人魚島殺人事件_オリジナル_4_部屋割り

こうして不穏な空気に染まるリビングを後にする藤と高校生組。

「とりあえず部屋は全部同じだからね。5部屋並んでるから好きな所に」
藤が2階に案内して鍵を手に言うと、フロウがコウのシャツをぎゅっとつかむ。

「どうした?姫」
コウはそれに気付いてフロウを見下ろして聞いた。

「…怖い…。」
潤んだ大きな瞳が何か訴えるように不安げにコウを見上げる。

勘の良いフロウはいつも何か重要な事を感じ取るが、理屈とは全く無関係に感覚的に感じ取るだけなので、本人にもたいていそれが何かわからない。
それがわかっているので、コウは少し困ったように眉をよせた。

「コウさんと…一緒がいいな」
ぽつりとつぶやくフロウにため息をつくコウ。
それでも確かに”何かを感じて怯えている”としたら、一人にしておくのも不安だ。

「藤さん…エキストラベッドなんて入れられませんよね?」
コウはフロウを少し抱え込むように引き寄せると、藤を振り返る。

藤は少し目を丸くした。
それから微笑む。

「いいよ。ツイン部屋あるからそっち使って。丁度端から2番目の部屋の対面の部屋」
「我が儘言ってすみません」
コウが頭を下げると藤はいやいやと苦笑した。

「あれ見たらね…まあ怖いっしょ。色々な意味で」

まあ…勘違いされている気もするが一々説明すると長いのでそのままにしておく。
コウは礼だけ言うと、フロウと自分の荷物を持って部屋に入りかけ、ふと足を止めて藤を振り返った。

「藤さんも…気をつけて下さい」
藤はそれにも苦笑で応える。
「私はほら、護身術くらいは身につけてるから」

「それでも…女性だから」
さらに言い募るコウに藤は軽く笑った。
「そんな風に私の心配するのなんて弟くらいだよ」

そこで…
「お姉さん、部屋どちらです?」
それは唐突な質問だった。
それまで黙ってコウと藤のやりとりを聞いていた和馬が口を開いた。

あまりに思っても見なかった方向からの思っても見なかった質問に、藤は一瞬目を丸くして、しかしすぐいつもの平静さで応える。

「ああ、高校生組用に端から5つ部屋とってあって、その隣。
一応…こっちでも勉強するんだろうし高校生組はまとめて放して大学生組からの実害こうむらないようにね、私が間に入るって感じで」

「なるほど…じゃ、俺はお姉さんのすぐ隣で」
と、和馬は床に置いてあった自分の荷物を持ち上げた。

「いいけど…?」
その言葉の真意を取りかねて、藤は微妙に質問風味の了承の言葉を述べる。
それに当然気付いて和馬は答えた。

「本人の認識と他人の認識、事実と感情はえてして違う場合がありますから。
事実はどうであれ少なくともコウは気にしてますし、俺も気になります。
別に何もなければないで結構。何かあれば呼んで下さい」
淡々と言って部屋に入って行く和馬を藤だけではなくそこにいる全員がポカ~ンと見送る。

「変わった子だね…」
それを見送ってぽつりとそうつぶやく藤に、
「まあ…悪い奴ではない…はずなんで」
とコウは微妙なフォローをいれた。






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