青い大地の果てにあるものオリジナル _3_14_どんどん広がる誤解の輪

外がそんな騒ぎになってるとは露知らず、噂の渦中の二人はひのきの部屋で本当に久々の休日をまったり過ごしていた。

一応体調を整えるという名目上外に出るのは体裁が悪かろうと、ずっと室内だが、寝室にはテラスもあるのでそれほど閉鎖的な気はしない。


「しかし...この2ヶ月強の間こんなに静かに過ごしたの初めてだな。
いつもいつも休暇と言いつつ誰かしらが何か言ってくるんだが、みんなやればできるんじゃねえか。
6日間誰もこなかったよな。これからは全部突き放してみるか...」

ベッドの上でなずなを抱え込むように座って一緒に雑誌をみながら機嫌よく言うひのきは当然、明日外に出た時に起きる大騒ぎを予想だにしていない。

「この2ヶ月どころか私生まれて初めてだよ?こんなに長いお休み」
ひのきの言葉になずなはクスクス笑った。

「ずる休みってちょっと申し訳ない気はするけど...」
「ん~、でも普段人の10倍働いてるから無問題。
つか、今度は普通にこのくらいの休み欲しいな」
「うん、旅行とか行ってみたいよね、一度♪」
言ってなずなは雑誌に目を落とした。
そこには旅行スポットが並んでいる。

「私ね、両親共にジャスティスだったから旅行って4歳の時に一泊旅行に一度行ったっきりだよ」
というなずなに
「俺は旅行どころか家族全員で出かけたことない」
ときっぱり言うひのき。

「ん~、じゃあいつか家族旅行しようね」
「あとコタツな」
言ってふと思い出してひのきはベッドから飛び降りた。

「あ、忘れねえうちにシザーに畳の手配頼んでおかねえと」
と、上着のポケットに放り込んだままだった携帯を取って電話をかける。

「シザー、俺。ちと頼みあるんだけどいいか?部屋のことなんだが...」


「あ、そうだね、部屋は変えないとねっ」

連絡は取るなとレンからの厳命で取れなかったところを、ひのきの方から電話をもらって小躍りしそうなシザー。
子供が生まれるということはやはり二人分の部屋を間の壁を壊すなり何なりして広く使わせてやった方がいいのだろうか...と、思いをめぐらせる。

一方いきなり、あ、そうだね、と言われたひのきの方はわけがわからない。
しかしとりあえず要望を伝えてみることにした。

「いや...別に部屋自体変えねえでもいいんだ。居間をな、畳敷きにして欲しいんだが」
「え?広くしないでいいの?遠慮しないでいいよ?」

確かになずなは大きなコタツを置きたいという話をしてはいたが、何故それをシザーが知っている?

ますますわからなくなってひのきは後ろのなずなに
「おい、なずな。
お前さ、あの大きなコタツで家族で寝転びたいとかいう話、シザーにしたのか?」
と聞く。

それに
「ううん。してないよ~」
となずなも不思議そうに答えるが、その声は当然受話器の向こうのシザーにも聞こえていた。

そか~、もう生まれた後の話とかしてるんだね~、楽しみだよね~うんうん。などと電話口でほくそえむ。

「うん、じゃあ早速手配するから、他には何かない?本当になんでも言って?」
「いや、とりあえずはそれでいい。改装はわかってると思うけど遠征中に頼むな」
「おっけ~。任せて♪」
上機嫌で請け負うシザーを不思議に思いつつ、ひのきは電話を切った。

「どうしたの?」
釈然としない顔でベッドに戻ってくるひのきを見上げてなずなは首をかしげる。

「いや...まさか居間に盗聴器とかついてねえよな...」
嫌な想像をしてひのきはあわてて首を横に振った。

「いくらシザーでもありえねえよな」
思い直してまたベッドに戻る。

「早くレッドムーンをなんとかして子供のいる生活してえな」
「うん...可愛いよね、きっと」

可愛らしく笑うなずなに、ひのきは雑誌をバサっと床に放り投げると、その唇に口付けた。

「なずなの子ならきっと本部のアイドルになるぞ。
またおっかけを追い払うのが大変そうだ」
と笑って言うとそのままベッドに押し倒す。

「ゆっくりできんの今日が最後だな...明日からはまた何があるかわかんねえし、今日はほどほどにしねえと」
6日前のことを思い出して苦笑しつつ、ひのきはゆっくりとなずなの身体を愛撫し始めた。







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