今回は飽くまで好きにピクニックをする水柱の二人を眺めながら、スタジオで同じ事務所の同僚たちがコメンテーターとして好き勝手に語るという企画だ。
ということで、まず映像が流れる前に軽く雑談ということで、今日のお題と、甘露寺の弁当についての話になったが、やがて切符を買う義勇の映像で動画が始まった。
──お~、始まったか。
──さすがに錆兎も第一回の諸々があるから連れて歩いてるなァ
と、宇髄と不死川が二人揃って切符売り場に居る水柱について言及すると、
──まあ…クルミは美味いから食うきっかけがあって良かったんじゃないかっ?!
──そうですよねっ!クルミ大好きですっ!このクルミ餡のお饅頭もとっても美味しいですっ
──甘露寺がクルミの菓子を食べている様子はリスのように愛らしいな。良かったらこれも…
と、そこで以前に義勇をナンパしてきた相手を穏便に追い払うために目の前でクルミを割って圧をかけたことに触れるのはいいが、もう絡まれないようにという話よりはクルミの美味さに話が逸れていく煉獄と甘露寺。
そして、その甘露寺の前にそっと自分の分の今回の茶菓子のクルミ餡の饅頭を置く伊黒。
そこで
『みつりん、かわい~!!』
『伊黒さん、やさし~!!』
とかかる観客席からの声に、二人が顔を見合わせて、赤くなって…そして共に笑う様子に、さらに
『お幸せに~!!』
という声が飛ぶ。
いつもにもまして和やかなスタジオ。
その様子に
「うむ!仲が良いというのは良い事だっ!!」
と煉獄が頷く。
それに宇髄がにやにやと
「実弥、普段なら、今頃『爆発しろ~!!』とか叫んでそうだけどな。
それでなくても距離が近すぎる水柱を生温かい目で見守ってねえとなんねえ番組だから。
今日はどうしたよ?」
と笑う。
振られて不死川が反応しかけたが、それより早くそれに反応したのは伊黒で
「うむ…お前が言うな!と言いたいところではあるが……幸せなリアルは出さないように、飽くまで『世紀の大悪党』という自分のキャラを崩さずにいるプロ根性は認めないでもない」
と、珍しく褒めた。
とりあえず…甘露寺に近づく男は敵だが、最近美人女優と結婚した不死川はその可能性のある相手から除外されたらしい。
まあ…『世紀の大悪党』というキャラ設定はどうかと思うが…。
でも確かに仇役が多く、元バンドマンだったのだが最近は名悪役としての方が有名になりつつあるので、仕方がないのかもしれない。
キャラを崩す崩さない以前に、こんな嬉し恥ずかしな立場に慣れない不死川は、とりあえず自分から話題を離そうと、
「今日の主役はそこじゃねえだろうかァ!ちゃんと映像に突っ込めぇ!」
と、やや強引に映像の方へと話題を戻した。
「まあ実弥のことはプライベートで遊ぶとして、仕事すっか。仕事。
ってことで…あの服、どこでみつけてきやがった。
どういう趣味だよ」
と、二人が正面から移った瞬間に左右のキツネがコンコンと鳴く絵になるトレーナーを見て、
「ほんと、アイドルとしてこれで仕事ってどうなんだよ…」
と、宇髄が片手で顔を覆って、おおげさにため息をついて見せるのに、伊黒も呆れたような表情をみせていた。
…が、そこで甘露寺が明るく
「並ぶとコンコンって狐の鳴き声になるのね、可愛いわっ」
と言ったとたん、急に
「そうだなっ!さすが錆兎!良い趣味だっ!」
とコロっと表情を変えて大きく頷いて、宇髄に呆れた目を向けられる。
そして
「お前…プライドと感性はどこいったよ?」
と言う宇髄に伊黒はきっぱりと
「俺の感性より甘露寺の感性の方が正しいっ!
