翌日...早朝に警報が居住区をのぞく各フロアに鳴り響いた。
食堂で食事を取っていたジャスミンと鍛錬室のファー、それに自室のホップとユリの携帯にはブレイン本部へ集合のメールが届く。
ジャスミンと一緒に食事を取っていたアニーも彼女についていく。
数分後、ブレイン本部にはジャスミン、ファー、ホップ、それにジャスミンについてきたアニーとファーについてきたトリトマ、それに鍛錬していて警報を聞いたコーレアが集まっていた。
「えと...例によって敵襲なんだけど...ユリ君は?」
メールで呼び出したはずのユリがいない事に気付いたシザーはホップに目を向ける。
「ん~タマ朝弱いから気付かずにまだ寝てるかも?起こしてくる?」
ホップが苦笑いを浮かべると、アニーも苦笑して
「いいですよ。盾必要なら僕でますから」
とシザーに申し出た。
「ん~。遠征組は今日はゆっくり休んでもらって内組で行こうと思ったんだけど」
シザーは言うが
「それ言ったら姫だって来てないでしょう?」
とアニーからつっこみが入る。
「いや、彼女はほら、ひのき君がね...2日間は呼び出したら殺すって...」
冷や汗まじりに言うシザー。
「本当にいいですよ、僕も久々にジャスミンと一緒に出たいし使って下さい」
さらに言うアニーに、じゃあ、とシザーは言った。
「んじゃ、悪いけどアニー君も行ってくれる?あとはファーとジャスミンとホップ君で」
と言うシザーの言葉にトリトマが負けじと
「アニーだけずるい!俺もファーと出たい!」
と言いだす。
「いや、ずるいって...単にゆっくり休みたいかなと思ったんだけど...
みんな体力有り余ってるわけね?いいよ、出たい人全員出てボコっちゃって」
シザーはそれを聞いて小さく笑った。
「敵は何体だ?」
聞いてくるコーレアに、あなたも出る気満々ですか、とシザーは笑いながら
「はい、イヴィル2体、雑魚5体みたいなので楽勝なんですけどね。
なんでこんな数で来たのか謎なんですが...」
と言った。
しかしコーレアは厳しい顔で何か言いかけて、口をつぐむ。
「まあ2体なら俺が殺れるな」
誰にともなくつぶやくと、
「じゃあ行くか」
と若者5人組に声をかけた。
「ホップ...一応敵影確認してくれ」
外に出て遠目に敵の影が確認できるくらいの距離になると、コーレアは小声でホップに言った。
「イヴィルは...元フリーダムぽいか?」
言われてホップは固くなる。
しかし目を凝らしたホップの目に映ったのはどう見ても大人の男ではない。
「植物型の...女だな。フリーダムは全員男だからフリーダムじゃないさ」
その言葉にコーレアは杞憂だったか、と安堵した。
「じゃあ、ファー君とトリトマ、俺とジャスミン君でそれぞれイヴィルを一人ずつ。
で、アニーはホップの護衛。ホップは雑魚一掃という方向で頼む」
コーレアの指示にうなづいて5人はそれぞれ能力を発動させた。
そしてコーレアの合図で4人がそれぞれイヴィルに向かって飛ぶと同時にホップが敵の魔導生物に向かって機関銃を乱射した。
4人がイヴィルに辿り着く間に雑魚は一掃される。
「今回は楽勝さね」
にか~っと言うホップに
「ですね」
とアニーは微笑みを返した。
「...でもない?」
ふと前方に目をやったホップが眉をしかめる。
「みたいです?フォローに入りますか」
言ってアニーとホップは駆け出した。
ジャスティス一の俊敏さで男二人より一足先にイヴィルに辿り着く双子。
それぞれ拳と足を敵に向かって伸ばしかけた瞬間、ほぼ同時に凍り付く。
「「何してるんだ?!」」
一足遅れて辿り着いた男二人がやはりほぼ同時に言って、凍り付いたまま敵の攻撃を受けそうになる双子をそれぞれ抱きかかえて一歩退いた。
「ト...トリトマ...あのイヴィル...女の子...だよ」
両手で口を覆ってカタカタ震えるファーの言葉にトリトマが目をやると、確かに大きな木に覆われるような感じでのぞく顔はファーよりもまだ幼いように見える。
その顔は怯えたようなすがる様な表情で、耳をすませばかすかに
「...たす...けて」
の声。
攻撃をしかけてくる枝葉と全く別の意志をもっているように怯える顔と助けを求めるように差し出される小さな手。
トリトマはパニックを起こしながらも反射的にファーを抱きかかえると、後ろへ跳躍する。
「ホップ、頼む!」
と叫ぶとそのまま走ってくるアニーの後ろへ走り込んだ。
「おっけい。任せろっ、トリちゃん」
ホップは機関銃を変形させてライフルにして、敵めがけて狙いをさだめる。
「ホップ、待ってっ!!!」
アニーが叫ぶのとほぼ同時にホップが引き金を引いた。
弾は一直線にイヴィルの額を貫く。
アニーの悲鳴が響き渡った。
ホップ、ファー、トリトマが驚いたように凝視する中、アニーは残ったコーレアとジャスミンが対峙するイヴィルの方に駆け出した。
「コ...コーレアさん...」
ファーと同じように口を両手で覆ってカタカタ震えるジャスミンを後ろにかばうようにして、コーレアは敵の葉の攻撃を大剣でなぎはらう。
「あの...子...助けて...って...」
「ジャスミン君、下がって盾の後ろへ。ここは俺がやるから」
コーレアは右手にしがみつくジャスミンを後ろにやろうとするが、ジャスミンは硬直したまま動けない。
おかげでコーレア自身も左手のみで大剣を握るため安定が悪く動きが鈍くなる。
「アニー、良い所に。ジャスミン君を頼む。イヴィルは俺がやるから...」
左手だけで大剣を振り上げようとするコーレアの左手に、今度はアニーがしがみついた。
「コーレアさん、待って下さいっ!!」
と、その瞬間イヴィルの太い枝がもみ合う3人に向かって振り下ろされた。
アニーは反射的にジャスミンをかばい、コーレアと共にまともに攻撃をくらう。
盾を持った左手が不自然な方向に曲がった。
「...助け...て...」
イヴィルの顔がアニーに向けられるが、しかしその表情と言葉とは裏腹に次の攻撃が今度は倒れたジャスミンに向かう。
「やめろっ!」
半分無意識に残った右手が動いてセイバーがイヴィルの額に突き刺さった。
イヴィルの涙で濡れた目がアニーに向けられる。
「...あ...」
アニーは信じられない目で自分の右手を凝視した。
「うわああああ!!!!」
次の瞬間アニーは頭を抱えて叫ぶと気を失った。
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