それでなくとも色々大変な状況なところにとんでもない秘密をかかえてしまった気がする…
花に埋もれた身体を半身むくりと起こして、錆兎は改めて状況を確認しながら整理した。
おかしな状況は収まったのではないかと思われる。
本当にアレは何だったのだろうか…
非常に珍しいアレルギーか?と一時は思ったものの、それなら未だ花に囲まれている状況で収まっているのはなぜだ?
体育座り状態でそんなことをツラツラと考えていた錆兎だが、ふと隣で花嫁がピクリと動いたのに気づく。
そこですべての思考は中断だ。
やるべきことは可能性の模索ではなく、物理的なケアだろう。
「…ごめんな、義勇。
俺がなんだか暴走したらしい。
大丈夫か?身体痛くないか?」
と、とりあえず、乱れたドレスの胸元を整えて自分の上着をかけてやる。
今回は飽くまで義勇に責任はない。
たとえ何か義勇から発せられていたとしても、そこは8歳も年齢が違う、いわば大人と子どもと言っても良い歳の差なのだから、暴走を押さえる責任は絶対に自分の側にあったのだ。
ということで、自分が一方的に悪いと、錆兎は義勇の側の諸々はオールスルーで、暴走してしまった自分についての謝罪のみを口にしたが、義勇はそれでも一気に真っ赤になる。
かけられた上着で半分ほど顔を隠してわたわたと動揺している様子は可愛いが可哀想なので、羞恥で本泣きになる前に…と、錆兎は片手で頭を撫でながら、片手で天井を指差した。
「ほら、すごい星空。
さすが高原だよな…式はグダグダになってしまったが、これだけの花に囲まれて満天の星空って雰囲気があるな」
「…ホントだ……すごい……」
子どもらしく気が移りがちな花嫁は、涙の残る大きなブルーの目で頭上の星々をみあげる。
そんな風に義勇が頭上に気を取られているうちに、錆兎はそっと身を伸ばして祭壇の上の指輪を手にとった。
同じデザインのシンプルなものだが、パートナーの色合いに合わせて、錆兎の方は小さなサファイアが埋まっていて、義勇の方はアメジストが埋まっている。
──病めるときも健やかなときも…これから俺の隣は唯一義勇だけ。俺が守って慈しんでいくのもおまえだけだ。
義勇の手を取って細い指先にちゅっと口づけたあと、錆兎はそう言って薬指に指輪をはめてやる。
そうして自分の指輪の方を義勇に渡すと、義勇は錆兎の手を取って、おそるおそるその薬指に指輪をはめた。
「…というわけで、順番がとんでもなく逆になった気もするが、誓いの口づけな?」
と、なんとかリカバリに成功して、錆兎は花々の中に放り出された薄いマリアベールを拾って花嫁の頭上に戻すと、少し苦笑して、それでもそっとその小さな唇に口づける。
ひどく緊張した様子で目を閉じる花嫁は幼気で清らかで、本当についさっきに自分自身の手で暴いてしまったにも関わらず、何も知らない新雪のように真っ白に見えた。
本当に色々予定が狂ったというか…そもそも、こんな幼い同性の花嫁に欲を感じるなんて思ってもみなかったのだが、これでまあなんとか、式もどきとしては綺麗な思い出を残してやれたのではないだろうか……
心底ホッとした。
そう、あのおかしな香りや衝動が去って本当にホッとしたのだが、実はこれが次の波乱への幕開けだということを、錆兎は知る由もない。
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恐らくギルアサver.の修正ミスかと思いますが「大きなグリーンの目」←青い目だと思います^^;ご確認ください。錆兎がポンコツ化してる…(;´・ω・)
返信削除ご報告ありがとうございます。修正いたしました。
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