もちろん、お前よりだっ!」
と断言した。
いつものメンバーの中なのに、甘露寺が居るだけでなんだかスタジオも一部のコメンテーターも空気が違う。
そんな中で煉獄だけが、美味いっ!美味いっ!と相変わらず全く変わることなく出された菓子を食べては叫んでいた。
そんなスタジオを置いてきぼりで映像は進んで行く。
「あ、あのお子さんはなあに?子役の子?」
と、散策中に錆兎に近づいて話しかける子どもが映し出された。
それに答えるのは、当然宇髄の役割だ。
「いや、この番組では錆兎も義勇も他の周りも全く作為なく、ひたすらお題をこなすだけだから、あれは本当に通りがかりだ。
まあ一般人とのやりとりはどうせ放映ではカットされるからネタバレすると、元カメラマンの爺さんと一緒に錆兎の『若様天下御免』を見てんだと。
で、爺さんが錆兎の現場で働いてたことがあるみてえで、孫に自分はこの若様と働いてたことがあるって常々自慢してたんで、爺さんのことを知ってるはずってことで、話しかけにきたらしい」
──え……
という甘露寺の戸惑った呟きは伊黒が当然のようにきちんと拾い上げて
──いくら錆兎でも一緒になったスタッフ全員を認識記憶はしていないだろう?
と代弁する。
するとひたすら食べていた煉獄がいったん菓子を置いて、
「うむ!奴は覚えている方だとは思うが、やりとりのあるADとかはとにかくとして、直接のやりとりがないカメラマンまでは無理じゃないかっ?
ちなみに…俺はほぼ覚えていないっ!
感謝はしているが、仕事前に全員自己紹介されるわけじゃないからなっ」
とさらに補足した。
「え?え?じゃあどうするの?」
と、覚えていないと子どもを傷つけるのでは?と、そこは大家族の長子で、下に弟妹が大勢いるお姉ちゃんである甘露寺はオロオロする。
ちなみに…そのあたりの一般人とのやりとりは映像的には映っていても、会話はプライバシーもあるので映像の時点でカットされているし、顔もモザイクがかかっている。
だが、進行役の宇髄だけはイヤホンで聞いているらしく、そこは簡潔に
「あ~、あいつは巧いからなっ。
大勢と仕事をしているから爺さんだけだとわからないから、名前を聞かせてくれって言って相手の名前をゲットしたうえで、追ってきた爺さんに、たとえば相手が山田太郎だったら『山田さん、その節はお世話になりました』って挨拶して解決だ」
と説明。
「おお、それは巧いやり方だなっ。俺も覚えておかねば…」
と、珍しく煉獄がエピソードにまた反応した。
それに、『おお、お前も印象大事な系だから、覚えておけ』と頷いたあと、宇髄は
「ついでに言うと、孫の、何故今日は着物と刀じゃないのか?っつ~質問には、今日は秘密の仕事で変装しているって答えてたな。
で、子どもは納得。自分も若様がここに居るって言うのは秘密にするからって、口止めも完了。
礼にって実は大量に送りつけられてカバンにつけてた若様天下御免の印籠のおもちゃをやってた」
と、詳細を説明し、その後、子どものファンに対する対応やその他、二人の間にかわされた会話を少し紹介して、その話題を切り上げた。
そうして散策の時間が終わって、甘露寺のおまちかね!お弁当の時間だ。
ここからは伊黒は何故かメモを取り出して記録準備をしている。
「さあ~!俺と一緒に料理番組やってる人間の弁当だっ!
派手に楽しみにしとけっ!」
と、宇髄が言うと、甘露寺が、きゃあ~!と歓声をあげる。
そうしている間、映像では義勇がぼ~っと待っている横でせっせと敷物を敷いて、そこに色々並べている錆兎が映っている。
ある程度出すものをいったん出し終わると、何かやりたそうな義勇にジップロックに収納した紙の取り皿や割り箸をそれぞれに出してくれと、どこをどうやっても失敗しそうにないことを頼んで、錆兎は並べた弁当の蓋を開けた。
おお~~!!!とそれを見て声をあげたのは義勇だけではない。
映像を見ている観客や甘露寺も映像を凝視しながら叫んでいる。
「か、可愛いわぁっ!!うさちゃんに小鳥さん、カメさんにお花っ!!
美味しそうなだけじゃなくてとっても可愛らしいお弁当ねっ!!」
興奮して身を乗り出す甘露寺の横ではなにやら必死な様子で無言でメモを取る伊黒。
「大人の男二人のためのってよりか、遠足の子どもの弁当みてえだなァ」
と、別に落とすとかではなく率直な感想として物申す不死川に、宇髄が、
「あ~、今回のお題になったのは、錆兎が義勇がガキの頃に出来なかったピクニックをしてみてえムーブしたからってのがあるんだよ。
だからまあ…ガキが喜びそうな弁当敢えて作ってるっつ~のが正しい」
と、説明をいれる。
「ほ~、なるほどなぁ…」
「ま、それはそれとして、一緒に料理番組出てる俺が派手に解説してやんよっ。
まずガキの弁当の場合、振りまわす前提だから、それですぐ形が崩れるような、よくネットや雑誌で見るような凝ったのはNGな。
あとは手で食いやすい物。
できればフォークやピックで一口か二口で食えるのが理想。
決まった時間で食い終わらないとだからな、弁当ってのは。
遠足とかピクニックとかだと、飯のあとでおやつタイムとかが多いから、一人食い終わらねえと可哀そうだが、かといって量少ねえと、腹減って遊べねえだろ」
ドヤヤっと解説する宇髄の言葉に、皆、画像の弁当を確認して、なるほど、と、納得。
「あとは大前提で、ある程度室温が保てねえ屋外に置いても悪くなりにくいモンな。
保冷材いれるのは良いが、あんま入れると重いだろ?
