぎる錆兎から笑みを向けられて、もうそれがこのところの激動の日々のキャパ越えの一撃となって、義勇はふうっと気を失った。








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