でもま、どうしてもサンドイッチとかハムとか挟むなら、きっちり保冷効果のある弁当バッグ+保冷剤。
入れて良いモンの基準は、店で売ってる時に冷蔵されてねえものな。
よく見栄えよくするためにコメの上にチーズとか乗せて絵をつけてとかやってる奴いるけど、あれ、正気の沙汰じゃねえと思うわ。
白米をよく冷ませば良いってもんじゃねえ。
白米なくてもチーズ常温で数時間放置することになるからな?
普通の学校や幼稚園みてえに室内でもギリ怖えのに、屋外に行く時とかは普通に考えてアレだろ。
まあ常温販売してるプチトマトとかも、暑いとこだと菌とか繁殖しやすいから、ヘタを取ってよく洗って水けを完全に取った上で入れるの基本な。
だいたいのモンは切らねえほうが持つんだが、ヘタ付きはそうしたほうが安全」
「なるほど…確かに錆兎の弁当はそのあたりを完全にクリアしているな」
と、かなり真剣にメモを取りながら頷く伊黒。
そんな風に宇髄がツラツラと語っていると、映像では可愛らしい弁当の次にお目見えしたスープジャー。
蓋を開けると出てくる何かに、スタジオが騒然とする。
「…おい…これは…可愛い弁当じゃなくね?」
とまず口を開いたのは不死川だ。
それに宇髄が笑いながら
「ま~、大人の本気ってとこか。
でも大人の弁当ならアリだぜ?」
と言う。
「ビーフシチュー?美味しそうっ」
と言う甘露寺には
「正確には牛頬肉の赤ワイン煮な?」
と訂正。
それに不死川がはぁ~~~と大きくため息をつきながら
「いや…ねえよ。
弁当じゃなくても一般家庭でこれはねえ。
あるとしたら宇髄と錆兎ん家だけだろォ」
とさらに言った。
「いやあ?簡単だぜ?錆兎レシピだと特別なモンなんも使わねえし」
「…てめえと錆兎の家の特別じゃねえモンっつ~のは十分特別だってことは知っとけぇ!」
「いや、マジでっ!頬肉は確かに希少部位だが、普通にカレー用の脛肉で代用すりゃあ、あとは普通の家にあるもんだけだぜ?」
「…普通の家じゃなくて悪かったなァ」
「…肉、たまねぎ、塩、はちみつか砂糖、ケチャップ、ソース、トマト缶かトマトピューレ、マギーブイヨン、コンビニやスーパーで300円くらいで売ってる安い赤ワイン。
なんか手に入らねえモンあるか?
あいつのレシピはローレルすら使わねえぞ?
作り方だって切って煮るだけだ」
「…マジか?」
「漢の料理だからな(笑)」
宇髄がそう言って笑った瞬間、ピシッと手があがった。
「作り方を教えろっ!!」
と短く要求だけ主張する伊黒。
それに何故かゴクリとつばを飲み込む甘露寺。
2人とも真剣な目を宇髄に向ける。
「あ~、わかったっ!
今度『派手に作るぜ!漢の料理!』で、今日のピクニック弁当全部作るかぁ」
やれやれと言った風にそう言う宇髄に、ガッツポーズを決める甘露寺。
その後、水柱の二人は昼食を終えておやつタイムに入り…さらにそのあとアスレチック遊具を楽しんだりもしたのだが、もう甘露寺の怒涛のいかに今回のお弁当が食べたいかのマシンガントークで、気づけば番組が終わっていたのだった。
立て続けに些細な誤変換報告です(─.─||)映像的には移っていても←映っていても、でしょうか?お暇な時にご確認ください_(_^_)_
返信削除もう相変わらず同音異義語間違いの嵐で(ノ∀`)
削除ご報告ありがとうございます。
修正しました😊